第33回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティングのまとめ
東京女子医科大学糖尿病センター 小林浩子
第33回目のミーティングには、患者さん25名、ご家族8名、医師6名(内スタッフ4名)、看護師2名が集いました。ご家族の内訳は、患者さんの母が5名、父が1名、妻が2名です。ここ最近、グループミーティングに参加されるご家族が増えてきています。家族の方々の参加が増えていることは、「糖尿病が家族の病気である」ということを意味しているのかもしれません。糖尿病だけでなく慢性疾患に共通して言えることです。
ご家族の方々の参加動機は様々です。
「食事のサポート以外に何をすればいいのだろう?」、「糖尿病の息子の力になりたいが、息子が何を望んでいるのかわからない」、「低血糖時の対応をすばやくする方法を知りたい」、「娘の部屋から、『こんな病気になって死にたい』というメモをみつけた。親としてどうすればいいのか…」など、聴いている我々の胸が痛む話もありました。
ご家族の皆様からお聴きする実際の体験は、ほんとうにリアルです。
「夜中に低血糖で倒れている夫の横で、小さいお子さん達がぐずって泣いている」という…。この場面を想像してみると、なんとも大変な場面です。しかし、その体験を奥様は淡々と語られました。夫婦のしっかりとした絆が感じられ、私は素晴らしいと思いました。私たち医療者が「低血糖時には糖分を摂取しましょう」と話しても、なんにもならないのだ、もっとより具体的な状況をイメージして、患者さんと一緒に考えなければ、実際には何のサポートにもならない、と思いました。
また、他のご家族のお話を聴きながら、自分が発症したとき、親がどう思っていたのか、やっとわかったという患者さんもおられました。「発症当時、なんでこんな身体に産んだのか、と親に毒づいてしまいました。ですが、今日改めてその当時の自分の親の気持ちを考えてみました。親に異常に心配されるのは嫌だけれど、今後はもう少し親に優しく接していきたいです。」と語られました。
それでは、ご家族が患者さんに対してできる、一番大事なサポートとは何なのでしょうか?チャプレンは「その人が自分にとって大切な存在で、必要なのだと確信させてあげることです。」と話されました。あれができない、こうしなければならないと色々手を出すのではなく、ぜひ親子、夫婦でお互いに必要な存在であることを伝え合ってほしい、ということです。
自分が病気になると、まず周りに迷惑をかけたくない、というのが正直な気持ちです。自分が誰かに必要とされているという自信は、どんなサポートよりも大きな勇気と生きていく力を与えてくれるのだと思いました。
最後に、ニューヨーク大学リハビリテーション病院の壁に掲げられているある患者さんの詩を掲載いたします。チャプレンが紹介されました。
「苦難にある者たちの告白」―ある患者の詩― 作者不明
大きなことを成し遂げるために力をくださいと神に祈ったのに、
慎み深く、従順であるようにと弱さを授かった。
より偉大なことができるように健康を求めたのに、
より良きことができるようにと、病弱を与えられた。
幸せになろうとして富を求めたのに、
賢明であるようにと貧困を授かった。
世の人々の賞賛を得ようとして権力を求めたのに、
神の前にひざまずくようにと弱さを授かった。
人生を享楽しようとあらゆるものを求めたのに、
あらゆることを喜べるように命を授かった。
求めたものは一つとして与えられなかったが、願いはすべて聞き届けられた。
神の意にそわぬ者であるにもかかわらず、
心の中の言い表せない祈りはすべてかなえられた。
私はあらゆる人の中で最も豊かに祝福されたのだ。