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2021年05月14日

インスリン発見から100年 糖尿病に立ち向かう行動を加速 WHO糖尿病グローバルコンパクト

 世界保健機関(WHO)が、インスリンの発見から100年あたる2021年に、「WHO糖尿病グローバルコンパクト」を開始した。
 糖尿病の治療を必要とするすべての人に適切な医療を提供できるようにするため、革新的な取り組みが行われている。
インスリン発見から100年 糖尿病に立ち向かう行動を加速
 世界保健機関(WHO)が、インスリンの発見から100年あたる2021年に、「WHO糖尿病グローバルコンパクト」を開始すると発表した。

 糖尿病の治療を必要とするすべての人に適切な医療を提供し、2型糖尿病の予防にも注力し、糖尿病の新たな治療法の開発を後押しすることを目的としている。

 「WHO糖尿病グローバルコンパクト」は、カナダのトロント大学の支援を受けWHOとカナダ政府が共催したグローバル糖尿病サミットで4月14日に発表された。

 イベントには、フィジー、ノルウェー、シンガポールの各首相や、ケニア大統領が出席。WHOの非感染性疾患(NCD)部門のグローバル大使であるマイケル ブルームバーグ氏や、各国の厚生労働大臣、糖尿病医療の専門家、糖尿病患者らも参加し、国連機関や市民団体、民間企業などからも多数が参加した。共同で「WHO糖尿病グローバルコンパクト」を支援する方法を模索していく。

グローバル糖尿病サミット(世界保健機関)

糖尿病による早死のリスクを減らすために、世界中で力を合わせるべき
 世界の4億2,000万人以上が糖尿病を発症していると推定されている。糖尿病を発症し、血糖値が高い状態が慢性的に続くと、心臓、血管、眼、腎臓、神経などに損傷を与え、深刻な合併症が起こる。

 「世界の糖尿病有病者の数は、過去40年間で4倍に増えました。主要な非感染性疾患のうち、糖尿病は唯一、早期に死亡するリスクが低下ではなく上昇している深刻な疾患です。また、新型コロナに感染し入院した患者さんのなかで、糖尿病のある人は重病化しやすいことが、さまざまな場所で報告されています」と、WHOのテドロス アダノム局長は述べている。

 「糖尿病による犠牲者をなくすため、また新型コロナの重症化を防ぐために、糖尿病を適切に治療する必要があります。そのために、世界中で糖尿病の診断と予防を早期に始め、糖尿病の治療薬を入手しやすくするようするため、政治的コミットメントを促進することが重要です」。

 「カナダには、糖尿病の革新的な研究を推進してきた誇り高い歴史があります。1921年のインスリンの発見から100年がたった今も、私たちは糖尿病をもつ人々を支援するために努力を続けています」と、カナダ保健大臣であるパティ ハイドゥ氏は言う。

 「しかし、私たちだけが糖尿病に立ち向かっているわけではありません。糖尿病患者さんがより長く、より健康的な生活を送れるように、私たちは世界中で知識を共有し、国際協力を推し進めていく必要があります」。
インスリンへのアクセスを増やすための緊急の行動
 もっとも喫緊な課題となっているのは、一部の国でインスリンの価格が高騰したり、低中所得国で糖尿病の診断ツールと医薬品、とくにインスリンへのアクセスが難しくなっていることだ。

 世界中でインスリンにアクセスし、手頃な価格で利用できるようにするため、緊急な行動が必要だとしている。

 そのためWHOは2019年に、インスリンの薬事承認の仕組みを整備するためのパイロットプログラムを開始した。現在、世界のインスリン市場はほぼ3社によって独占されているが、これまで途上国とされてきた国々でより安価なインスリンが作られている。

 こうした新たなインスリンは、とくに需要が満たされていない低中所得国で、インスリンの供給を補うのに有用とみられているが、そのためにはインスリンの品質、安全性、有効性を保証するための仕組みが必要だ。

 すでに、インスリンをはじめとする糖尿病治療薬や診断ツールを、各国が手頃な価格で利用できるようにするための方策について、企業などとの話し合いが進行中だ。

 貴重な医療資材はインスリンだけではない。世界には血糖測定器やセンサーを入手するのに苦労している国や地域も多い。

 こうしたことが、世界の2型糖尿病の成人の半数が診断を受けられていないという事態につながっている。さらに、2型糖尿病の人の50%は、インスリン治療を適切に受けられず、失明や足病変、早期死亡など、糖尿病合併症に苦しんでいる。

 必要な糖尿病治療を、より低コストで受けられるようにするためには、技術とデジタルソリューションの開発も必要となる。糖尿病の医療を進歩させると同時に、インスリンなどの医療資材の価格を、世界規模で調整する取り組みも求められている。
糖尿病患者が健康で生産的な生活を送れるよう支援
 「糖尿病グローバルコンパクトの主な目的は、公的機関と民間でともに糖尿病の課題に取り組み、糖尿病とともに生きる人々を団結させ、新しい流れを生み出し、解決策を共同で作り上げることです」と、WHOの非感染性疾患部門のディレクターであるベンテ ミケルセン氏は述べている。

 「とくに新型コロナとの戦いでは、世界の全員で総力を挙げて取り組み、さまざまなセクターが協力し緊急の解決策をみつける必要があります」。

 ジョスリン糖尿病センターやハーバード公衆衛生大学院で研究し、1型糖尿病患者と一緒に暮らしている糖尿病の擁護者であるアプオルワ ゴンバー氏は「糖尿病患者が健康で生産的な生活を送れるよう支援するための準備を進める必要があります。数年後にこのサミットが成功だったと振り返ることができるよう、この機会を両手でつかみとりたい」と話している。

 グローバル糖尿病サミットには3つのセグメントがある。1つめは、主に政府や非政府組織などに向けたセグメント。糖尿病を予防し、すべての患者に必要な治療を提供できるようにするための取り組みを促進する。2つめは、糖尿病とともに生きる人々がグローバル糖尿病コンパクトに積極的に参加するための方策を探るためのセグメント。3つめは、「インスリン100年」を祝う、トロント大学が主催するセグメント。最新のインスリン療法、インスリン研究の進歩などに焦点を当てている。

New global compact aims to drive down diabetes deaths, boost insulin access(世界保健機関 2021年4月14日)
New WHO Global Compact to speed up action to tackle diabetes(世界保健機関 2021年4月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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