ニュース

2010年03月09日

医療費格差が1.6倍に (2) 受診と予防を促す地域の取組み

キーワード
糖尿病対策推進会議
 生活習慣病は健康長寿の最大の阻害要因となるだけでなく、国民医療費にも大きな影響を与える。心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病が疾患全体に占めるの割合は、死亡原因で約6割、医療費で約3割とされる。
 医療費の地域格差にも、都道府県ごとの生活習慣病への取組みが反映されている。
生活習慣病は医療費の大きな割合を占める [広島県]
 全国でもっとも医療費が高かった広島県は地域差指数でも5位。入院外治療費が全国に比べ著しく高いのが特徴だ。県民の受診動向をみると、生活習慣病が受診理由の上位を占めている。2005年の調査では脳卒中など脳血管疾患の死亡率が男性11位、女性7位と高かった。

 県の基本健康診査の受診率は全国46位と低迷している。同県健康福祉局では「生活習慣病は医療費の大きな割合を占める。予防に向けた取組みを県民に浸透させることが重要。将来の医療費を抑える目的で、生活習慣病予防につながる健診の普及を進めたい」としてる。

 2008年より「ひろしま健康づくり県民運動」を展開し、県民の受診に向けた意識啓発を取り組んでいる。歌手の西城秀樹さんや緒方かな子さんらを「健康大使」に起用し、県の広報を通じて「受診上手になろう」と呼びかけている。こうした取り組みが進めば、医療費格差の是正にもつながる。

高齢化の進展で医療費も全国1位に [福岡県]
 福岡県では75歳以上の医療費の割合が毎年増加している。全体の医療費に占める75歳以上の割合は2006年は47.1%だった。老人医療費の比較では全国平均を大きく上回っており、2002年に2位の北海道を抜き1位になった。高齢者人口の伸びとともに、老人医療費の割合はますます増加していく。

 厚労省の「医療費マップ」の地域差指数でも1位となり、平均在院日数は41.6日。特に入院医療費が全国平均を大きく上回っており、県では「入院医療費の高さが、老人医療費を押し上げる要因」とみている。

 高齢者などが長期に入院する「療養病床」が多く、都市部を中心に一人暮らしの高齢者が多く、自力で生活できなくなると医療の必要性が低くても入院している可能性もあるという。

 医療費を減らすためには、高齢者を支える福祉政策や、生活習慣改善などに複合的に取り組む必要がある。しかし、医療費の抑制に向けた対策は効果がでるのに時間がかかる。

 福岡では10万人当りの医療機関数や医師数は全国平均を上回っており、医療機関への県民のアクセスは良好だ。県保健医療介護部では「病院と診療所が連携をとり、適切な医療を確保しながら入院日数を減らすなどの対策を進めている。在宅医療や地域ケア体制の充実への取組みも重要だ」と話す。

1人当たり国民健康保険医療費(万円)
地域差指数:
 地域差指数は、年齢構成による給付費の高低の影響を取り除いて、市町村の実績給付費との比較をあらわしたもの。
順位都道府県医療費
(万円)
地域差指数
順位
全国計40.7-
1広 島51.85
2高 知51.77
3山 口51.611
4鹿児島50.66
5北海道50.33
6大 分49.99
7香 川49.510
8福 岡49.41
9長 崎49.13
10島 根48.817
11徳 島48.82
12岡 山47.913
13石 川47.812
14佐 賀47.78
15富 山46.418
16熊 本46.014
17愛 媛45.715
18福 井44.524
19鳥 取44.323
20京 都43.922
21秋 田43.628
22宮 崎42.819
23兵 庫42.821
順位都道府県医療費
(万円)
地域差指数
順位
24和歌山42.424
25大 阪41.816
26福 島40.526
27山 形40.536
28新 潟40.433
29奈 良39.926
30滋 賀39.929
31三 重39.331
32岩 手39.341
33宮 城38.733
34長 野38.646
35岐 阜38.437
36愛 知37.832
37山 梨37.140
38静 岡37.045
39青 森37.035
40群 馬36.637
41東 京36.429
42神奈川36.339
43栃 木34.942
44茨 城34.044
45埼 玉33.843
46千 葉33.247
47沖 縄33.020

平成19年度医療費マップ(厚生労働省)
広島県医療費適正化計画
福岡県医療費適正化計画

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲