正しい知識を持って、正しく恐れ、適正な管理を
「10月8日は、糖をはかる日」は10月13日(土)、将来妊娠を望む糖尿病患者さんや、そのご家族のための「妊娠・出産&血糖コントロールセミナー」を開催。糖尿病専門医である柳澤慶香先生(東京女子医科大学)と、実際に妊娠・出産を経験した1型糖尿病で歌手の中新井美波さんが、血糖のコントロールの大切さや、妊娠期特有の血糖値の変化、「血糖トレンド」を把握するメリットなどについて講演した。
妊娠・出産における血糖コントロールの重要性
東京女子医科大学 糖尿病センター 柳澤 慶香 先生
日本糖尿病学会 糖尿病専門医。糖尿病と妊娠を専門に数多くの研究発表、執筆を手がけるほか、東京女子医科大学糖尿病センター 妊娠外来を担当し、多くの患者さんの妊娠・出産に関わる。
血糖コントロールは、妊娠の準備段階から
妊娠すると、お母さんの胎盤を通じてブドウ糖が供給され、赤ちゃんが成長する。しかし血糖値が高すぎると、赤ちゃんにさまざまな影響を与える可能性がある。特に妊娠初期は、赤ちゃんの器官形成の時期にあたるため、お母さんの血糖値が高いと、赤ちゃんに形態異常(先天奇形)のリスクが高まるといわれている。また巨大児や、巨大児に伴う難産のリスクも高くなる。
赤ちゃんだけでなく、お母さんも高血糖や妊娠の影響を受ける。妊娠中は血流が増えるため、細小血管へのダメージが大きくなり、お母さんは糖尿病網膜症や糖尿病腎症といった合併症が悪化しやすくなるという。「児の先天異常の予防や、妊娠中の母体の糖尿病合併症の悪化防止のためには、『計画妊娠』が非常に重要です」と柳澤先生。妊娠する前から、合併症の状態をチェックするとともに、血糖コントロールは重症低血糖を回避しながらHbA1c 6.5%未満を維持するよう呼びかけた。
妊娠時期や血糖の動きに応じた、食事療法とインスリン療法
妊娠中は、胎盤から分泌されるヒト胎盤性ラクトゲンやプロゲステロンといったホルモンの作用で、妊娠が進むほどインスリン抵抗性が増大するため、インスリンの必要量が増す。そこで柳澤先生は、妊娠中の食事療法は、血糖の動きや妊娠の時期、仕事などの生活パターンに応じて「分食」をうまく活用するよう勧めている。
また重要なのは、インスリンの選択だ。これまで経口薬やGLP-1受容体作動薬を使用していた患者さんは、妊娠前の段階からインスリン治療に切り替える必要がある。
つわりで十分に糖が摂取できないのにインスリン量を調節せずにいると、低血糖を起こしたり、インスリン抵抗性が増大しているにもかかわらずインスリン量が不足したりすると、体が酸性に傾く「糖尿病ケトアシドーシス」という重大なトラブルを招きかねない。
さらに妊娠の時期に応じた対応も重要だ。妊娠初期は、妊娠に慌ててインスリンを増やしがちで低血糖を起こしやすく、妊娠中期・後期は35-36週をピークにインスリン抵抗性が増大し、食後高血糖を起こしやすい。分娩直後はインスリン抵抗性が急激に減少するため、インスリン量を元に戻し、授乳による低血糖に備えて補食をすることが望ましいという。
このように妊娠期特有の血糖の動きに対し、「主治医と相談しながら、グルコースモニタリング(CGM、FGM)を用いた血糖トレンドの情報と、血糖自己測定(SMBG)の情報をうまく活用して、元気な赤ちゃんを産むために、厳格なコントロールをぜひ実現してほしい」と柳澤先生は述べた。
この手に触れるまでの奇跡
歌手・作詞家 中新井 美波さん(1型糖尿病)
小学6年生で1型糖尿病を発症後も、陸上競技で優秀な成績をおさめたほか、2015年に元THE BOOMの山川浩正さんらとともに、バンド「1-GATA」を結成。糖尿病を持つ患者さんに勇気や励みを与えるために全国で音楽活動を展開する。今年7月に長女を出産。
不安な夜も、必ず明ける。
自分と子どもだけの対話を楽しむ、幸せな10カ月に。
「つわりで食べられなくて痩せる妊婦さんが多い中、私は食べづわりで、どんどん太ってしまいました」と、笑顔で自身の妊娠を振り返る中新井さん。妊娠中は、酷いむくみに悩まされたり、トキソプラズマに感染していることが発覚したりと、トラブルは少なくなかったという。
さらに1型糖尿病で常に厳格な血糖コントロールが求められる日々。不安は尽きなかったが、健診や胎動で感じた赤ちゃんの元気が励みに。会場では、ライブの定番曲「キミ」(売上の全額が認定特定非営利活動法人 日本IDDMネットワークに寄付)と、自身の人生で最も辛い出来事の一つ、“大腿骨骨折 全治1年”を乗り越えたエピソードを歌にこめた「3439匹のひつじ」を披露。「不安で眠れない夜も必ず明ける。希望を持って毎日を楽しく過ごしてほしい」という中新井さんのメッセージは、参加者の心に深く響いたに違いない。
「血糖トレンド」が与えてくれた、
いつでも血糖値がわかる安心感と、
[これからの血糖値の動きが予測できる心強さ。
妊娠中、「血糖トレンド」を自動的に持続測定するグルコースモニタリングシステムを利用していたという中新井さんは、「血糖トレンド」を見ることで、夜中に無自覚低血糖を起こしていたことに初めて気づいた。血糖値の動きを予測して注意をうながす機能が便利だったほか、過去の血糖トレンドデータをもとに、自分から主治医に積極的に相談ができるようになったという。「私が血糖トレンドをうまく活用している様子を見て、家族も安心してくれたようです。妊娠中は不安がつきませんが、血糖トレンドを知ることは、大きな安心につながるのではないでしょうか」と自身の経験を踏まえて語った。
関連情報
・「10月8日は、糖をはかる日」について
・血糖トレンドについて 『血糖トレンド情報ファイル』
アボット ジャパンでは、「血糖トレンド」についての啓発活動を行っています
あなたの血糖の傾向
「血糖トレンド」で把握しませんか?
血糖値は人それぞれ、毎日変動しているものです。食べたものによっても、運動したかどうかによっても、変動します。それらを「傾向(トレンド)」として把握することの総称として「血糖トレンド」という言葉が使われています。
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