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2019年01月23日
貼るだけで血糖コントロール 世界初のマイクロニードル型の人工膵臓
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東京医科歯科大学や神奈川県立産業技術総合研究所などの研究グループが共同で、マイクロニードル型の人工膵臓のプロトタイプを開発した。貼るだけで血糖値を自動的に検知し、それに応じてインスリン供給を調整する機能があるという。この人工膵臓により良好な血糖コントロールを得られることを動物実験で確かめた。
マイクロニードル型の人工膵臓のプロトタイプを開発
東京医科歯科大学などが、世界初の「エレクトロニクス制御フリー」「タンパク質フリー」「ナノ粒子フリー」なアプローチによる人工膵臓デバイスを開発し、糖尿病モデルマウスでの実証実験に成功したと発表した。
この研究は、東京医科歯科大学生体材料工学研究所バイオエレクトロニクス分野の松元亮准教授らが、神奈川県立産業技術総合研究所の陳思淵研究員、名古屋大学環境医学研究所の菅波孝祥教授と共同で行っているもの。研究成果は科学誌「Advanced Functional Materials」電子版に発表された。
インスリン療法の手段のひとつとして、インスリンポンプの普及が進んでいる。「インスリンポンプ療法」(CSII)は、携帯型インスリン注入ポンプを用いて、インスリンを皮下に持続的に注入する治療法。
CSIIが血糖コントロールを改善するという報告は多いが、一方でCSIIには患者に及ぼす身体的・心理的負担や、機械特有の補正・メンテナンスの必要性、運用コストなど課題もともなう。
そのため、機械や電気駆動を必要としない、自律型のインスリンポンプである「人工膵臓」を創り出すことが求められている。
これまで、グルコースオキシダーゼやレクチンなどのタンパク質を基材とする人工膵臓が試作されてきた。しかし、生体由来の材料には限界があり、タンパク質変性にともなう不安定性や毒性が不可避であり、実用化には至っていない。
そこで研究グループは、タンパク質を一切使用しない、完全合成材料のみによるアプローチを開始した。そして、外部刺激に応答して物理化学的性質を変化させる「スマートゲル」を開発するのに成功した。
痛みなく、安く、使い捨て可能な「貼るだけ人工膵臓」
開発した「スマートゲル」と再生絹フィブローインを融合。フィブローインは優れた力学的特性や、生体適合性および化学的に可変な生分解性をもち、医療で広く利用される生体材料だ。
これにより、皮下挿入が容易で、人工膵臓の機能を発揮するマイクロニードル型の人工膵臓のプロトタイプを開発した。
この人工膵臓を健常および糖尿病のモデルマウスの皮下に留置する実験を行い、「クローズド・ループ型」のインスリン供給を実現するのに成功。開発したデバイスは2ヵ月以上、連続的な血糖値検知と血糖値変動に応答したフィードバック機構によりインスリン供給を調整し、血糖コントロールを改善することを実証した。
これまで米ノースカロライナ大学などが人工膵臓の開発に成功しているが、効果は数時間しか持続しなかった。今回の研究で開発した技術は、糖尿病患者の生活の質改善の観点で求められる「週単位の持続性」ニーズに応えるものだという。
研究グループは、機械に頼らず、痛みなく、安く、使い捨て可能な「貼るだけ人工膵臓」の開発を目指している。糖尿病における低血糖の回避、血糖値スパイクの改善などアンメットメディカルニーズ(望まれながらも満たされていない医療上のニーズ)を解決できる可能性がある。
「開発した人工膵臓は機械型と比べて極めて安価で使用負担も軽減できる。今後、臨床応用へ向けた開発的研究につなげていく」と、研究グループは述べている。
神奈川県立産業技術総合研究所 戦略的研究シーズ育成事業
Microneedle-Array Patch Fabricated with Enzyme-Free Polymeric Components Capable of a Weekly On-Demand Insulin Delivery(Advanced Functional Materials 2018年12月9日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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