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2013年06月20日
女性の心筋梗塞 40歳を過ぎたら生活スタイルを見直し対策を
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- 糖尿病合併症
心筋梗塞や狭心症などの心臓病は、65歳以上の女性が将来亡くなる原因の上位に挙げられるが、40歳を過ぎると危険性が上昇することはあまり知られていない。
「心筋梗塞などの心臓病は男性に多い病気と思われがちですが、女性にとっても無関係ではありません。簡単なアドバイスによって心臓病に対策できます」と専門家は指摘している。
「心筋梗塞などの心臓病は男性に多い病気と思われがちですが、女性にとっても無関係ではありません。簡単なアドバイスによって心臓病に対策できます」と専門家は指摘している。
女性の心臓病は、女性ホルモンのエストロゲンに大きな影響を受けており、エストロゲンが減少する閉経後に発症することが多い。そのため女性の心臓病は男性よりも5〜10歳遅れて発症するケースが多いという。 米国では心臓病による死亡者数は女性が男性を上回っており、毎年約50万人の女性が命を落としている。米国立衛生研究所(NIH)は女性に向けて心臓の健康を気づかうよう呼びかけ、米国心臓学会(AHA)は「Go Red for Women」などの啓発活動を行っている。 「多くの女性は、簡単なアドバイスに従うことで、心筋梗塞や狭心症、心不全などの危険性を下げることができます」と、マサチューセッツ総合病院の心臓病専門医であるステファニー ムーア氏は話す。
女性の心筋梗塞は症状がわかりにくい
女性の心筋梗塞や狭心症は、胸痛などの典型的な症状を伴わないことが多い。男性は「胸が痛い」と訴えることが多いのに対し、女性では「背中が痛い」、「あごや歯が痛い」、「腹痛や嘔吐がある」、「急に呼吸が苦しくなる」、「冷や汗をかく」など、一見して心臓病でないような症状を訴えることが多い。このため発見が遅れ、治療開始に時間がかかることがある。米国で心筋梗塞を発症した110万人の患者のデータを分析した研究では、女性の42%は胸痛のない発作を経験していたことが分かった。突然日常の活動が困難になる症状があれば、迷わず診察を受け、「この症状は心筋梗塞ではないか」とはっきり医師に不安を伝えるようムーア氏は勧めている。
メディカルチェックが大切
症状だけでは心疾患が分からないことがあるので、心臓病の危険因子がある人、特に複数以上もっている人は、中高年になったら症状がなくてもメディカルチェックを受けることが大切だ。少なくとも年に1回、医師の診察を受け、コレステロール、血圧、肥満指数(BMI)、空腹時血糖値、運動習慣と身体活動量、心電図などをチェックしてもらうことが、心臓病の早期発見・治療に結びつく。
生活スタイルを見直す
もしも心臓病の危険因子をもっていたり、家族に心臓病の人がいて遺伝因子があることが分かったのなら、生活スタイルを見直し健康的に変えていくことが望まれる。若いうちから1日30分の運動を行ったり、1万歩を目標にウォーキングを続けることが、心臓の健康に結びつく。野菜と果物を十分にとりビタミンとミネラルを補給し、動物性脂肪を控える、魚を食べるなど、バランスの良い食事をとることが、心臓病の予防の観点からも必要となる。
もしも体格指数(BMI)が標準を超えているのなら、体重を減らすことも必要だ。毎日の食事で炭水化物を減らし、良質なタンパク質を増やすことで、比較的短期に体重を減らすことができる。
更年期に増える女性の高血圧と高コレステロール
若いころから血圧が低めで、「自分は高血圧にならない」と思っている女性は少なくない。健康診断ではずっと正常だったので、「血圧を気にしていない」という人も多い。ところがそうした女性でも更年期になると、高血圧になる可能性が出てくる。女性ホルモンのエストロゲンには、血管を拡張させる働きもある。40代に入ってエストロゲンが減りだすと、血圧をコントロールしている自律神経の働きが乱れ、血圧も次第に上がっていく。また、女性では若いうちはコレステロールが男性の半分程度だが、50歳を過ぎた頃から急激に増えてしまうことがある。
高血圧症や脂質異常症を発症すると心臓病の危険性も高まる。それだけに早期受診を心がけ、高血圧や高コレステロールにきちんと対応することが大切だ。
糖尿病も危険因子
心筋梗塞や脳梗塞は突然起こり、命を奪うこともある恐ろしい病気だ。米国では糖尿病患者の7割近くが、心筋梗塞などの心臓病で亡くなっている。糖尿病の人は、糖尿病でない人の2〜3倍これらの病気になりやすく、脳梗塞になった人の約半数、心筋梗塞になった人の約3分の1に糖尿病がみられるという調査結果がある。糖尿病の治療を続けていれば、危険性を下げることができる。糖尿病のある人は、しっかりと治療を続けることが重要となる。
異常があればすぐに医師に相談
女性の患者で心筋梗塞が発見されるときに冠状動脈の造影検査をすると、男性では冠状動脈が動脈硬化で狭くなっていることが多いのに対し、女性では冠動脈の複数の箇所で血管が狭くなっているなど、重症になってみつかるケースが多いという。これは女性の方が、痛みに対して男性より我慢強いからかもしれない。心筋梗塞を発症してから医療機関を受診するまでの時間は、女性の方が長いという調査結果もあり、ここでも女性の我慢強さが示されている。
ただし、病気に関しては我慢することでリスクが生じる。早く発見し治療を開始することで負担は少なくなり、治る確率も高まる。「グーグルで病気について検索するよりも、医師のアドバイスの方がメリットは多いのです」と、ムーア氏は強調している。 Women Raise Heart Disease Awareness(米国心臓病学会 2013年2月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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