第25回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ
第25回目のグループミーティング(2014年11月16日)には、患者さん24名、ご家族5名、医師スタッフ3名、看護師2名、薬剤師1名にご参加いただきました。
患者さんは1型糖尿病を発症して2年以内の方が13名、その中でも発症して半年以内の方が7名もおられ、インスリンを注射するたびに"なんで私が…"という思いにかられる、とおっしゃっていました。
チャプレンは、デンマークのとある高齢者施設を訪問した際に、医療者が患者さんと触れ合う中で、個人をしっかりみつめて接していることに感銘を受け、患者さん一人ひとりの誇りや人間としての尊厳を大切にする介護者の態度に心をうたれたことを話しました。
参加者35名は、大きな円となり、一言ずつ自己紹介をしました。
透析病院で勤務しているAさんは医療者と患者の関係について述べられました。透析では水分や食事の管理が非常に重要です。その管理がうまくできない患者さんを医療者は"できない患者さん"とレッテルを貼るだけで、なぜできないのかを患者さんと話し合わないそうです。Aさんは管理できる方法を患者さんと一緒に探すことで解決策を見出そうとされていました。
医療者は医療を行う都合や数値によって患者さんを見てしまいがちです。しかしながら一人ひとりの考え方や環境を無視して患者さんを"管理"しようとしても何も変化しないのだと思います。
午後は10名弱のグループに分かれて、じっくりと語り合うことができました。
私の参加したグループではインスリン治療をはじめてから体重が増えて、このままどんどん太るのかと思うと不安で仕方がない。
甘いものが大好きなのに家族中から監視され、隠れて食べている。 食べることに関して家族から小言を言われると本当にイライラする。
自分の食欲と血糖コントロールとのバランスをどのように保つかが難しいなどなど、食欲の秋でもあり、食べ物に関する話題が多くでてきました。
患者さんひとりひとりは年齢や性別、環境も様々ですが、"糖尿病"を中心に同じ悩みを共有されていることがとても印象深かったです。
発症間もないBさんは、患者の立場に立ったアドバイスをもらったので、医師からのアドバイスよりよっぽどわかりやすかったです、と感想を述べていました。いくら「こうしたほうがいいですよ」と医師がアドバイスをしたところで、それが患者さんの生活や考えに見合ったものでなければ、なかなか患者さんの心には響かないようです。
今回はご家族の参加も多く、親の態度についても改めて考え直す時間になったようです。
"子供を信用して見守ろうと思った""本人が自由に幸せに生きるサポートができれば"など、患者であるお子さんの人格を今まで以上に尊重し、共に歩んでいきたいという感想を述べられました。
最後にチャプレンは、ヒトっていうのは群れをなして生きるのがその特性のひとつです。
その理由のひとつとして、一人ひとりが自立した人間となり、それぞれのちがいを認識することで、安心して生きていける社会を築いていくためですと話しました。
これからの医療が目指す方向性の一つとして、患者さんの遺伝情報を調べ、体質に見合った治療方針をたてていく「オーダーメイド医療」があります。
具体的には治療薬がその患者に有効であるかどうか、あるいは投薬量や副作用について見積もることで、最適な治療薬とその量を判断して治療することです。
"遺伝情報"というハードな面だけではなく、患者さんひとりひとりの考え方やニーズ、生活に見合った「価値観に基づくオーダーメイド医療」というものが大切なのだと思いました。