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2017年03月10日
2型糖尿病はがんの危険因子 死亡リスクが26%上昇 77万人を調査
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- 糖尿病とがん 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
2型糖尿病はがんの死亡リスクを26%上昇させることが、日本人を含むアジア人77万人以上を対象とした大規模調査で明らかになった。
「糖尿病の人はがん検診を定期的に受けることが重要」と研究者は呼びかけている。
「糖尿病の人はがん検診を定期的に受けることが重要」と研究者は呼びかけている。
2型糖尿病がん死亡リスクを26%上昇
2型糖尿病はがんの死亡リスクを26%上昇させることが、アジア人77万人以上を対象とした大規模調査で明らかになった。
研究は、アジアと米国の大学や医療機関が協力して行われ、7か国(中国、台湾、シンガポール、韓国、日本、インド、バングラデシュ)で行われた。
糖尿病があるとがんのリスクが上昇することは、欧米人では確かめられているが、アジア人を対象とした大規模コホート調査で判明したのは今回がはじめてだという。
結果は、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「Diabetologia」に発表された。
肝臓がんの死亡リスクが2倍に上昇
アジア コホート コンソーシアム(ACC)は、遺伝的要因や環境的要因がどのように病気と関連しているのかを把握しようとする国際共同研究。アジア各国の健康な住民を対象として、29のコホートで合計で100万人規模の研究が立ち上げられている。
研究チームは、ACCから19のコホートを採択し、その中から精度の高い調査のできる7か国(中国、台湾、シンガポール、韓国、日本、インドとバングラデシュ)を選定した。調査の対象となったのは、東アジア人65万8,611人、南アジア人11万2,686人で、平均年齢は53.9歳だった。
12.7年の平均追跡期間中に確認された、がんが原因の死亡数は3万7,343件だった。
その結果、2型糖尿病があると、がんで死亡するリスクが26%増加することが分かった。性、年齢、BMI、喫煙状態、アルコール摂取などの因子を考慮しても、2型糖尿病がんの死亡リスクを高めることが明らかだった。
詳しくみると、大腸がんは1.41倍(95%信頼区間:1.26~1.57)、肝臓がんは2.05倍(同1.77~2.38)、胆管がんは1.41倍(同1.04~1.92)、胆嚢がんは1.33倍(同1.10~1.61)、膵臓がんは1.53倍(同1.32~1.77)、乳がんは1.72倍(同1.34~2.19)、子宮体がんは2.73倍(同1.53~4.85)、卵巣がんは1.60倍(同1.06~2.42)、前立腺がんは1.41倍(同1.09~1.82)、腎臓がんは1.84倍(同1.28~2.64)、甲状腺がんは1.99倍(1.03~3.86)と、それぞれ死亡リスクが上昇した。
アジア人は軽度の肥満でも糖尿病を発症しやすい
2型糖尿病の人は60歳未満でも糖尿病を発症するリスクは上昇することも分かった。一方で、白血病、膀胱がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、肺がんなどについては、糖尿病と死亡リスクの上昇との関連はみられなかった。
アジア地域の経済や人口構成、ライフスタイルはこの20年間に大きく変わっており、そこに暮らす住民の健康状態にも変化をもたらしている。2型糖尿病やがんなどの疾患も増加し続けている。
2型糖尿病がんの発症を高めたり、がんで死亡するリスクと関連があることは、さまざまな研究で指摘されているが、多くは欧米人を対象とした研究で、アジア人では糖尿病とがんの関連ついて不明の点が多い。
日本を含む東アジアの人は一般的に、インスリンを分泌する能力が欧米人に比べて低い。インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が生じると、軽度の肥満であっても、インスリンの必要量の増加に体が対応できず、2型糖尿病を発症しやすい。
日本では欧米に比べ高度の肥満が少ないのに、2型糖尿病が増加しているのは、インスリン分泌が低下しやすい体質が影響しているからだ。
研究チームは、こうしたアジア人特有の体質が、がん発症とどう関連しているかを、今後の研究で明らかにしていきたいとしている。
がん検診を定期的に受けることが重要
「欧米でも、2型糖尿病がリスクを高めるがんとして、肝臓がん、胆管がん、大腸がん、乳がんなどが報告されていますが、今回の調査でアジア人にも当てはまることが分かり、特に肝臓がんは死亡リスクが2倍に上昇することが分かりました」と、研究を主導したニューヨーク大学医科大学院ポピュレーションヘルス部准教授のユゥ チェン氏は言う。
また、腎臓がん、甲状腺がん、前立腺がんなどは、アジア人の方が発症しやすい傾向が示された。
「2型糖尿病のある人はがん検診を定期的に受け、がんを早期発見・治療することが重要です。また、2型糖尿病とがんを防ぐために生活スタイルを改善することも必要とされています」と、チェン氏は強調している。
New study reveals the association between type 2 diabetes and the risk of death from cancer in East and South Asians(Diabetologia 2017年3月7日)Association between type 2 diabetes and risk of cancer mortality: a pooled analysis of over 771,000 individuals in the Asia Cohort Consortium(Diabetologia 2017年3月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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