糖尿病セミナー
16. 糖尿病と脳梗塞・心筋梗塞
発作の症状、発病の徴候
発作の症状
脳梗塞・心筋梗塞の発作時には次のような症状が現れます。このとき大事なことは、「躊躇〈ちゅうちょ〉せずに救急車を呼ぶ」ことです。なぜなら、発作が起きてから治療開始までの時間の長さが、命が助かるかや後遺症の程度に大きく影響するからです。〈脳梗塞〉
左右どちらかの手や足に力が入らない・動かせない/舌がもつれる/めまい/記憶がとぎれる/意識障害 など。時間とともに症状が深刻になります。
〈心筋梗塞〉
激しい胸痛/呼吸がしにくい/顔面蒼白/冷や汗/手足が冷たくなる/ニトログリセリンが効かない など。狭心症よりはるかに強い痛みが起こります。しかし糖尿病合併症の一つである神経障害があると、それほど強い痛みを感じないこともあります。手遅れにならないように、注意が必要です。
発病の兆候
脳梗塞や心筋梗塞の発作が起こる前に、脳や心臓の血流が悪化していることを示す症状"発作のサイン"が現れることがあります。あてはまることがあれば、早めに詳しい検査を受けてください。なお、前に書いたように、プラークが突然破裂して梗塞が起きることがありますから、これらのサインがないからといって安心とは言い切れません。
〈一過性脳虚血〈きょけつ〉発作〉
一瞬脳の働きがとぎれる/くらくらする/はっきり見えなくなる など。脳の血流が一時的に少なくなった(虚血になった)ために現れる症状です。舌がもつれたり、話したい言葉がすぐに出てこない、食事中に箸を落とす、といったことも、脳梗塞の兆候の可能性があります。
〈狭心症〉
胸痛/胸が締め付けられるような感じ/胃痛 など。糖尿病神経障害のため強い痛みを感じないために、病気に気付くのが遅れることもあります。なお、狭心症の治療中で、その症状が変化した(例えば発作の回数が増えた)ときは要注意です。すぐに受診してください。
脳梗塞・心筋梗塞を 防ぐには 脳梗塞や心筋梗塞を起こさないためには、動脈硬化の進行を防ぐことが大切です。動脈硬化は年とともにだれでも進行するのですが、その進行を加速する要因がわかっているときには、それを一つずつ解消しましょう。
動脈硬化を促す病気を治療する
糖尿病を治療する
血糖値のできるだけ良いコントロールをめざしましょう。近年、動脈硬化の進行には空腹時(食前)の血糖値よりも、食後の血糖値のほうが強く関係すると言われています。
食後の高血糖をチェックするために、たまに食事を食べてすぐに通院し、血糖検査をしてもらってください。血糖自己測定をしている人なら、食前だけではなく、食後1〜2時間の血糖値も測ってみましょう。
脂質異常症(高脂血症)を治療する
血管壁の細胞にコレステロールなどが溜まり動脈硬化が進行するのを防ぐために、血清脂質(コレステロールや中性脂肪)をなるべく低めにコントロールします。血清脂質を低めにしておくと、たとえ既に血管内部にプラークができていても、それが破裂しにくくなる、つまり血栓による梗塞が起きにくくなることがわかっています。
脳梗塞・心筋梗塞を防ぐための治療目標*1狭心症や心筋梗塞の人は20mg/dL低い値が目標値です。 *2BMIが22になるのが理想体重です。
〔日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016。南江堂、2016・他より改変〕
高血圧を治療する
血圧が高いと血管壁の細胞が傷ついて、動脈硬化が進みます。ですから血圧もできるだけ正常値にするようにコントロールします。降圧薬のなかには、血圧を下げるだけでなく、脳や心臓を保護する働きのある薬もあります。メタボリックシンドロームを治療する
メタボリックシンドロームとは、血糖値や血圧、血清脂質値が上昇しているほかに、内臓の周囲に溜まった脂肪から動脈硬化を促す物質が分泌される病気です。さまざまな病気が同時に起こってくるので、複合生活習慣病と表現されることもあります。血糖値などの検査値がそれほど高くなくても動脈硬化が急速に進行するのがこの病気の特徴であり、怖い点です。糖尿病にあてはめて言うと、血糖値が少し高いものの糖尿病と診断されるほどではない「糖尿病予備群」の段階(より具体的には、食後の高血糖だけが目立つ段階)から、動脈硬化が進行することを意味します。肥満を解消し内臓脂肪を減らすことが、治療の第一です。
※メタボリックシンドロームについての詳しい解説は、このシリーズのNo.24をご覧ください。
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- 08. 小児の糖尿病(1) 基礎
- 09. 薬物療法(経口薬)
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- 11. 糖尿病用語辞典(より簡潔に)
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- 14. 糖尿病による腎臓の病気
- 15. 糖尿病による失明・網膜症
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- 18_1. 糖尿病からの危険信号神経障害 『生活エンジョイ物語』より
- 19. 糖尿病の検査
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- 23. 口の中の健康
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- 26. 食事療法のコツ(3) 腎症のある人の食事
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