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2023年01月13日

43歳で脳卒中を発症 困難を乗り越え生還 ステージで「脳卒中の警告サイン」を呼びかけ

ファンイベントで脳卒中になった俳優が今、ステージ上で啓発活動――AHAニュース

HealthDay News

 米国で俳優やミュージシャンとして活躍するRob Benedictさんはそのとき、いつものようにステージ上のパネルディスカッションで聴衆を楽しませていた。

 突然、仲間の2人が彼に近づき、ふざけて彼を持ち上げ体を逆さまにした。彼らは全員、米国の人気テレビ番組「スーパーナチュラル」に出演している俳優だ。

 スーパーナチュラルは、ある兄弟が全米各地を旅しながら超常現象に挑むというドラマ。そのストーリーに合わせて彼らも全米各地でファンイベントを行っていた。

 Benedictさんはステージ上で笑いながら2人のいたずらをやり過ごした。しかしその1時間後、割れるような頭痛に襲われ、さらに、ろれつが回らなくなってきた。イベント後のサイン会には出ず、そのままホテルに戻って行った。

 その間、彼の様子が変だと気付いた別の俳優が、祖父が脳卒中を経験したばかりだという友人に電話をかけ、Benedictさんの話し方を聞いてもらい意見を求めた。その友人は、「すぐに彼を病院へ!」と叫んだ。

 病院でのCTスキャンの結果、Benedictさんは脳卒中と診断された。首の左頸動脈が解離して血栓ができ、脳への血流を閉ざしていた。

 医師は血栓溶解薬の投与による治療を行った。その後3日間、BenedictさんはICUで管理され、10日間で退院。ロサンゼルスの自宅へ戻った。

 入院中に医師は、「逆さまにされたときに頸動脈の血管壁が裂けたのかもしれないが、確実なところは分からない」と語った。

 ただ、Benedictさんにとって脳卒中の原因は過去のことであって関心の的ではなく、彼はすでに未来に目を向けていた。

 言語聴覚士の協力を得てリハビリテーションに励み、脳卒中から数ヵ月後にはオーディションを受けて、ふたたびスーパーナチュラルの演者の一員として復帰。制作スタッフとの打ち合わせなども精力的にこなした。

 さらに彼はまた、インディーロックバンドの「Louden Swain」のメンバーとしての復帰も果たした。

 「脳卒中からわずか数週間後の段階でRobはリハーサルに参加し、以前と同様、前へ進むことを目指していた。彼の姿勢は実に驚異的だった」と語るのは、Benedictさんと25年間にわたりバンド活動を続けているドラマーのStephen Nortonさんだ。

 「Robは歌詞を忘れてしまったり、口にしたい言葉を探しあぐねているときに、いら立ったように見えることもあった。しかし、少なくともバンド活動に対する彼の意志が揺らぐことは決してなかった。メンバーは、時間の経過とともに彼の状態が改善すると信じていた。そして実際にそうなった」とNortonさんは振り返る。

 彼らのバンドは、2013年にBenedictさんが脳卒中を発症以来、6枚のアルバムをリリースしている。

 Benedictさんが脳卒中後に書いた曲のひとつは、彼が死線をさまよった体験を表現した「Amazing」というタイトルだ。

 「それは、病院のベッドに横たわったまま誰ともコミュニケーションがとれなかったときの思いを表現したものであり、かつ、自分がその困難な状況を乗り越える力の源泉となった、かけがえのない恵みを表した曲だ。この曲をライブで演奏すると、聴衆もともに歌ってくれる。それは、脳卒中後の新たな個性を身に付けた自分への応援歌となる」と彼は語る。

 現在52歳のBenedictさんは、自分自身の精神的な回復力、そして俳優やバンド活動を続けようとする力の強さを自認している。

 しかしそれだけでなく彼はまた、自分自身が信じられないほど運に恵まれているということも理解している。

 「医師ははじめ、『頸動脈の病変は治らないかもしれない』と言っていた。しかし6ヵ月後にはその医師から、『大丈夫。ジェットコースターや激しいスポーツなど、首に負荷となることは避けながら、健康に気を付けていくように』と言われた。私は極めて幸運であり、そのことに深く感謝している」。

 BenedictさんとLouden Swainのメンバーは、世界各地で開催されるスーパーナチュラルのファンイベントでステージに立ち続けている。

 そして、機会があるごとに、ステージ上から「F.A.S.T.」について話す。

 F.A.S.T.とは、脳卒中発症時の症状である顔の麻痺(Face)、腕の麻痺(Arm)、発語の障害(Speech)と、時間(Time)の頭文字であり、それらの症状が現れたら速やか(Fast)な救急要請の必要があることを端的に表すフレーズだ。

 Benedictさんによると、「イベントに参加した観客が後日、『F.A.S.T.の大切さを聞いていたので祖父や祖母の命を救うことができた』と伝えてくれることがある」そうだ。

 「私は脳卒中の警告サインが現れてから数時間以内に受診できた。今、その体験を人々に伝えることが、自分を助けてくれた人々への恩返しになっていると思う。これは素晴らしいことであり、まさに"Amazing"だ」。

注:脳卒中の警告サイン「FAST」について、下記ページで詳しく解説されています。

糖尿病ネットワーク事務局

[American Heart Association News 2022年12月5日]

American Heart Association News covers heart and brain health. Not all views expressed in this story reflect the official position of the American Heart Association. Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
Photo courtesy: Rob Benedict

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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