尿糖チェックで糖尿病コントロール
2010年07月30日
清水内科(群馬県高崎市) (3)
——尿糖自己測定(SMUG)使用者のデータを取っているそうですが。
小野澤:20例ほど取っています。確認する範囲ではS1の人とS2の人は、過去に(血糖)自己測定を、自分で針を刺して測っていました。
清水内科で最初に使っていただいたS2の方は、67歳の女性の方なのですが、もう糖尿病歴自体がとても長いんですね。ほかのクリニックでインスリン療法を勧められたそうですが、やっぱりご自分で納得できずに、当院に転院されたという経緯があります。でも、来られても、それほどの改善がなく、8%を行ったり来たりをずっと続けていたんです。そこで、試しに尿糖自己測定(SMUG)を行ってみたら、血糖コントロールが改善されたということで、ご本人の成功体験になっています。この方は、食後のウオーキングを主にされていたのですが、どのポイントで歩いたら良いのかを、ご自身でモニタリングしながら気づかれていくので、逆に医療スタッフが学ばせていただいた部分もすごくありますね。
尿糖自己測定(SMUG)継続者(15名)のHbA1c変化
Dr. 安部:尿糖というのは食後1時間2時間の、おしっこが溜まる時間の間の、いわゆる血糖の高さを表していますよね。おしっこに糖が出るのは、160〜180mg/dL以上の血糖の時です。おしっこは1〜2時間の間に溜まったものですから、その時点での血糖値を見ているのではなく、1〜2時間前の高血糖状態をみているのです。“閾値”を理解するのが難しいのかもしれませんね。その辺で、よく患者さんたちが混乱します。 ——尿糖値の意味を理解してもらうことが重要なのですね。 Dr. 安部:尿糖自己測定(SMUG)で、尿糖値の平均をずっと記録していって、これくらいにしていくと、次の月のHbA1cはこれくらいまで下がるだろうと予測がついてきます。尿糖の食後測定での積算なら、HbA1cを予測するためには使えるのではないかと考えています。 そうすると、患者さんたちは尿糖を観察していくことによって、‘今度行ったときには必ずHbA1cは下げるぞ!’というようなことを予想して病院に来ることになります。すると、病院に来て測定を行うと自分の予想と 検査結果が合うかどうかが楽しみになってくる。そんな受診の仕方をする方も出てきています。
尿糖自己測定(SMUG)の平均値をきちんと出せる人は、次のHbA1cを予想できるかどうかというところが、今、面白い課題のひとつですね。
——血糖コントロールへの意識が高くなるんですね。
Dr. 安部:そういうことです。
小野澤:いま先生が仰った方は男性なのですが、その方は本当に予想どおりHbA1cが下がっていきました。
Dr. 安部:不思議なことに、昼と夜はしっかり食べているけど、朝ご飯は全然食べていない、もしくは、少なめにしか食べていないのに、血糖値は午前中が高い方。こういった方を尿糖で測ってみると、高い時間は、朝が高い人とか、夕方が高い人とか、いろんなパターンがあったりします。
いちばん高い時間に動けば(運動すれば)、いちばん効率的なんじゃないかと。運動をして、いちばん良さそうな時間はここらへんじゃないの?なんて、(医療スタッフと患者さんが)一緒に考えると患者さんの方からアイデアを出してくるわけです。すると、栄養士さんは「そうですね」といえる。そして、やってみる。すると、確かにそこが下がる。
——ウオーキングと尿糖値の関係。
Dr. 安部:どうすると効果的か? それは、その人によって違うと思います。朝が効果的な人、夜が効果的な人、いろんな人がいます。どのような運動、運動量が良いですか? これも教科書がないわけで、その人、その人が見つけていくしかないのです。こんな程度で良かったのかとか、3分間のラジオ体操で良かったのかとか、自分でやりながら気づいてもらうしかありません。
尿糖値が高い朝食後にウォーキングを実施した例
朝食後の尿糖値
尿糖自己測定(SMUG)を開始してからの期間(月)
——食後高血糖を見つけるのにも有用ですか? Dr. 安部:もちろんそういうことですね。食後に測定して尿糖値が高いということは、食後の血糖値が高いということが証明されているわけです。逆に、減ったら、食後高血糖が良くなったということが言えるわけです。あと、食前から糖が出ている人は、無茶苦茶血糖値が高い人ですね。 小野澤:全然関係ないですけど、学校検尿も給食後の測定になったら、結果が全然違うんだろうなと思います。 Dr. 安部:早期発見したいなら、食後の測定ですよね。 ——最後に一言お願いします。 Dr. 安部:何が良いか、どうすれば良いのかなどの答えは、医者が出さなくていいんです。患者本人が出しますから。尿糖自己測定(SMUG)もそのための手段のひとつだと思います。 ——丁寧にご解説いただき、有難うございました。
■Profile
●清水内科 ⇒ホームページはコチラ
年間延べ2千数百名の糖尿病患者さんを抱える糖尿病専門病院。日本糖尿病学会での発表や著作も多く、30年以上交流の続く患者の会「きしゃご会」や、きしゃご(おはじき)を使った糖尿病食事指導なども有名。 ●安部 純 先生 (前列右から2番目)
群馬大学医学部卒・同第一内科入局、富岡厚生病院、小海赤十字病院などを歴任し、清水内科副院長就任。平成11年より同院院長、現在に至る。日本糖尿病学会専門医、群馬県糖尿病協会理事・指導医、きしゃご会指導医、群馬県糖尿病メディカルスタッフの会(グメスの会)会長、群馬県有床診療所協議会副会長、群馬県臨床内科医会副会長など。 ●小野澤しのぶ さん (左端)
管理栄養士、糖尿病療養指導士。
尿糖自己測定(SMUG)継続者(15名)のHbA1c変化
S1 | S2 | S3 | S4 | S5 | S6 | S7 | S8 | S9 | S10 | S11 | S12 | S13 | S14 | S15 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年 齢 | 69 | 67 | 55 | 59 | 50 | 65 | 72 | 45 | 76 | 76 | 76 | 66 | 65 | 66 | 62 |
性 別 | 女 | 女 | 女 | 男 | 男 | 男 | 男 | 男 | 男 | 女 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 |
HbA1c:SMUG開始時 | 8.7 | 8.1 | 7.4 | 9 | 9.8 | 8.8 | 9.3 | 8.4 | 6.9 | 7.4 | 8.6 | 7.2 | 6.7 | 8.9 | 7.3 |
HbA1c:SMUG 6カ月後 |
5.2 | 6.8 | 6.5 | 7.9 | 9.6 | 5.8 | 8.2 | 7 | 6.5 | 7.3 | 7.6 | 5.5 | 6.6 | 7.7 | 7.2 |
HbA1cの改善(>0.5%) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | △ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | △ |
○:6ヵ月後HbA1c:0.5%低下、△:同0.1〜0.5%未満の低下
Dr. 安部:尿糖というのは食後1時間2時間の、おしっこが溜まる時間の間の、いわゆる血糖の高さを表していますよね。おしっこに糖が出るのは、160〜180mg/dL以上の血糖の時です。おしっこは1〜2時間の間に溜まったものですから、その時点での血糖値を見ているのではなく、1〜2時間前の高血糖状態をみているのです。“閾値”を理解するのが難しいのかもしれませんね。その辺で、よく患者さんたちが混乱します。 ——尿糖値の意味を理解してもらうことが重要なのですね。 Dr. 安部:尿糖自己測定(SMUG)で、尿糖値の平均をずっと記録していって、これくらいにしていくと、次の月のHbA1cはこれくらいまで下がるだろうと予測がついてきます。尿糖の食後測定での積算なら、HbA1cを予測するためには使えるのではないかと考えています。 そうすると、患者さんたちは尿糖を観察していくことによって、‘今度行ったときには必ずHbA1cは下げるぞ!’というようなことを予想して病院に来ることになります。すると、病院に来て測定を行うと自分の
尿糖値が高い朝食後にウォーキングを実施した例
朝食後の尿糖値
尿糖自己測定(SMUG)を開始してからの期間(月)
(出典:清水内科(2008 第11回日本病態栄養学会年次学術集会にて発表) )
——食後高血糖を見つけるのにも有用ですか? Dr. 安部:もちろんそういうことですね。食後に測定して尿糖値が高いということは、食後の血糖値が高いということが証明されているわけです。逆に、減ったら、食後高血糖が良くなったということが言えるわけです。あと、食前から糖が出ている人は、無茶苦茶血糖値が高い人ですね。 小野澤:全然関係ないですけど、学校検尿も給食後の測定になったら、結果が全然違うんだろうなと思います。 Dr. 安部:早期発見したいなら、食後の測定ですよね。 ——最後に一言お願いします。 Dr. 安部:何が良いか、どうすれば良いのかなどの答えは、医者が出さなくていいんです。患者本人が出しますから。尿糖自己測定(SMUG)もそのための手段のひとつだと思います。 ——丁寧にご解説いただき、有難うございました。
年間延べ2千数百名の糖尿病患者さんを抱える糖尿病専門病院。日本糖尿病学会での発表や著作も多く、30年以上交流の続く患者の会「きしゃご会」や、きしゃご(おはじき)を使った糖尿病食事指導なども有名。 ●安部 純 先生 (前列右から2番目)
群馬大学医学部卒・同第一内科入局、富岡厚生病院、小海赤十字病院などを歴任し、清水内科副院長就任。平成11年より同院院長、現在に至る。日本糖尿病学会専門医、群馬県糖尿病協会理事・指導医、きしゃご会指導医、群馬県糖尿病メディカルスタッフの会(グメスの会)会長、群馬県有床診療所協議会副会長、群馬県臨床内科医会副会長など。 ●小野澤しのぶ さん (左端)
管理栄養士、糖尿病療養指導士。
もくじ
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