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2012年05月22日
糖尿病の薬物療法は早く始めたほうがよい 横浜で市民公開講座
第55回日本糖尿病学会年次学術集会(JDS2012)
5月19日に横浜で市民公開講座「白熱“糖尿病”教室」が開催された。1万3000人以上の参加を得て成功裏に終了した第55回日本糖尿病学会年次学術集会の3日目に開催されたもので、多くの観客で賑わった。
2型糖尿病の新薬〜インクレチン関連薬が大きな話題に
当日は3人の特別出演者が食事療法と薬物療法について講演した。うち薬物療法を担当したのが、熊本大学医学部付属病院 代謝・内分泌内科の荒木栄一教授。
劇中で俳優が演じた糖尿病患者が服用していた薬は、インクレチン関連薬に分類される「DPP-4阻害薬」と、「メトホルミン(ビグアナイド薬)」。このうちDPP-4阻害薬は、糖尿病治療薬の深刻な副作用のひとつである低血糖を起こす恐れの少ない新薬で、医療界で大きな話題となっている。
「インクレチンは、食事中の炭水化物の量に応じて小腸から分泌されるホルモンの総称。血糖値が高いときだけ膵島に働いてインスリンを出し、血糖値を下げる作用がある」と荒木教授は説明する。
インクレチンの多くは、膵島に届く前にDPP-4と呼ばれる酵素によって分解され働きを失う。分解されずに膵島へ届いたインクレチンが、血糖値を下げる方向に作用する。DPP-4の働きを抑えるDPP-4阻害薬を服用することで、インクレチンの作用が長く続き血糖値を下げることができる。
「GLP-1受容体作動薬」は、インクレチンであるGLP-1を分解・不活性化の影響を受けにくい構造につくりなおしたもの。DPP-4阻害薬は飲み薬だが、GLP-1受容体作動薬はインスリンと同じような注射薬だ。
「インクレチン関連薬には、膵臓ではインスリンを出す、あるいはグルカゴンを抑制する作用があるほかに、中枢に働き食欲を抑える、消化器に働き満腹感を持続する作用などがあり、体重が増えにくい」と荒木教授は言う。
一方、メトホルミンは、肝臓でブドウ糖がつくりだされるのを抑える作用がある。消化管からの糖吸収の抑制や、インスリン感受性の改善などの作用もある。メトホルミンは最近、高用量投与が可能になり、効果が期待されている。
インスリンの早期開始で膵臓を休ませることができる
インクレチン関連薬の登場や、メトホルミンの高用量投与などにより、糖尿病の治療は選択肢が増えたが、80年以上の歴史をもつインスリン療法の役割もあらためて評価されている。膵臓のインスリンの分泌能力がなくなってしまっている患者では、インスリンはこれまで通りに有効な治療法だ。
荒木教授は「インスリン療法を進められた2型糖尿病患者を対象としたアンケート調査では、8〜9割の人はインスリンに対し抵抗感をもっているという結果になり、インスリンを恐れる人が多いことがあらためて示された」と話す。
インスリン療法を開始するのを必要以上におそれる患者や、「“インスリンを一生続けなければならない”と思い込む患者が少なくない。しかし、インスリン療法には“膵臓を“一時的に休ませる効果”がある。実際に早期にインスリンを始めた患者が、膵臓を休ませることで、また十分なインスリンを出せるようになり、インスリンをやめられることがある」と荒木教授は強調する。
インスリンやGLP-1受容体作動薬の注射に使用させる注射針は、痛みの少ない細いものが開発されている。実際にインスリン治療を開始した患者に、開始した時期について聞いたところ、「もっと早く始めていればよかった」という感想をもつ患者が多いという。
「インスリン注射に対する理解が求められている。必要以上にインスリン療法を恐れないでほしい」と荒木教授は求めている。
第55回日本糖尿病学会年次学術集会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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