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2011年09月06日
日本の医療制度は優秀 「先行きに不安も」と警告 ランセットが特集

シンポジウムでは、内外の専門家が「日本が短期間で長寿社会を実現した要因」、「皆保険制度の長所と限界」、「高品質低コスト医療の実態」、「急速な高齢化に対応する介護保険制度導入による成果と課題」、「保健外交における日本の優位性と役割」を主要テーマに分析と検証を行った。
医療費も低くおさえられている
1961年に導入された日本の国民皆保険は、達成から50周年を迎える。国民皆保険があるおかげで、国民はさまざまな医療機関を自由に受診でき、日本の医療費は他の先進国と比べても比較的低い水準に抑えられている。日本でも医療費は増加しているが、他の先進国や途上国では、医療費が国民総生産(GDP)に占める割合はもっと高い。2008年の日本の医療費はGDPの8.5%で、OECD諸国では20位という低位置にある。
日本の平均寿命が高い理由は、保健システムと国民皆保険が優れているせいだけではない。日本人の(1)衛生を好む文化、(2)高い教育水準、(3)平等主義的な社会、(4)食生活や身体活動での好ましい伝統が、寿命の伸長に貢献しているという。
一方で、女性の晩婚化や出産の高年齢化、人口の高齢化、所得格差の拡大などのさまざまな社会的な変化も起きている。65歳以上の高齢者が人口に占める割合はこの50年間で4倍(6%から23%)に上昇し、2050年までに4割にまで増加すると予測されている。海外からは「日本が保険給付の公平性を保ちながら医療費を抑制していることは驚異的」とみられている。
東京大学大学院医学系研究科の佐々木敏氏(公共健康)は、国民健康・栄養調査の成果を紹介した。「他の多くの国と同様に、1990年代の中頃から後半以降、糖尿病の疑いのある人が著しく増加している」という。日本人のエネルギーや炭水化物の摂取量は減少しており、「糖尿病の疑いのある人の増加原因を過度のカロリー摂取または炭水化物摂取に求めることはできない」。
「日本人が高度に精白した米や精製したパンを主食として好んでいることを考えれば、食物繊維の低摂取やグリセミックインデックスの高さが糖尿病増加の原因である可能性がある」と説明。今後は「健康改善のために十分活用できる正確なエビデンスが求められる」とむすんだ。
シンポジウムは「日本は、一致協力して健康増進に取り組まななければ、世界での平均寿命ランキングから下がっていく可能性がある」、「過去の成功は必ずしも将来のトップレベルの成果を保証しない」とまとめられた。
日本国際交流センター
ランセット日本特集号「国民皆保険達成から50年」
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