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2023年10月16日
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表)
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- IDAF(国際糖尿病支援基金)
2023年7月にインスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアのメンバーが来日し、IFLの最近の活動と取組みについて、代表のアリシア・ジェンキンス医師よりお話をうかがいましたので、ご紹介します。
国際糖尿病支援基金はこの活動に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動を支援をしています。
私はIFLグローバル代表のアリシア・ジェンキンスです。
今回、我々はオーストラリアから、IFL創設者のロン・ラーブ氏とスタッフのニール・ドナラン氏とともに、都内にある国際糖尿病支援基金の事務所を訪れています。
本日はIFLの最近の活動と取り組みについてお伝えしたいと思います。
世界中の糖尿病患者の状況は、その国の置かれた状況によって大きく異なります。
オーストラリアや日本のように経済的に恵まれた国で育った糖尿病患者の多くは、医師の診察を受け糖尿病療養に必要なインスリンや血糖測定器を簡単に利用することができます。ほとんど差別を受けることもなく、通常の生活を送ることができ、長寿も実現出来ています。
しかし、世界中の糖尿病患者のすべてがそうではありません。
2021年国際糖尿病連合(IDF)の資料によると、糖尿病を持つ人の約81%は貧困等の恵まれない地域に居住しており、多くの子供や成人がインスリン不足や適切な治療を受けられず、不十分な血糖管理により発症してから早期に深刻な合併症や若年死に直面しています。
(IDF 9th Atlas,2021)
資料1は、グラハム・オークル博士と行ったある糖尿病患者についての研究です。
これを見るとオーストラリアのような経済的に恵まれている国では小児1型糖尿病の家族の糖尿病治療の自己負担額は、たとえ下位5分の1以下に属する低所得者層であっても1%未満であることがわかります。
しかし、私たちが調査した15か国では、小児糖尿病患者にかかる平均的な自己負担額は家族全体の収入よりも16%多い状況です。
インスリン数本と注射器とテストストリップだけで、国によっては一家の収入の10倍から14倍の自己負担額となります。そのため外部の支援が無くては生き延びることが出来ません。
貧困課題を抱える国々では、糖尿病を持つ若年層11万2,000人と成人の約50%がインスリン製剤や血糖管理物品などの基本的支援を必要としていると推計されています。
一部の国では、政府が糖尿病患者への援助を試みていますが、2015年時点の約60から70か国で低所得国と中低所得国に注目し、インスリンが提供できる国はどれくらいあるのかを発表しました。それを資料2に示しています。
低所得国はいずれもインスリンを提供しておらず、中低所得国であっても10%に過ぎません。これら2つのグループはいづれも、血糖測定機やテストチップを提供していないため、酷い低血糖を起こしてしまうのです。
家庭での重度の低血糖症を防ぐためには血糖測定に必要なテストストリップやグルカゴンも必要で、経済規定に恵まれない地域の人々を支援するには、我々のように外部からの援助が必要なのです。
■IFLでは、途上国の糖尿病患者に対して、3つのことを実践しています。
- 使用期限内の未開封インスリン製剤・血糖測定機器および試験紙など基本的なサプライの寄附募集・購入・現物提供や被災地(災害時の緊急支援)を含む対象地域の支援
- 対象地域の糖尿病キャンプ支援を通じて、そのコミュニティに必要とされる糖尿病関連知識の伝授やすでに糖尿病状態にある人のスクリーニング強化
- アドボカシー活動や学術調査研究等によって、対象となる人々が必要としている基本的な糖尿病治療や物品使用の享受向上を目指す
IFLは1986年にオーストラリア・メルボルンにて、ロン・ラーブ氏により設立されました。設立当初のメンバーの何人かは今も続けて活動を行っています。
IFLはオーストラリアを本部として、現在8つの支部があります。また、日本の国際糖尿病支援基金とは長年にわたり素晴らしいパートナーシップを結んでいます。
左:2002年の運営委員 右:2023年現在の運営委員
糖尿病患者にとって生命維持でもあるインスリンの支援を行うには、グローバルビレッジの構築が必要です。当事国だけではなく、周辺国、国連やWHO、各国糖尿病関連団体、企業、医療機関による支援協力、ソーシャルメディア、ブロガーのネットワークなどを活用して支援物資の寄付者を必要としています。IFLでは個人への支援は行っていないので、現地の医療機関の協力が欠かせません。また資金提供には多くの医師、看護師、栄養士、研究者、学生、弁護士、会計士、ソーシャルメディアの専門家が私たちをサポートしてくれています。私たち自身も権利擁護活動を行っており、例年、他の権利擁護団体や糖尿病団体との連携も強化されています。
- インスリン製剤:35万mL
- インスリン用注射器:150万本以上
- 血糖測定用試験紙:50万枚以上、血糖測定器:数1000台
- 800回以上の発送
- 240万オーストラリアドル(日本円で2億円超)に相当
途上国の多くの国がIFLの支援を受けてきました。常時、約30か国がIFLからの物資を受け入れており、通常は年に4回支援が行われています。これまで96ヵ国がIFLの支援を受けました。
IFLが支援した糖尿病患者さんを一部紹介します。入院中のインドの小児糖尿病患者の女の子の家族には金銭的な余裕がありませんでした。その病院にいたアメリカ人医師とインド人医師が定期的に医療を提供することを約束し、IFLからインスリン等を無料提供したおかげで、4週間後には体重も増加し元気になりました。
もう1人の小児糖尿病患者は、エクアドルのサマンタです。4歳だった彼女がIFLからの支援を受け、貧困に陥ることを免れたため、オーストラリアの多くの若者と同様に大学に通うことができました。現在22歳になり豊かな人生を送っています。
また私たちは、コロナ禍以前はエクアドルやフィリピン、モルジブで現地の糖尿病患者さんを対象とした糖尿病キャンプの運営を支援しました。日本からもボランティアとして参加していただき運営を手伝ってくれました。これらの活動はコロナ禍で中断したものの、直ぐにコロナ以前に戻ることを期待しています。
エクアドルで糖尿病患者を支援しているFUVIDAでは、現地の子供たちが参加し、糖尿病について多くのことを学ぶことができます。途上国の一部では1型糖尿病がそれほど一般的ではないため、現地の若い医師、医学生、医療従事者などもボランティアとして参加し、糖尿病キャンプの運営を手伝いながら、1型糖尿病について学習します。
糖尿病キャンプや検査プログラムの支援について
IFLが支援している各地の糖尿病キャンプでは、資料3のように、毎回、合併症のスクリーニングや健康診断も実施しています。
オーストラリアの1型糖尿病患者で、糖尿病の合併症により31歳で早世した、フィオナ・クォックさんにちなんで名づけられた「フィオナ・クォック合併症予防プログラム」では、病院で購入可能で血液検査、尿検査、眼底検査、血圧測定を行うことができました。
ニールたちは、この検査プログラムをモルジブ、震災後のエクアドル、今もなお継続しているフィリピンの小児・青少年糖尿病キャンプやコミュニティ、刑務所でのスクリーニングで実践しました。
私たちが得た糖尿病に関する知識と意識を促進し、他の人々の助けに応じられるように、その一部を資料4のように書き留めています。
もちろん、もっとも重要なことは命が救われることですが、これらの資料を残すことで、より多くの人に私たちの必要性と私たちの活動を知ってもらい私たちが支援できるようになりました。
- 保険経済学
- アドボカシー
- 冷蔵庫なしでのインスリン保管
- 6か国の糖尿病疫学
- 眼の検査
- ウズベキスタンで1型糖尿病死亡減少
- ウクライナでの戦争による糖尿病治療に必要な医薬品・器機へ影響
ニールと当時の医学生たちはフィリピンの糖尿病キャンプに参加し、臨床現場即時検査(POCT)として、指先に針を刺す簡易穿刺検査を実施していることを紹介しました。ブドウ糖だけではなくHbA1c、コレステロール、尿中のタンパク質についても主要な大病院での検査機器と比較して、糖尿病で注意すべき、すべての重要な要素が非の打ち所がないほど正確だったので、これらの機器が導入される運びとなりました。
過去にウズベキスタンにおいて、ロシア語を話すオーストラリア人の若い医師の協力のもと、年間30,000mlのインスリン支援を開始しました。当時のウズベキスタンは15歳未満の糖尿病患者の死亡率が非常に高い状況でした。私もニールと現地を訪問しましたが、現地の看護師たちは1型糖尿病についてよく理解していたもののインスリンが無いことを知ることとなりました。2002年に支援を開始してからインスリンの供給が広まり、小児糖尿病患者の死亡率も12分の1に低下しました、そしてさらに重要なことは、人々の糖尿病に対する意識が高まったことに加え、ウズベキスタン政府がこの問題に取り組み、我々がインスリンを支援する必要がなくなったは素晴らしい成果でした。
これを機に緩和ケア医で人権弁護士でもある、フランクリン・フレナン博士に協力を求めました。
インスリンと糖尿病治療が「贅沢」ではなく、基本的な人権であることを強調する記事を医学雑誌へ掲載するために、フランクリン医師は私たちを手助けしてくれました。そして私たちは学術的に裏打ちされた「人権を守る法律を作る」必要性があることを力説しました。
特に貧困層が多い国の場合、法律について述べるだけでは物事を解決できないことが多いことから、私たちはオンラインセミナーを開始しました。国連の健康権に関する特別通信員であるモーフォ・キング医師と共に、私たちはアフリカの糖尿病の若者を対象に、ウズベキスタンの例を実践するためのセミナーを2021年に実施しました。
ラテンアメリカでも2022年に同様のセミナーを開催し、そこで伝えられた内容は複数の言語に翻訳され、Life for childのHPにも掲載されています。
小児糖尿病患者へは、経済的に恵まれない地域の糖尿病患者さんを対象にしたマテリアルなどの入門書も作成しました。これにより、地元の臨床医が患者の権利を守るために政府にどのように働きかけるべきかを学ぶことができるようになりました。
災害時の支援について
災害などの緊急事態が発生した際に、我々は毎回どこよりも早く支援を実施し、継続することが重要と考えています。年々、人災と自然災害の数は増加していますが、一部の先進国では災害へ備える環境が整備されているため死亡率や負傷率が減少していますが、途上国などは、元々のリソースが不足していることに加え、災害への備えが不十分なため、それを私たちが支援しようとしています。
IFLの経験に基づいて改善することと、私はIDF-WPRの委員で6年間評議会に所属してこのプロジェクトを担当し、人々に如何に災害を回避し、どのように備えるべきかを伝えるために大規模な災害対応マニュアルを発行しました。災害時には、多くの場合、政府や支援団体の支援であっても、インスリンが到着するまでに平均3週間から6週間かかり、インスリンや注射器などの糖尿病療養に必要な物資は含まれていません。
1型糖尿病患者はインスリン無しでは、3週間持たないことが分かっています。数週間インスリン注射を受けられなかった患者さんは数日以内になくなっています。
■緊急/災害時について資料5
- 何処で何が必要か、どのように届けるか?
- 被災地の場所はどこか?必要ものは何か?
- 通訳・翻訳の必要性について
- 普段と違う種類のインスリンや血糖測定機への対応など
IFLには各支部があり、支援先に迅速かつ必ず物資が届くように、世界中にネットワークを持つ重要性があるため、緊急連絡先リストがあるのです。そのため、早急に人を派遣し言語の翻訳も可能で、重要な糖尿病の知識も共有できます。
例えば、インスリンや血糖測定器はその国で使用されているものとは異なる可能性があるため、それらと代替えできるインスリン製剤の一覧表を共有して知ることができます。普段使用しているものと違っていても、資料6の一覧表を通して、代替可能なインスリンを見つけることができます。
同様に、災害時には血糖測定器についても使い慣れた血糖値単位ではないmmol/Lかmg/dlである表示の機器を使用する場合が起こり得ます。でも代替え可能な一覧表で対応することができます。災害時にはmmol/Lやmg/dlで測定される可能性があります。そこで私たちはどちらの単位でも血糖値把握ができるよう資料7のような血糖測定器値の換算チャートを提供しています。
インスリンについて、私たちが行った研究では、熱帯地域の高温下で冷蔵保存をしていなくてもインスリンを使用できることはわかっていますが、凍結してしまった場合は使用できません。これは私たちが行う重要な仕事として、資料8のように、自分自身で使用した注射器や穿刺針を再利用できることを伝えています。
ただし、他人と注射器や穿刺針は決して共有しないことが重要です。
今後の新たな支援活動について
現在、我々はウクライナへの支援活動を行っていますが、コロナ禍やウクライナ戦争、その他いくつかの自然災害の後には、新たな課題がいくつか発生します。コロナ禍では、先進国も途上国も関係なく、どの地域でも供給ラインがしばしば寸断され、ますます多くの人々が恵まれない状況に陥り助けを求める人々が増えています。
インスリンなどを必要とする人たちに販売して利益を得ようとする政府や民間人もいるため、私たちはそれを低価格で提携先の医療機関を通じて、人々に直接販売する代替えプログラムを実施しています。
エチオピアへの支援については、支援物資を提携先へ直接届けるようにしています。内戦状態を抜け出しつつあるものの、今なお混乱が続くエチオピアへの支援は、物資の制限などがあり難しいものですが、私たちはインスリンと注射器を購入するプログラムを今まさに開始しようとしています。
同じくマダガスカルでも支援を試みようと考えています。
HbA1c検査を提供している会社では小児糖尿病患者向けのプログラムがたくさんありますが、大人向けではありません。そこで、私たちはすべての人が臨床現場即時検査(POCT)でHbA1c検査を受けられるように消耗品を提供することを検討しています。HbA1cテストはモニタリング(経過観察)に役立ちます。
最後に活動方向として次の写真を紹介します。日本の国際糖尿病支援基金をはじめ、多くの団体や個人が私たちの活動に協力をしてくれています。芸術的感性豊かな子供たちの作品を通じて「協力すれば、できる!」と言っています。
我々は今後もさらに多くの支援活動を一緒に続けて行きたいと考えています。
これからも皆様のご協力の程よろしくお願いいします。
インスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動にご賛同いただき、御参加いただける方は、下記口座(郵便局)までお振込み頂きますようお願い申し上げます。
御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。
振込口座(郵便局):
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
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