第29回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ
東京女子医科大学糖尿病センター 小林浩子
第29回グループミーティングを2015年11月29日に開催しました。患者さん28名、ご家族2名、医師5名(内スタッフ4名)、看護師2名、栄養士2名の皆さんにご参加いただきました。
午前中の自己紹介で、数日前にニュースで報道された『1型糖尿病の7歳男児死亡』の話題が挙がりました。両親が“病気を治す力がある”と自称する男を信じ、インスリン投与をやめた結果、男児が死亡したという事件です。医療者としては、なんとも悲しくて、なぜこのような事件がおこってしまったのか、またこのような事件を阻止するためには、何ができるのかを考えされられました。
子どもを守るのは親の本能です。“1型糖尿病を治してやりたい”という親の気持ちもよくわかりますが、命がなくなってはもともこもありません。改めて発症早期には正しい情報と知識を集めていく患者力はとても大事なことだと実感しました。
実際、1型糖尿病と上手く付き合っていくには家族の正しい理解と協力が不可欠です。小児の場合はなおさらだと思います。このミーティングにも多くのご家族が参加され、親は子のために、夫は妻のために(妻は夫のために)何ができるのかを知りたい、と口ぐちに話されます。自分の大切な人の役に立ちたいと思うのは、人間の自然な姿なのですね。
そのような中、ある女性が「実は母には1型糖尿病のことは話していません…」と話され驚きました。その理由を訊ねたところ、年をとってきた母に余計な心配はかけたくないと思い、話すタイミングを逃してしまったとのことでした。“1型糖尿病”をめぐる家族との関わり方も本当に人それぞれなのだと学ばせていただきました。
どうしたら幸せに生きることができるのか?という問いに対し、オーストリアの精神分析学者フロイトは「愛しなさい、働きなさい」と答えたそうです。色々な立場の人を受け容れ、そして人の役に立つことが人間として大事なことです。“1型糖尿病”をめぐり患者と家族、医療者、そして社会が支え合っていければと思います。