尿糖チェックで糖尿病コントロール
2010年07月30日
清水内科(群馬県高崎市) (2)
小野澤:最初のきっかけは、先生からこういう簡単なものがあるよ、というふうに勧めていただき、栄養士が詳しい説明の上‘どうですか?’というような同意を得るような、そんな流れで尿糖測定をお勧めしています。
Dr. 安部:患者さんが‘ちょっと自分の血糖の状態を知りたい’といった時、血糖測定は、自費で機械やチップを買うと何万円もかかります。外来ですと、インスリン治療を行っていないと血糖測定は保険が利きません。そんな時に、おしっこで測る“尿糖測定”っていうのがあるから勧めてみたらどうだい、ということで栄養士さんにまわすわけです。
当院は栄養指導をほとんど毎日のように外来でやってますから、待合室などで、栄養士さんたちと患者さんが気軽に話ができる環境にあります。雑談のなかで、おしっこで測る方法もあるんですよ、と話をしていたら、横で聞いていた人が、じゃあ私もやってみたい、なんていうこともあります。
——尿糖自己測定(SMUG)導入でのアドバイスを。
Dr. 安部:本人が尿糖計のような、こういうツールを使うことで、"考える"ようになることに意義があるのだと思います。ご家庭での健康管理に対する意識を一歩前進するためのツールのひとつという考え方です。
——患者さん次第ということですね。
Dr. 安部:いくら良い機会を与えられても、測らなければそれだけだし、測る意欲がない人がいくら良いツールを持っていてもダメだし。禁煙と同じです。やる気を出させる——モチベーションを上げるという言葉で言いますけど、そのやる気を引き出すためのツールのひとつということですね。栄養士さん、糖尿病療養指導士さんたちの指導ツールとしても、お勧めできると思います。
——食事療法や運動療法がうまくいっているかを、チェックするのに良いということでしょうか。
小野澤:そうですね、そういった答えの裏づけを取ることができると思います。
患者の行動変化 —患者のインタビュー結果より—
- 痛くないため無理なく継続でき、1日に何度も測定できたので1日の血糖状態の変化を把握できた
- 0〜2000mg/dLまでのデジタル表示はインパクトがあり、それをもとに食事・運動を工夫できた
- 指導されたことが、うまく実践できているか分かり、自身がもて不安が軽減された
- 開始当初は、尿糖値の意味が分からず、数値に一喜一憂した
(出典:清水内科(2008 第11回日本病態栄養学会年次学術集会にて発表) )
Dr. 安部:食後の血糖が高いということをいつも言われており、下げたいので日常的に自分でモニターしてみたいという時。かといって、血を出して測るのはイヤだとか、怖いとか、痛いとか、という方は、ちょっとトイレに入って、おしっこをかければ測れるのが尿糖測定です。
持ち運びができる携帯型のデジタル尿糖計が出てから、今まで測れなかった時間のデータが、たとえば外食した時とか、会社にいる時間帯とかが、携帯できるようになったことで測れるようになった。それを、どのようにこれから活かしていくのか。今後の課題だと思います。
ただ、間違えて欲しくないのは、これが万能の機器ではないということです。気に入った患者さんにとっては、これがひとつのきっかけとなり、そういうツールとしては優れているのですが、すべての人を良くするわけではない。うちでは、糖尿病の最先端の治療を積極的に取り入れていますが、DPP-4阻害薬も含めてさまざまな経口薬があります。インスリンや血糖自己測定(SMBG)もあり、その中の1つとして、尿糖測定という選択肢もある、という位置づけと考えています。
小野澤:感触としては、お声をかけて、尿糖測定を続けていただけたのは6割くらいでしょうか。血糖測定より少し高い程度です。
Dr. 安部:HbA1cが5.8%以下に落ち着いた人たちというのは、ほとんど尿糖が出ませんから、その人たちは、もう尿糖計は卒業できるわけですよね。たまに、ちょっとご馳走を食べた時だけチェックすればいいぐらい。ですから、何が何でも、すべての人にこういう条件でというような、適応というものを決めていくようなやり方は、あまり好きではありません。その患者さんのご希望次第、活用の仕方次第と考えています。
——血糖自己測定(SMBG)との併用は?
Dr. 安部:過去血糖自己測定(SMBG)をやっていたけど、痛くて止めてしまったとか、お金もかかるしということで止めてしまったとかいう人が、じゃあ、おしっこならやってみようかなという例はあります。
——尿試験紙を使っている方はいらっしゃいますか?
小野澤:実際に人数の確認はしていないのですが、やはり、いろいろ聞こえてくる声から推察すると、行っていらっしゃる方はいるようです。
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