糖尿病セミナー
16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
2014年11月 改訂
監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生
脳梗塞・心筋梗塞が起こりやすい
脳梗塞
心筋梗塞
アメリカでは糖尿病患者さんの7割近くが、これらの病気で亡くなります。従来は欧米人に比べて低かった日本人の脳梗塞・心筋梗塞発病率も、近年、生活環境の変化とともに増加しています。そして糖尿病の人は、糖尿病でない人の2〜3倍これらの病気になりやすく、実際、脳梗塞になった人の約半数、心筋梗塞になった人の約3分の1に糖尿病がみられます。
動脈硬化が進行して発作が起こる
なぜ糖尿病の人がこれらの病気になりやすいかと言うと、脳梗塞も心筋梗塞も動脈硬化のために血液が流れにくくなって起こる病気であり、糖尿病はその動脈硬化の進行を早めてしまうからです。動脈硬化が進むと血液が流れるスペースが狭くなり、血栓〈けっせん〉(血管の中で血液が固まったもの)ができやすくなります。血栓によって血流がせき止められると、その先の細胞は酸素や栄養が届かないので、間もなく死んでしまいます。これが「梗塞」です。
脳や心臓の細胞は再生しません。梗塞のために死んでしまった細胞が司っていた働きは復活せず、後遺症が残ってしまいます。
なぜ動脈硬化が起こりやすいか
糖尿病になると、なぜ動脈硬化が起きやすいのでしょう。動脈の断面を見ると、内膜、中膜、外膜の三つの層になっています。動脈硬化が進む大きな原因は、この内膜の部分にコレステロールが大量に取り込まれることです。
コレステロールは油ですから水に溶けません。そのため血液中では、水に溶ける蛋白質がコレステロールを包んで「リポ蛋白」となっています。血糖値が高いときは、このリポ蛋白が酸化されたり、ブドウ糖が結合したりして変化します。その変化したリポ蛋白は、血管の内膜に蓄積されプラーク(粥腫〈じゅくしゅ〉)という塊を形成します。このために、糖尿病があるとコレステロールがそれほど高くなくても動脈硬化が進行するのです。
また、糖尿病ほど血糖値が高くなっていない「糖尿病予備群」の段階から動脈硬化が進行し始めることも、最近注目されています。詳しくはあとで解説します。
動脈硬化は自覚症状なしに進行する
動脈硬化が起きても、血管断面積の90パーセントが塞がれるまで、ほとんど自覚症状がありません。しかも血管内にできるプラークは、ある程度まで大きくなると、その後は徐々に大きくなるのではなくて、突然破裂し一挙に血栓を作り、血管内部を塞ぐことがあります。元気な人があるとき突然、脳梗塞・心筋梗塞の発作に見舞われてしまうことがあるのは、このためです。コンテンツのトップへ戻る ▶
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