糖尿病セミナー

17. 足の手入れ

2015年7月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
永寿総合病院
糖尿病臨床研究センター長 渥美義仁先生


なぜ足の手入れが必要か

 糖尿病と足は、意外なほど強い関係があります。ふつう日常生活で足に気を使うことはほとんどありませんが、糖尿病があると足の手入れが非常に重要になります。
 糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、神経障害のほかに動脈硬化などによる血流障害が起こりやすく、また細菌や真菌(みず虫)などの感染に対する抵抗力が低下します。
 神経障害があると痛みを感じにくいため、ケガやヤケドに気付きにくく、つい放置しがちです。さらに、動脈硬化などが進行し血流障害が起きると、からだの末端、特に足の先などには血液が流れにくくなり、細胞が必要とする栄養や酸素が、十分に供給されなくなります。
 高血糖は、からだの抵抗力を弱くするので、傷口が化膿しやすくなったり、傷の治りも遅くなります。
 これらのことは、からだ全体にあてはまることですが、足は手などに比べて目にふれる機会が少ないことから、糖尿病の人は特に足の手入れに配慮が必要です。

足の手入れを怠ると...

 もし、足の手入れを怠ると、どのようなことになるのでしょう。
 まず、神経障害により感覚が鈍くなっているため、ケガやヤケドなどの発見が遅れたり、放置してしまいます。そして、早めに手当すればすぐに治る程度のケガでも、血流障害があったり、細菌に対する抵抗力が低下しているため、なかなか治らず、傷口が化膿するケースがあります。
 適切な処置をせずに放置すると、やがて潰瘍へと悪化します。潰瘍になってしまうと治療は長期にわたり、入院も必要になります。


ケガを放置していたため、
壊疽にまで進行してしまった例

★足の手入れが特に必要なのは...
次に該当する方はより注意してください。
以前に足の潰瘍や壊疽となったことがある
透析治療を受けている
足や足のゆびが変形している
神経障害や血流障害があると言われている
網膜症などで視力が低下している
(足を自分でチェックできない)
一人暮らしの高齢者
(周囲の人が異常に気付く機会が少ない)
 そしてこの段階に血流障害が重なり、十分な血液が流れないとさらに悪い方向に進み、壊疽(えそ)という、組織(細胞の集合)が死んでしまう病気になってしまいます。壊疽の治療は非常に困難で、場合によっては足を切断しなくてはならなくなります。足を切断すると、日常の活動範囲は制約されたものになってしまいます。
 このように、糖尿病による足の病気はさまざまなことが重なりあって、初めはごく小さなケガでも、想像以上に悪化してしまうことがあります。

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