開催報告

第11回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ

  東京女子医大糖尿病センター 小林浩子

 11回目(2011年6月19日)のグループミーティングには、1型糖尿病患者さん17名とそのご家族2名、医療関係者は看護師9名、医師5名、検査技師1名、管理栄養士1名が集いました。
 前回が震災の影響で中止となったので、今日でちょうど10回目となり、これまでの参加者ののべ人数は患者さんが約150名、医療関係者が約100名となりました。

 「互いに理解しあおうと感じられるこの場を今後も大事にしていきたい」「いつもここでの時間を大切にしている」等の感想をいただいており、ここに改めてこのミーティングに関わって下さった皆々様に感謝いたします。

気持ち、本音と向き合い、何をしたいか考え
 今回はチャプレンがデンマークコペンハーゲンの"森の幼稚園"を見学してきた話から始まりました。子供たちが森の中で自由に遊びます。ここでの幼児教育は、先生たちが指導や教育をするのではなく、子供の精神は子供の手に返すというスタイルです。自分の気持ち、本音と向き合い、自ら何をしたいかを考えて行動する子どもたちは、他の幼稚園児よりも生き生きとしており、成長してからは表現力が豊かで、コミュニケーション能力が高く、情緒が安定しているといわれているそうです。

糖尿病を治して行くのは本人
 参加した医療関係者の参加理由の多くは患者さんの本音を知りたかったから。しかしながら患者さんからは、医療関係者の本音を知りたいとの声がありません。なぜでしょう?
  今回参加の患者さんは、印象に残っている医者やコメディカルからの言葉として「糖尿病を治していくのは本人、医療関係者はあくまでもサポート」「あなたがプロになるの!」と言われたとのこと。糖尿病は患者さん自らが本音で糖尿病と向き合い、日々の"血糖値とインスリン注射との"生活を生きていくわけで、医療関係者は患者の本音を知ることで初めてどんなサポートができるのかを知ることができます。

 上から目線で検査結果を伝え、指導するだけの医療関係者では患者の本音を聞き出せるわけがありません。
今回のミーティングは、患者さんはどのように自分の本音と向き合い、医療関係者はどのように患者から本音を引き出せばいいのかという話しに終始しました。

こころの知能指数とは?
 自分のホントの気持ちを知り、他人と互い本音で語り合える能力、「こころの知能指数*」という概念があります。

この能力を高めるためには

1.他者から言われたからではなく自分できめること

2.自分の感情を自覚し、その理由を考え心のバランスをコントロールすること

3.生きていることの動機付けをすること

4.相手がどんな気持ちで何を話しているのか理解すること

だそうです。

 人と一緒に生きていくためには、この力を高めないと本当の関わりはできません。自分の気持ちを的確に感じ取り、人に言われたからではなく、自分がこうしたいと納得し、それに基づいて生きていくことが大切です。そうしないと糖尿病になったのも、血糖コントロールがよくならないのも、合併症がでてきたのもみんな周りの人のせいになってしまいます。

その人らしくしっかり歩んでいる
 ノルウェーの劇作家、イプセンは「私たちは死ぬ時に目が覚める」という言葉を残しています。しかし死ぬ時に初めてこうすればよかった、ああすればよかったと後悔するのでは遅すぎます。

 グループミーティングに参加していると、患者さんがいろんなことがある日常生活で糖尿病を自分の個性のひとつとして捉え、その人がその人らしくしっかりと歩んでいる姿に感動します。
 患者さんが主役なのです。

*Daniel Goleman:Emotional Intelligence、Rndom House.Inc (Buntam Dell)、New York,1995 .(邦訳)ダニエル ゴールマン著(土谷京子訳):EQこころの知能指数(講談社プラスアルファ文庫),講談社、1998

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