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2011年09月06日
日本の医療制度は優秀 「先行きに不安も」と警告 ランセットが特集
世界的に有名な医学誌「Lancet(ランセット)」が9月1日、日本の保健医療に関する論文特集号を発行した。これにあわせて同日、東京の国連大学で50周年を迎えた日本の国民皆保険制度についてシンポジウムが開催された。
シンポジウムでは、内外の専門家が「日本が短期間で長寿社会を実現した要因」、「皆保険制度の長所と限界」、「高品質低コスト医療の実態」、「急速な高齢化に対応する介護保険制度導入による成果と課題」、「保健外交における日本の優位性と役割」を主要テーマに分析と検証を行った。
日本人の平均寿命は世界トップクラス
医療費も低くおさえられている
日本人の平均寿命は、1940年代は男性50歳、女性54歳だったが、その後は急速に延び、1970年代後半までに世界トップクラスになった。厚労省の最近の調査によると、心疾患や脳血管疾患などの予防・治療が平均寿命の伸長に付与し、日本人の平均寿命は、男性では世界4位、女性では1位になった。国民皆保険は、日本人の寿命伸長に大きく貢献しているという。
1961年に導入された日本の国民皆保険は、達成から50周年を迎える。国民皆保険があるおかげで、国民はさまざまな医療機関を自由に受診でき、日本の医療費は他の先進国と比べても比較的低い水準に抑えられている。日本でも医療費は増加しているが、他の先進国や途上国では、医療費が国民総生産(GDP)に占める割合はもっと高い。2008年の日本の医療費はGDPの8.5%で、OECD諸国では20位という低位置にある。
日本の平均寿命が高い理由は、保健システムと国民皆保険が優れているせいだけではない。日本人の(1)衛生を好む文化、(2)高い教育水準、(3)平等主義的な社会、(4)食生活や身体活動での好ましい伝統が、寿命の伸長に貢献しているという。
一方で、女性の晩婚化や出産の高年齢化、人口の高齢化、所得格差の拡大などのさまざまな社会的な変化も起きている。65歳以上の高齢者が人口に占める割合はこの50年間で4倍(6%から23%)に上昇し、2050年までに4割にまで増加すると予測されている。海外からは「日本が保険給付の公平性を保ちながら医療費を抑制していることは驚異的」とみられている。
医療費も低くおさえられている
「これまでの成功は必ずしも将来を保証しない」と警告
健康をおびやかす新たな要因も目立つ。「他の先進国に比べ、たばこの消費量が多い」、「肥満が少しずつ増加してきている」、「自殺率が高く上昇している」などの調査結果が示された。また、医療の現場では「保健衛生で塩分摂取量の低減を促す広報活動や、降圧剤による高血圧の治療・管理が、脳卒中死亡率の低下に大きな役割を果たした」としながらも、「高コレステロール血症の患者が実際に治療される割合は、他の先進国に比べて低い」といった問題が指摘された。
東京大学大学院医学系研究科の佐々木敏氏(公共健康)は、国民健康・栄養調査の成果を紹介した。「他の多くの国と同様に、1990年代の中頃から後半以降、糖尿病の疑いのある人が著しく増加している」という。日本人のエネルギーや炭水化物の摂取量は減少しており、「糖尿病の疑いのある人の増加原因を過度のカロリー摂取または炭水化物摂取に求めることはできない」。
「日本人が高度に精白した米や精製したパンを主食として好んでいることを考えれば、食物繊維の低摂取やグリセミックインデックスの高さが糖尿病増加の原因である可能性がある」と説明。今後は「健康改善のために十分活用できる正確なエビデンスが求められる」とむすんだ。
シンポジウムは「日本は、一致協力して健康増進に取り組まななければ、世界での平均寿命ランキングから下がっていく可能性がある」、「過去の成功は必ずしも将来のトップレベルの成果を保証しない」とまとめられた。
日本国際交流センターランセット日本特集号「国民皆保険達成から50年」
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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