第38回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ(1)
東京女子医科大学糖尿病センター 小林浩子 先生
(運営メンバー/ファシリテーター)
グループミーティング10周年目の春を、桜爛漫の日比谷公園で開催することができました。参加して下さった方、準備に関わったすべての方に心より感謝申し上げます。
今回は10代から60代までの1型糖尿病の患者さん21名、ご家族5名、医師6名(内4名スタッフ)、看護師6名、薬剤師1名が集いました。
オープニングでチャプレンは、4000年前に生きた預言者アブラハムの逸話を紹介しました。神からの啓示をうけ、どうすべきかをとことん考えぬき、故郷を旅立つという勇気ある決断をしたアブラハムの話は、今でもキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の中に語り継がれています。「人生という旅の途中では色々と決断しなければなりません。1型糖尿病にはなりたくてなったわけではないけれど、たった一つのあなただけの人生です。家族や社会が理解してくれないではなく、甘えずに、自分の人生に責任をもって、しっかりと歩んでいくことが大切です。」との言葉でミーティングが始まりました。
日々の生活は1型糖尿病があるとより忙しくなります。血糖値はどうなのか、何を食べるのか、インスリン何単位をどこで注射するのか、友人や同僚にはどう伝えるのか、などなど決断すべきことが沢山あります。その上、治療についても昨近、様々なデバイスが発売されています。「リブレは使った方がいいのでしょうか?」と患者さんから質問されることもあります。ですが、いくら医療者に訊いても、インターネットで検索しても、100%正しい答えは探せません。何故なら、自分に合っているかどうかを判断できるのは、自分以外にいないのです。
Kさんは合併症についてどう伝えてほしいかを話されました。発症後10年も経つと、必ずしも血糖コントロールが良い時ばかりではありません。ただ単に“合併症にならないように気を付けましょう”だけではHbA1cが悪くなると漠然とした不安が募ります。合併症はどうして出現するのか? 合併症がでてくるとどういう生活になるのか? そのようなことも含めて、もっとフラットに情報提供をしてほしいとのことでした。
一人一人の患者さんが、色々な選択肢がある中でどう生きていくかを真剣に考え、模索しています。情報や体験の中から自分で納得できる1型糖尿病と共に生きていくノウハウ、“落としどころ”を如何に見つけていくのか、その過程が非常に悩ましいのだと、今回改めて感じました。グループミーティングの場がその一助になれば幸いです。