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2012年04月17日

世界の認知症発症数 2050年に1億人を突破 WHO報告書

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糖尿病合併症
 認知症の発症数は世界で増えており、有効な対策をしないでいると2050年までに現在の3倍に膨れ上がると、世界保健機関(WHO)が発表した。

 認知症とは、脳の病気が原因で記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出ている状態をさす。原因となる主な疾患はアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症などだ。アルツハイマー病は認知症の原因としてもっとも多く、70%以内が該当するという。

 認知症は糖尿病とも関連がある。2型糖尿病が認知症の危険性を上昇させることが、多くの研究で報告されている。血糖コントロールが良好でなく、高血糖の状態が続くと、脳の血管にも悪影響があらわれる。糖尿病だけでなく、高血圧症、高脂血症、肥満、喫煙習慣なども脳の健康に良くない。これらを改善することが認知症の予防につながる。

100人に1人が認知症を発症
 世界保健機関(WHO)がこのほど発表した報告書「認知症:公衆衛生上に重要課題」によると、世界の認知症有病数は現在、およそ3,560万人に上る。2030年までに2倍の6,570万人、2050年までに3倍の1億1,540万に増えると予測されている。認知症は世界中で増加しているが、半数以上(58%)は低・中所得国に集中しており、この割合は2050年までに70%以上に上昇するという。

 認知症は毎年770万人ずつ増え続けている。国連推計の2050年の世界人口は約91億人(うち60歳以上が20億人)なので、患者の割合も約1.27%に上昇する計算だ。世界の認知症の治療や社会的損失のコストの総計は、1年当たり50兆円(6040億USドル)以上に上る。一方で、全国規模で認知症対策を適切に対処するプログラムを設けている国は世界に8ヵ国しかないという。

 認知症では、もの忘れをはじめ、日常生活に支障を来すさまざまな症状が現れる。症状に対する主な治療には、薬物療法と、主に介護サービスを利用して行われるケアやリハビリテーションがある。

 アルツハイマー病の治療は早い段階から開始したほうがより効果があり、良い状態を長く維持できることが分かっている。原因によって治療法と介護のポイントが異なるため、早期の原因特定が重要となる。

 認知症の対策は遅れており、先進国でも認知症の診断が適切に行われていない傾向がみられる。高所得国でさえ認知症が適時診断されている割合は5分の1から半数に過ぎず、診断されたときにはすでに進展してしまっているケースが少なくない。

 「認知症を初期に発見し、必要な医療サービスやソーシャルケアを提供できる体制を整備すれば、認知症の負担を低減できる。しかし、現状では医療体制は十分に整備されていない」とWHOの非感染性疾患(NCD)部門のOleg Chestnov副長官は話す。

 認知症患者を介護する人の負担は深刻だ。認知症患者の介護は主に、配偶者や子供、家族や友人などによって提供されている。報告書では認知症患者の世話をする家族などが、うつ病や不安症などの精神疾患をもつ傾向があり、身体的にも不健康を強いられている現状があると指摘。介護者は就労ができなくなったり制限されるなど、社会的にも困難に直面している。

 「認知症の症状と早期診断、治療と介護の重要性に対する社会的な認知は遅れている。認知症に対する社会的な理解を促し、認知症のスチグマ(不名誉の印)を徹底的に縮小することが重要だ」と国際アルツハイマー病協会のMarc Wortmann氏は指摘する。

 「介護者を社会的に支援するプログラムの設置が認知症ケアを向上させる。国の経済基盤が低所得であっても高所得であっても、認知症患者をケアする在宅福祉の充実により、認知症の負担を軽減できる。より細やかな医療サービスを提供できるよう、医療や看護の臨床・長期医療の両面から支援する努力が必要だ」と強調している。

Dementia cases set to triple by 2050 but still largely ignored(世界保健機関 2012年4月11日)
Dementia: a public health priority

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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