レセプトデータや健診データなどの医療ビッグデータを手がけるJMDCは、同社の提供する医療ビッグデータを用いて、新型コロナウイルス感染時の重症化の危険因子の解析を行った。
その結果、新型コロナの重症化のリスクを、「糖尿病」は3.4倍に、「肥満」は1.8倍に、「高血圧」は1.6倍に、「喫煙」は1.6倍に、それぞれ高めることが明らかになった。
糖尿病があると新型コロナの重症化リスクは3.4倍に上昇
DPCは、病名や診療内容に応じて定められた1日当たりの定額の点数で診療費を包括的に計算する方式(手術などは出来高算定になる)。この新しい方式により、病名や診療内容に応じてどのくらいの医療費がかかるのかの目安が分かるようになった。
JMDCは、DPC調査データにもとづく約1,400万人分の医療機関データを活用している。今回の解析は、2021年2月末までにコロナを理由に入院した患者7,373人を対象とした。入院患者のなかで、ICU(集中治療室)に入室した患者を「重症化」と定義し、解析では185人が重症化と判定された。
それらにもとに、体重や年齢といったDPC調査データ様式1のデータと、医薬品投薬歴から判断される既往歴の、どの項目がもっとも影響しているかを機械学習モデルを用いて解析した。
その結果、下記の要因が新型コロナの重症化リスクに関わってくることが明らかになった。
糖尿病 | 重症化リスクは3.4倍に上昇 (P値 <0.001) |
糖尿病治療薬の服薬者。対照群は非服薬者。 |
肥 満 | 重症化リスクは1.8倍に上昇 (P値 0.013) |
体格指数(BMI)が25以上。対照群はBMI 18.5~24.9の普通体重。 |
喫 煙 | 重症化リスクは1.6倍に上昇 (P値 0.042) |
喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)400以上。対照群は喫煙指数0~399。 |
高血圧 | 重症化リスクは1.6倍に上昇 (P値 0.007) |
高血圧治療薬の服薬者。対照群は非服薬者。 |
各リスクファクターと新型コロナの重症化の関連
出典:JMDC、2021年
なお、今回用いた入院患者データの8割が初診の患者だったため、既往歴は入院中の投薬歴から推察可能な既往歴のみを対象とした。
「重症化リスクの高い方が、予防をより意識いただくことで、個人の感染を減らし、周囲への伝播も防ぎ、医療機関リソースの圧迫を改善することができれば幸いです」と、同社ではコメントしている。
糖尿病の人は血糖コントロールを良好に維持することが大切
糖尿病であり、さらに血糖コントロールが良好でなかったり、治療を受けていないと、新型コロナに感染し発症すると重症化しやすいことは、国内外で報告されている。
糖尿病とともに生きる人が、新型コロナの感染拡大に備えるときに、もっとも重要なのは必要な糖尿病の治療を受け、血糖コントロールを良好に保つことであることが、多くの調査で明らかになっている。
米国糖尿病学会(ADA)では、「糖尿病が新型コロナの重症化する重要な危険因子のひとつであることが分り、糖尿病の治療が重要であるという意識がより強く求められるようになりました」と述べている。
新型コロナの拡大により、外出の自粛やリモートワークが増え、運動や身体活動が制限されたり、パソコン・テレビ・スマホなどの画面を見ている時間が増え、座ったままの時間が長くなり、不眠や不健康な高カロリーの加工食品の摂取が増えるなど、2型糖尿病の危険因子を増やした人は多い。
「困難な状況下でも、良好な血糖コントロールを維持し、健康的な生活スタイルを続けられるよう工夫をすることが重要です」としている。
JMDC
Diabetes and Coronavirus(COVID-19)(米国糖尿病学会)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]