第1回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティング報告
小林浩子(東京女子医科大学糖尿病センター)
第1回若い糖尿病患者さんとのグループミーティング
日時:2008年11月23日(日)午前11時-午後3時
会場 ジョンソン・エンド・ジョンソン
ダイアベティスインスティテュート(糖尿病研修センター)
「第1回 若い糖尿病患者さんとのグループミーティング」は久しぶりに気持ちの良い秋晴れの日で、記憶に残る日となりました。
全国から患者さん15名、医療関係者15名、総勢30名がひとつの場所に集いました。「ルールはありません。自分のことについて、経験や考えていること、感じていることを話して下さい。」との齋藤 武先生の簡単なブリーフィングからミーティングが始まりました。
一人ひとりが、やや緊張した面持ちでこの会に参加しようと思った気持ちなど自分の気持ちを話していきました。発症したばかりの不安な気持ち、結婚・出産など将来への不安、同年代のインスリン注射をしている人と話してみたい、など様々でした。
医療関係者は医師、看護師、栄養士、検査技師などいろいろな職種の方が参加しました。自分たちはいったい患者さんにとってどういう存在なのか、何ができるのか、との参加しようと思った各々の真剣な気持ちが会場に伝わりました。
昼食の後は数名ずつの小グループに分かれて、和やかな雰囲気の中で語りあいました。齋藤先生いわく、「とにかく一生懸命、この人は何を言っているのかな、どういう気持ちで話しているのかなと聴いて下さい。せっかくの機会だから何でも感じていること、疑問に思っていることを口に出してしゃべって下さい。心っていうのは聴いてもらいたがっています。」、これが、語り合うことのキーポイントです。これを念頭にいれて、グループ内の語り合いは、だんだん盛り上がります。
グループごとに様々なテーマがでてきました。「患者と呼ばれることへの違和感」「低血糖の辛さ」「周りに受け入れられないのではという不安」など、今まで心の奥底に封じてきた感情が自然と外に流れだしてきました。
語ることで、「肩に力が入りすぎていた」、また「患者さんに他人行儀で接してきた」今までの自分に初めて気が付き、これからの課題が少しずつ見えてきたようでした。それぞれが患者、医療関係者という立場、垣根を越えて、同じ一人の生きている人間として語り合えたと感じました。
今回のグループミーティングのユニークなところは、患者さんと医療関係者が同じ視点、目線で、病棟でも診察室でもない場所でともに語りあう点です。患者さんからは「真剣に考えている医療関係者の方がいるとわかったことが嬉しかった」との感想が数多く聞かれました。いつも流れ作業的に忙しく働き、話しかけにくい存在から、親しみやすい存在にかわってきたようです。その一方で、医療関係者は患者さんの気持ちと共有できるものを自分自身の中に見つけ、患者さんに近づいていこうという気持ちが芽生えてきました。
4時間という短い時間でしたが、その中に様々な心の動きがありました。人と人との出会いと関わりの中で自然に生まれてきた温かい前向きな感情の流れです。「“もうこんなことばかりで死んだ方がいいや!”と思っていた患者さんが何年かたった後で、“糖尿病があって良かった”っていうことがある。自分の人生が苦しいとか、苦しくないかとか、それは原因でなくて、それは結果ではないでしょうか。」(齋藤先生弁)
そんな言葉でグループミーティングは終了しました。