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2022年12月13日

ウォーキングで腸内細菌を健康に 糖尿病の人はがんリスクが高い 運動により大腸がんリスクも低下

 ウォーキングなどの運動をすると、腸内細菌叢が健康になり、がんのリスクが減少するという研究が発表された。

 運動により心肺機能を改善すると、腸内細菌叢に好ましい変化があらわれることも分かった。

 国内外で発表された研究によると、糖尿病のある人は、がんリスクが20%ほど高い。血糖値が高い状態が続くと、日本人でも、大腸がん・肝臓がん・膵臓がんなどのリスクが上昇するとみられている。

 糖尿病がある人にとって、「食事療法」「運動療法」「健康的な体重の維持」は、血糖管理を良好にするだけでなく、腸内環境の改善にも役立ち、がんの予防につながると考えられる。

運動は腸内環境も健康にする 大腸がんのリスクも低下

 ウォーキングなどの運動を習慣として続けると、腸内細菌叢が健康になり、大腸がんのリスクが低下するという研究を、米国のユタ大学がん研究所が発表した。

 人の腸内には500~1,000種類、100兆個と推定される細菌が棲んでいる。この腸内細菌は、健康にさまざまな影響をもたらしており、肥満・糖尿病・心臓病・大腸がん・炎症性腸疾患などとも関係があると考えられている。腸内細菌叢は、多くの種類の腸内菌がいて、多様であるのが好ましい。

 「今回の研究で、運動を習慣として行うことは、腸内細菌叢を健康に保つのに役立ち、炎症の軽減にも役立つことを発見しました。体格指数(BMI)に関係なく、過体重や肥満と判定された人でも、運動は恩恵をもたらします」と、同大学ポピュレーション科学部のキャロライン ヒンバート氏は言う。

 「運動を活発に行っている人は、腸内に多様な腸内細菌叢をもっていて、大腸がんの進行を促す細菌の量が少なく、がんから保護する細菌の量が多いことも分かりました」。

 「運動による恩恵を得るために、アスリートのように激しい運動をしなければならないわけではありません。日常生活で意識して体を動かすようにして、アクティブでいることを心がけるだけでも、大きな差が出てきます」としている。

関連情報

運動をすると腸の健康が改善 炎症が減りがんリスクも低下

 研究グループは、新たに大腸がんと診断された3,500人以上の患者を対象にしたコホート研究「ColoCare研究」に参加した179人の男女を対象に、運動や身体活動の状況を調査し、便サンプルを遺伝子検査し腸内細菌についても調べた。

 炎症は大腸がんを引き起こす重要なプロセスであり、体格指数(BMI)が高いほど、体内で炎症が起こりやすいことが分かっている。肥満は、13種類を超えるがんの発症に影響しているという。

 大腸がん(結腸がん・直腸がん)は、米国がん協会によると米国で3番目に多いがんで、日本でも患者が増えており、がんによる死亡数では胃がんを抜いて2番目になっている。

 「大腸がんを発症した人でも、また過体重や肥満の人も、適度な運動を行うことで、炎症を軽減し、腸の健康を改善し、長生きできる可能性が高まることを、多くの人に知ってもらいたいです」と、同学部のコーネリア ウルリッヒ氏は述べている。

 米国の運動ガイドラインでは、成人に週に150分の適度な運動をすることを勧めている。活発なウォーキングを1日に20分くらい行うと、運動の推奨量を満たすことができる。

運動は腸内細菌の多様性を高め、健康を改善する

 ウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、体脂肪率が改善するだけでなく、心肺機能も高まる。すると、毛細血管が発達して筋肉への血液の供給量が多くなり、酸素をとり込んで運搬する能力も高まり、血糖値が下がりやすくなる。

 欧州生理学会が発表した別の研究でも、運動で心肺機能を高めることは、腸内細菌叢の多様性を改善するのに役立つことが示されている。ヒトの体内には細胞と同じか、それ以上の数の細菌が棲息しており、生理学でも重要な役割を果たしているとしている。

 「今回の研究で、心肺機能を改善するために、ウォーキングや筋トレなどの適度な強度の運動を行うことは、腸内細菌叢にも好ましい変化をもたらし、健康をサポートするのに役立つことが示されました」と、米国のインディアナ大学公衆衛生学部のスティーブン カーター氏は言う。

 「運動により心肺機能が高まると、多くの人で、中枢では心拍ごとに心臓から送り出される血液量が増加し、末梢では血液から筋肉に酸素を運ぶ毛細血管の数が増加します」としている。

 これまで、心肺機能の健康度が高い人ほど、腸内細菌叢の多様性が高くなる傾向があることが知られていたが、この関係は体脂肪率よりも、心肺機能に起因するものが多いことが明らかになった。

運動により心肺機能が高まると腸内細菌の多様性が改善

 研究グループは、1年以上前に乳がんの治療を受けた37人の女性を対象に、運動テストに参加してもらい、心肺機能のピーク状態や総エネルギー消費量などを評価し、同日に糞便サンプルにより腸内微生物叢を調査した。

 その結果、心肺機能フィットネスの高い参加者は、フィットネスの低い参加者に比べ、腸内細菌叢の多様性が有意に高いことが示された。さらに解析したところ、体脂肪率とは関係なく、心肺機能の適応度が腸内細菌の多様性に影響していることが示された。

 一般的にがん治療は、体脂肪率の増加や心肺機能の低下など、心臓代謝の健康に有害な生理学的変化をもたらすことが知られている。

 研究グループは、運動強度を変動させると、食事内容が変わらなくとも腸内細菌叢の多様性に影響する可能性があると考え、介入研究を計画しているという。

 「運動が腸内細菌叢の機能性にどのように影響するかを明らかにし、運動療法の処方を最適化する方法を模索しています。がんを発症した人でも、がんの発症リスクの高い人でも、運動により健康転帰を向上させることを目指しています」と、カーター氏は述べている。

Moderate exercise helps colorectal cancer patients live longer by reducing inflammation and improving gut bacteria, including in patients who are obese (ユタ大学がん研究所 2022年11月14日)
Differences in the gut microbiome by physical activity and BMI among colorectal cancer patients (American Journal of Cancer Research 2022年12月)
Get fit for a fit gut: Exercise might improve health by increasing gut bacterial diversity (欧州生理学会 2019年2月15日)
Gut microbiota diversity is associated with cardiorespiratory fitness in post-primary treatment breast cancer survivors (Experimental Physiology 2019年2月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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