開催報告

第21回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ

東京女子医科大学糖尿病センター 小林浩子

秋晴れの中、今回はまた、いつもより本当に多くの方にご参加いただきました。患者さん34名(発症2年にも満たない方が7名、またこのようなミーティングに初めてご参加いただく方が7名)、娘さんが1型糖尿病を発症されたというお母様が3名、医療関係者は医師5名(内スタッフ2名)、看護師2名、栄養士1名で総勢45名の参加でした。

初めて参加される方が毎回おられること、そしてベテランの方の参加と、医療者ができる範囲を超えていろいろな体験を分かち合うことができる、とても有意義な会になってきていることを実感します(これは、たぶん、今、主催者が考える範疇を超えて、会自体がうまく循環していると考えていいのでしょう)。

まず大きな円となって、一人一言ずつ本日参加の動機と自己紹介をしてもらいました。
 初参加の方からは"仕事をしながらうまく血糖コントロールをする方法"、"新しい基礎インスリン製剤であるトレシーバについて聞きたい"との発言がありました。
 また"1型糖尿病でインスリンを注射していると、老人ホームに入所したくても断わられてしまう"、との体験談も語られました。

医療関係者からは"医師と患者との間にあるいつも感じている溝(みぞ)を埋めたい"との発言がありました。医師と患者の間の溝、バリア、壁、いろいろな表現があります。これはよく語られることですね。
 "溝"がどうしてできてしまうのか?

ひとりの患者さんが"溝"のたとえを話して下さいました。
 医師から治療についてひとつ提案されると、患者はその治療をするか、しないかの結論を急かされます。患者はその治療をやりたくないわけではないけれど、気になる点もあるので今はちょっと決断できないなあ〜と考え、答えられないでいます。
 その結果、医師と患者の間で気まずい空気が流れ、それが"溝"になってしまうという内容でした。

"溝"は母と娘の間にも存在します。
 低血糖のとき、娘は母に余計な心配をさせまいと、母の見えないところで補食をします。それをたまたま見つけた母は、自分を頼りにしてくれない娘との関係に悩みます。
 母は娘の幸せを願い、糖尿病に関して何とか力になりたいと日々考え、過ごしているので、低血糖の時すらも頼りにしてくれない娘に対して、寂しいような、取り残されたような気持ちになります。
 1型糖尿病をきっかけに、自立していく娘と母親との間で深い"溝"が生じ、その関係が変わってきてしまうように感じる時もあるかもしれません。

リーグ優勝を果たした東北楽天の選手の言葉に"誰かのために頑張っていくというのは、強くなっているんだなあ"というのがあったとチャプレンが紹介しました。
 母親は娘のために、また娘は母親のために日々頑張っていることが、強さとなり、将来、実を結ぶのだと思います。

もうすぐクリスマスです。
 クリスマスはイエス・キリストの誕生をお祝いする日ですが、今はもう形骸化してしまい、ケーキを食べる日、恋人と過ごす日になってしまいましたね。
 しかし、この日は"何もないところにイエス・キリストが誕生した"ことを意味していて、これは"謙遜に生きる"という深い意味を含んでいるとのこと。

「自分が謙遜して弱い人の立場に立てるようになったら、"溝"は埋まります。」という言葉でグループミーティングが終了しました。

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