尿糖チェックで糖尿病コントロール
2010年07月30日
根岸内科代謝クリニック(埼玉県ふじみ野市) (4)
根岸:もちろん、尿糖測定は万能かというと、長所ばかりではないのです。やっぱり気をつけなければいけない点がいくつかあります。
まず、完全に排尿しないと、ある一定の時間の尿糖というのはわからなくて、前の食事の影響が残ってしまいます。あと、尿量が多い・少ないによって、尿糖の出方に影響を及ぼしますので気をつけなくてはなりません。尿量が少ないと尿糖は多くなります。
さらに、尿糖が出ないということは血糖値が160mg/dL以上に上がらなかったことを意味するけれども、それが低血糖のせいなのか、正常な血糖なのか、多少血糖が高かったのかということが、尿糖測定では鑑別できない。こういうところは、よく注意しなければなりません。
また、とくに高齢者では、腎臓の機能が低下するので尿糖の排泄が減ってしまいます。ですから、見かけ上は尿糖が出にくくなって、血糖は高いけれど尿糖はあまり出ていないということがあります。
こういうケースもあることを頭の中に入れて、医療スタッフは、患者さんが記録してきてくれた結果を注意深く見ていく必要があります。
根岸:医療費は限りある資源なので、そのなかでなるべく低コストでできて、なおかつそれが治療や患者さんの自己管理に役立つ方法としては、やっぱり尿検査は非常に良い方法だと思うんです。
——尿試験紙は、診療所で入手するわけにはいかないのですよね。
根岸:尿試験紙は、通常、患者さんが薬局やドラッグストアで購入していただくことになっていますが、比較的コストが安いので、うちでは医療用のものを無料で配布しています。その後は、薬局やドラッグストアで継続して購入している患者さんもいますね。市販のものもコストは安いので、大きな負担にはなっていないようです。
——クリニックの負担は?
根岸:患者さん全員が何年間も続けるということならば大きいですけど、1枚10円するかしないかだから、そんなに大きな負担ではありません。それから、SMBGのように、患者さんにいろいろ指導するのに手間がかかるということではなく、時間にすれば2〜3分あればわかってもらえるような内容なので、マネージメントなどのコストもそんなにかかりません。指導料がもらえないということはあるかもしれないけれども、指導料というのは「特定疾患管理料」の中に含まれていると思えば良いのではと考えています。保険上メリットがなく、少し負担が増えたとしても、患者さんにできる方法や選択肢を少しでも多く提供してあげることで、患者さんの血糖コントロールが良くなり、あそこのクリニックでこんなことをやったら良くなりましたと言ってもらう方が、我々にとっては、長い目で見れば大きなメリットだと思います。
——今回の連載は、尿糖測定の活用に関して、いろいろなアイデアを拾い上げてご紹介したい、というところからスタートしています。今後、有用なご意見を積極的にご紹介していきたいと思っています。貴重な情報をご提供いただき、ありがとうございました。
■Profile
●根岸内科代謝クリニック ⇒ホームページはコチラ
●根岸 清彦 先生
埼玉医科大学大学院卒・第4内科(内分泌・糖尿病)入局、カリフォルニア大学アーバイン校内科学(代謝・内分泌)留学後、埼玉医科大学第4内科准教授、埼玉医科大学総合医療センター内分泌糖尿病内科非常勤講師を経て、平成17年より根岸内科代謝クリニック院長。日本肥満学会評議員、日本糖尿病学会糖尿病専門医・糖尿病研修指導医、日本糖尿病協会埼玉県支部理事など。
尿糖自己測定を行う場合の注意点
- 完全に排尿後に測定を行う。
- 尿量の影響を受ける。(尿量↑尿糖↓、尿量↓尿糖↑)
- 尿糖陰性:低血糖、正常血糖、軽度の高血糖をそれぞれ鑑別できない。
- 高齢者ではGFRが低下し、尿糖排泄が減少する。
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●根岸 清彦 先生
埼玉医科大学大学院卒・第4内科(内分泌・糖尿病)入局、カリフォルニア大学アーバイン校内科学(代謝・内分泌)留学後、埼玉医科大学第4内科准教授、埼玉医科大学総合医療センター内分泌糖尿病内科非常勤講師を経て、平成17年より根岸内科代謝クリニック院長。日本肥満学会評議員、日本糖尿病学会糖尿病専門医・糖尿病研修指導医、日本糖尿病協会埼玉県支部理事など。
もくじ
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