開催報告
第43回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ
高知大学医学部附属病院 内分泌・糖尿病内科、青柳クリニック 院長
髙田 浩史 先生
(運営メンバー/ファシリテーター)
さて、今回は、初めて参加される患者さんが多いグループミーティングとなりました。午後は、4~5人の小さいグループに分かれて自分の考えを述べたり他の方の話を聞いたりするセッションになるのですが、私の参加したグループのテーマのひとつが「食事とインスリン注射方法」でした。このテーマは話し合うテーマとしてよく取り上げられるテーマですので、わがグループでも様々な意見が出ました。
そのなかで今回、特に気になったことはインスリンを固定打ち、つまり毎食前のインスリン単位数を決めておいてその単位数を注射することをしていたことです。あらかじめ決めておいたインスリン単位数を注射するので、そのときの血糖値に合わせて食事量のほうを調整しているという患者さんが多かったことです。食前血糖値が高い時にはこれから食べる食事量を減らしているのですが血糖コントロールが上手くできず、どうしたら良いのか悩まれていました。この点に疑問をもっておられた患者さん達も同じグループの皆さんからいろいろお話を聞き、多くの気づきが得られたようで、安心感をすこしは持てたのではないかと思いました。
2つ目のテーマは「運動時のインスリン量の調整方法」でした。運動する時に何を補食するかとか、追加インスリンや基礎インスリンの調整はどうするのかについて話し合いました。また最近の「医療機器に関する話題」にも関心が集まりました。FGM、CGMやインスリンポンプ(SAP)の良いところ、悪いところなどを実際の経験者から情報共有してもらいました。
私自身が最も興味深かったテーマは「転医、つまり主治医を変えること」でした。転医する理由として、転居等に伴うもの、医療器具(インスリンポンプ、CGMS)が選択できる病院を希望、専門性のある病院を希望等が出てきました。しかし、転医しなければならない時、患者さんが困っていることには「どんな医師が先方にいるのか、情報が分からない」、「医師の1型糖尿病治療の経験が分からない」等がありました。
その中で自分が印象に一番残った患者さんのコメントがあります。「良い先生に巡りあうかどうかは分からないので、1型糖尿病治療はある程度のことは病院で習うけれども、最終的には自分でコントロール出来るようになった方が良い」との言葉でした。
これは齋藤先生が最初に述べた巡礼のガイドの話と重なると感じました。医療従事者は患者さんが歩む1型糖尿病の道を案内するガイドではないでしょうか。個々の患者さんの心と身体の状態、療養生活のペースをみて、時には寄り添い、時には離れてサポートしていく、これが糖尿病の治療ではないかと。
グループミーティングでの会話の内容はいつも濃厚で、毎回、帰路の飛行機の中で会話の内容を振り返っては悩んでいます。
髙田 浩史 先生
(運営メンバー/ファシリテーター)
「若い糖尿病患者さんとのグループミーティング」へ参加して
ミーティングが始まるとき、毎回、齋藤先生からいろいろなお話があるのですが、今回はスペイン北部にある約800kmの巡礼路の話でした。これは、サンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路という大変有名なフランスからピレネー山脈を越えてゆく徒歩によるスペイン横断巡礼路で、1000年以上の歴史を持つ聖地への道として有名です。今も年間およそ10万人が巡礼におとずれるそうです。日本の四国八十八箇所のお遍路に似ていますね。スペイン横断という長い長い道のりであるために歩むペースを掴むのが難しく、歩き始める時にひとりひとりのペースを補助するガイドが昔から巡礼者に同行するのだそうです。さて、今回は、初めて参加される患者さんが多いグループミーティングとなりました。午後は、4~5人の小さいグループに分かれて自分の考えを述べたり他の方の話を聞いたりするセッションになるのですが、私の参加したグループのテーマのひとつが「食事とインスリン注射方法」でした。このテーマは話し合うテーマとしてよく取り上げられるテーマですので、わがグループでも様々な意見が出ました。
そのなかで今回、特に気になったことはインスリンを固定打ち、つまり毎食前のインスリン単位数を決めておいてその単位数を注射することをしていたことです。あらかじめ決めておいたインスリン単位数を注射するので、そのときの血糖値に合わせて食事量のほうを調整しているという患者さんが多かったことです。食前血糖値が高い時にはこれから食べる食事量を減らしているのですが血糖コントロールが上手くできず、どうしたら良いのか悩まれていました。この点に疑問をもっておられた患者さん達も同じグループの皆さんからいろいろお話を聞き、多くの気づきが得られたようで、安心感をすこしは持てたのではないかと思いました。
2つ目のテーマは「運動時のインスリン量の調整方法」でした。運動する時に何を補食するかとか、追加インスリンや基礎インスリンの調整はどうするのかについて話し合いました。また最近の「医療機器に関する話題」にも関心が集まりました。FGM、CGMやインスリンポンプ(SAP)の良いところ、悪いところなどを実際の経験者から情報共有してもらいました。
私自身が最も興味深かったテーマは「転医、つまり主治医を変えること」でした。転医する理由として、転居等に伴うもの、医療器具(インスリンポンプ、CGMS)が選択できる病院を希望、専門性のある病院を希望等が出てきました。しかし、転医しなければならない時、患者さんが困っていることには「どんな医師が先方にいるのか、情報が分からない」、「医師の1型糖尿病治療の経験が分からない」等がありました。
その中で自分が印象に一番残った患者さんのコメントがあります。「良い先生に巡りあうかどうかは分からないので、1型糖尿病治療はある程度のことは病院で習うけれども、最終的には自分でコントロール出来るようになった方が良い」との言葉でした。
これは齋藤先生が最初に述べた巡礼のガイドの話と重なると感じました。医療従事者は患者さんが歩む1型糖尿病の道を案内するガイドではないでしょうか。個々の患者さんの心と身体の状態、療養生活のペースをみて、時には寄り添い、時には離れてサポートしていく、これが糖尿病の治療ではないかと。
グループミーティングでの会話の内容はいつも濃厚で、毎回、帰路の飛行機の中で会話の内容を振り返っては悩んでいます。