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2020年05月18日

【新型コロナウイルス】働いている人の感染対策 経団連がガイドラインを作成

 政府は5月14日に、39県で緊急事態宣言を解除することを発表した。これにあわせて、経団連は企業が本格的に事業を再開する際の指針として、新型コロナウイルスの感染を防止するためのガイドラインをまとめた。
39県での緊急事態宣言の解除を受けて
 経団連の「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」は、政府の専門家会議の提言などをふまえて作成されたもので、オフィス向けと製造事業場向けの2種類がある。

 日本渡航医学会と日本産業衛生学会が公表した「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」を参考に挙げ、経済界全体で足並みをそろえて対応し、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えながら、活動再開を進めていくことを求めている。

 このうち共通の対策として、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑を緩和する方法として、テレワークや時差出勤、ローテーション勤務などの他に、「週休3日」も検討し、さまざまな勤務形態をとることを推奨している。

 オフィス向けでは、急ぎではない出張は見合わせるほか、会議や名刺交換、それに採用面接などはオンラインで行うことを検討することが必要となる。

 また、製造現場向けでは、朝礼や点呼は少人数で行うことや製造工程ごとに作業の区分を分けることなど、工場でのさまざまな場面を想定した対策が盛り込まれている。
コロナ危機を「働き方を変えていく契機」に
 経団連では、経団連がコロナ危機を「働き方を変えていく契機」ととらえ、「緊急事態宣言が解除された後も『新しい職場様式』を作る必要がある」と主張。

 「事態が長期化する中で、職場における感染防止対策の取り組みが、社会全体の感染症拡大の防止につながる」として、「体制を整備し、個々の職場の特性に応じた感染リスクの評価を行い、それに応じた対策を講じてもらいたい」と述べている。

 このガイドラインをホームページに掲載し、広く利用を呼びかけている。
経団連「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」
オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(抜粋)

講じるべき具体的な対策

(1)感染予防対策の体制
  • 経営トップが率先し、新型コロナウイルス感染防止のための対策の策定・変更について検討する体制を整える。
  • 感染症法、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の関連法令上の義務を遵守するとともに、労働安全衛生関係法令を踏まえ、衛生委員会や産業医等の産業保健スタッフの活用を図る。
  • 国・地方自治体・業界団体などを通じ、新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報を常時収集する。

(2)健康確保
  • 従業員に対し、出勤前に、体温や新型コロナウイルスへの感染を疑われる症状の有無を確認させる。体調の思わしくない者には各種休暇制度の取得を奨励する。また、勤務中に体調が悪くなった従業員は、必要に応じ、直ちに帰宅させ、自宅待機とする。
  • 発熱などの症状により自宅で療養することとなった従業員は毎日、健康状態を確認した上で、症状がなくなり、出社判断を行う際には、学会の指針などを参考にする。症状に改善が見られない場合は、医師や保健所への相談を指示する。
  • 上記については、事業場内の派遣労働者や請負労働者についても派遣事業者・請負事業者を通じて同様の扱いとする。

(3)通勤
  • テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務)、時差出勤、ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務)、変形労働時間制、週休3日制など、様々な勤務形態の検討を通じ、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑緩和を図る。
  • 自家用車など公共交通機関を使わずに通勤できる従業員には、道路事情や駐車場の整備状況を踏まえ、通勤災害の防止に留意しつつこれを承認することが考えられる。

(4)勤務
  • 従業員が、できる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、人員配置について最大限の見直しを行う。
  • 従業員に対し、始業時、休憩後を含め、定期的な手洗いを徹底する。このために必要となる水道設備や石けんなどを配置する。また、水道が使用できない環境下では、手指消毒液を配置する。
  • 従業員に対し、勤務中のマスクなどの着用を促す。
  • 飛沫感染防止のため、座席配置などは広々と設置する。仕切りのない対面の座席配置は避け、可能な限り対角に配置する、横並びにするなど工夫する(その場合でも最低1メートルあけるなどの対策を検討する)。
  • 窓が開く場合1時間に2回以上、窓を開け換気する。建物全体や個別の作業スペースの換気に努める。なお、機械換気の場合は窓開放との併用は不要である。
  • 他人と共用する物品や手が頻回に触れる箇所を工夫して最低限にする。
  • 人と人が頻繁に対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する。
  • 外勤は公共交通機関のラッシュの時間帯を避けるなど、人混みに近づかないようにする。
  • 出張は、地域の感染状況に注意し、不急の場合は見合わせる。
  • 外勤時や出張時には面会相手や時間、経路、訪問場所などを記録に残す。
  • 会議やイベントはオンラインで行うことも検討する。
  • 株主総会については、事前の議決権行使を促すことなどにより、来場者のない形での開催も検討する。
  • 会議を対面で行う場合、マスクを着用し、換気に留意する。また、椅子を減らしたり、机などに印をつけたりするなど、近距離や対面に座らないように工夫する。
  • 対面の社外の会議やイベントなどについては、参加の必要性をよく検討したうえで、参加する場合は、最小人数とし、マスクを着用する。
  • 採用説明会や面接などについては、オンラインでの実施も検討する。
  • テレワークを行うにあたっては、厚生労働省のガイドラインなどを参照し、労働時間の適正な把握や適正な作業環境の整備などに配慮する。

(5)休憩・休息スペース
  • 共有する物品(テーブル、椅子など)は、定期的に消毒する。
  • 使用する際は、入退室の前後の手洗いを徹底する。
  • 喫煙を含め、休憩・休息をとる場合には、できる限り2メートルを目安に距離を確保するよう努め、一定数以上が同時に休憩スペースに入らないよう、休憩スペースの追設や休憩時間をずらすなどの工夫を行う。
  • 特に屋内休憩スペースについては、スペース確保や、常時換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。
  • 食堂などで飲食する場合は、時間をずらす、椅子を間引くなどにより、できる限り2メートルを目安に距離を確保するよう努める。施設の制約などにより、これが困難な場合も、対面で座らないように配慮する。

(6)トイレ
  • 便器は通常の清掃で問題ないが、不特定多数が使用する場所は清拭消毒を行う。
  • トイレに蓋がある場合、蓋を閉めてから汚物を流すよう表示する。
  • ハンドドライヤーは利用を止め、共通のタオルは禁止し、ペーパータオルを設置するか、従業員に個人用タオルを持参してもらう。

(7)設備・器具
  • ドアノブ、電気のスイッチ、手すり・つり革、エレベーターのボタン、ゴミ箱、電話、共有のテーブル・椅子などの共有設備については、頻繁に洗浄・消毒を行う。
  • ゴミはこまめに回収し、鼻水や唾液などがついたゴミがある場合はビニール袋に密閉する。ゴミの回収など清掃作業を行う従業員は、マスクや手袋を着用し、作業後に手洗いを徹底する。
    ※設備・器具の消毒は、次亜塩素酸ナトリウム溶液やエタノールなど、当該設備・器具に最適な消毒液を用いる。

(8)オフィスへの立ち入り
  • 取引先等を含む外部関係者の立ち入りについては、必要性を含め検討し、立ち入りを認める場合には、当該者に対して、従業員に準じた感染防止対策を求める。
  • このため、あらかじめ、これらの外部関係者が所属する企業等に、オフィス内での感染防止対策の内容を説明するなどにより、理解を促す。
  • 名刺交換はオンラインで行うことも検討する。

(9)従業員に対する感染防止策の啓発等
  • 従業員に対し、感染防止対策の重要性を理解させ、日常生活を含む行動変容を促す。このため、これまで新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が発表している「人との接触を8割減らす10のポイント」や「『新しい生活様式』の実践例」を周知するなどの取り組みを行う。
  • 公共交通機関や図書館など公共施設を利用する従業員には、マスクの着用、咳エチケットの励行、車内など密閉空間での会話をしないことなどを徹底する。
  • 患者、感染者、医療関係者、海外からの帰国者、その家族、児童等の人権に配慮する。
  • 新型コロナウイルス感染症から回復した従業員やその関係者が、事業場内で差別されることなどがないよう、従業員に周知啓発し、円滑な職場復帰のための十分な配慮を行う。
  • 発熱や味覚・嗅覚障害といった新型コロナウイルス感染症にみられる症状以外の症状も含め、体調に思わしくない点がある場合、濃厚接触の可能性がある場合、あるいは、同居家族で感染した場合、各種休暇制度や在宅勤務の利用を奨励する。
  • 過去14日以内に政府から入国制限されている、または入国後の観察期間を必要とされている国・地域などへの渡航並びに当該在住者との濃厚接触がある場合、自宅待機を指示する。
  • 取引先企業にも同様の取り組みを促すことが望ましい。

(10)感染者が確認された場合の対応
従業員の感染が確認された場合
  • 保健所、医療機関の指示に従う。
  • 感染者の行動範囲を踏まえ、感染者の勤務場所を消毒し、同勤務場所の従業員に自宅待機させることを検討する。
  • 感染者の人権に配慮し、個人名が特定されることがないよう留意する。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした個人データについては、個人情報保護に配慮し、適正に取り扱う。
  • オフィス内で感染者が確認された場合の公表の有無・方法については、上記のように個人情報保護に配慮しつつ、公衆衛生上の要請も踏まえ、実態に応じた検討を行うものとする。

「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」について(日本経済団体連合会 2020年5月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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