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2009年10月27日

「1人では難しい生活習慣改善」を地域の人材でサポート 足立区

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 東京都足立区の人口は63万人、区民の平均寿命は男性 77.6歳、女性 84.4歳と、東京23区内では下位にある(男性:21位・女性:22位)。脳卒中などの脳血管疾患や、心筋梗塞などの虚血性心疾患といった生活習慣病が原因で亡くなる人が多く、約6割の死因になっている。この割合は全国平均に比べても高い。

 糖尿病はとりわけ深刻な課題となっており、糖尿病の有病率は23区でトップクラス、糖尿病を起因とする死亡率も高く、全国平均の約1.5倍になる。区の2003年の国民健康保険をみると、糖尿病は医療費のもっとも多くかかった疾患となっている。また、国民健康保険データ(40〜74歳)によると、糖尿病の受診件数が23区でもっとも多い。

 こうした深刻な状況を打破しようと、区民の健康づくり運動である「健康あだち21」では糖尿病を最重点課題として予防活動に力を入れている。

NPO法人ADMS(アダムス)が取り組む地域医療ネットワーク
 地域の医療関連団体やNPOなどが一体となり、区民を中心に保健・医療分野をはじめとしたさまざまな分野が連携する取り組みも開始され、注目されている。それが、2007年2月に足立区、足立区医師会、足立区歯科医師会、足立区薬剤師会などを中心とした諸団体が参加し設立された「足立区糖尿病対策推進協議会(通称:ADMS)」だ(2008年10月にNPO法人化)。

 ADMSが立ち上げられたきっかけは、足立区医師会が2006年度より約2年半実施した公的研究事業である「かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関するパイロット研究(J-DOIT2)」。糖尿病予防に取り組む自主グループによる生活改善を支援する東京都の「糖尿病予防自己管理支援モデル事業」の実施地区にも選ばれた。

 このときの成果にもとづき、生活習慣病予防のための地域横断的な試みとして、足立区の地域風土に即し、区民の視点に立った医療サービスを提供する体制を構築。地域の身近な医療機関で症状に応じて適切な医療を受けられるよう、専門医のいる基幹となる病院や、かかりつけ医のいる診療所に加え、保健所、自治会、地域の商店街なども取り込んだ糖尿病対策推進の包括的なネットワークづくりを目指している。

足立区の地域医療ネットワーク構築のモデル図
「足立区らしさ」を追求した独自のネットワーク構築を目指している

東京都資料より
 「糖尿病対策でもっとも大切なのは教育と啓発」という考えから、できるだけ多くの糖尿病予備群や患者の療養指導をしていこうと、日本糖尿病学会の糖尿病療養指導士とは別に、独自の基準を設け「生活習慣病指導員」「糖尿病療養指導士」「生活習慣病指導医」を認定している。

 地域全体で健康増進事業を展開していくうえで、ADMSが特に力を入れるのが人材育成と地域への啓発だ。独自に認定している生活習慣病指導員は“メタボのソムリエ”という位置付けで、医療・介護・福祉従事者だけでなく一般区民も対象にしている。ネットワークの主役である区民が、地域・職場・家庭で健康増進と生活習慣改善に自主的に取り組むことを支援し、生活習慣病予防に無関心な層をゼロにしようと活動している。

 今年4月に生活習慣病対策と健康について区民とともに考える第1回「ADMS元気フェスタ」を開催、松田晋哉・産業医科大学医学部教授や区教育委員会食育担当者らが講演した。今月18日と24日には生活習慣病指導員の認定研修会を足立区医師会館で行った。「1人の力では難しい生活習慣病予防と生活習慣の改善(行動変容)を地域の人材でサポート」しようと、予防や治療を促す活動を展開している。

特定非営利活動法人ADMS(アダムス)
「健康あだち21」の中間評価(足立区)
平成17年市区町村別生命表の概況(厚生労働省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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