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2022年05月20日

糖尿病は男と女でどう違う? 男女の体脂肪の付き方の違いが糖尿病にも影響

 体に脂肪が蓄積しやすい部位は、男性と女性とでは異なる。男性は内臓脂肪がたまりやすいが、女性は皮下脂肪がたまりやすいことが知られている。

 男性と女性とで、あまり変わらない糖尿病の治療が行われているが、糖尿病のリスクやメカニズムが男性と女性でどのように違うかを理解すれば、患者の性差に配慮しながら、より効果的な治療を行えるようになる可能性がある。

2型糖尿病と肥満は関連が深い

 2型糖尿病は過去40年間で、世界的に急増している。世界保健機関(WHO)によると、2型糖尿病とともに生きる人の数は、1980年の1億800万人から2014年には4億2,200万人に増え、先進国だけでなく低・中所得国で急速に増えている。

 糖尿病はありふれた疾患だが、完全に理解するためには多くの研究が必要となる。たとえば、世界的に2型糖尿病は肥満と関連が深いことが知られているが、肥満が糖尿病を引き起こすメカニズムはすべては解明されていない。

 糖尿病は血糖値が高くなる疾患で、インスリンというホルモンが血糖値を下げて正常に保つ働きをしている。肥満があると、そのインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなる。

 肥満は、主に皮膚のすぐ下にある皮下組織に脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」と、内臓の周囲に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」がある。とくに糖尿病と関連が深いと考えられているのは、内臓脂肪型肥満の方だ。

男性の方が女性よりも人生の早い段階で糖尿病を発症しやすい

 「2型糖尿病を、いつ、どのように発症するかについて、多くのことが推定されていますが、体のさまざまな部位にたまる脂肪組織が関わっているという見方が有力です」と、カナダのコンコルディア大学PERFORMセンターのケリー デラニー氏は言う。同センターでは、糖尿病などの予防や患者教育などについて研究している。

 「しかし、体に脂肪が蓄積しやすい部位は、男性と女性とでは異なります。男性は内臓脂肪がたまりやすいのですが、女性は皮下脂肪がたまりやすいのです」。

 内臓脂肪型肥満は、お腹が突き出るような体型の男性でよくみられる。内臓に脂肪が蓄積しているかどうかの目安は、腹囲(腹部の周囲の長さ)で、日本では男性は85cm以上、女性は90cm以上があてはまる。

 一方、女性は、閉経とともに女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減り、糖尿病に対する保護作用が失われることが影響しているという。一般的に、女性よりも男性の方が、人生の早い段階で2型糖尿病を発症しやすいのには、こうした背景があるからだと考えられている。

 また、男性では、脂肪細胞のサイズが大きくなりやすいが、女性では、脂肪細胞が増殖し、数が増加しやすいことも知られている。

男性と女性の違いに配慮した糖尿病治療が必要

 デラニー氏らは、糖尿病リスクは、男性では内臓脂肪の蓄積、女性では皮下脂肪の蓄積によって上昇するという仮説にもとづき、約2万件の論文を解析する研究を行い、細胞レベルの微小環境で何が起こっているのかを調べた。

 その結果、男性と女性とでは、免疫細胞やホルモン分泌、細胞のシグナル伝達などに全体的な違いがあることが明らかになった。男性と女性とでは、2型糖尿病を発症する起源が異なる可能性があるという。

 「男性と女性とで、あまり変わらない糖尿病の治療が行われていますが、糖尿病のリスクやメカニズムが男性と女性でどのように違うかを理解すれば、患者さんの性差に配慮しながら、より効果的な治療を行えるようになる可能性があります」と、デラニー氏は述べている。

体重コントロールにより糖尿病が改善 男女で異なるアプローチが必要

 肥満や過体重を改善するために勧められている方法のひとつは、食事のカロリーを減らし、体重をコントロールすることだ。

 しかし、デンマークのコペンハーゲン大学などの研究によると、低カロリーの食事は、男性と女性では異なる代謝への影響をもたらすという。

 研究グループは、糖尿病予備群と判定された、肥満のある2,020人の男女に、糖尿病予防プログラムの第1段階として、低カロリーの食事を8週間続けてもらった。

 その結果、体重が減少し、肥満を解消できた人も多かったが、男性は女性よりも大幅に体重が減り、脂肪の蓄積も減少し、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の指標がより改善した。

 一方、女性は男性よりも、善玉のHDLコレステロール、ウエスト・ヒップ比、体重から脂肪の重量を差し引いた除脂肪体重、収縮期(最高)血圧と拡張期(最低)血圧の差を示す脈圧などが大幅に改善していた。

 体重コントロールにより、男女の参加者の35%で血糖値が正常に戻り、インスリン抵抗性の改善も同様だった。

 「低カロリーの食事による体重コントロールにより、男性は女性よりも多くの恩恵を受けられる傾向が示されました。さらに長期の調査が必要ですが、 2型糖尿病や肥満症の治療では、性別に応じて異なるアプローチをする必要がある可能性があります」と、同大学栄養・運動学部のピア クリステンセン氏は言う。

 「極端な食事制限により、体重を短期間で大幅に減らすと、脂肪だけでなく筋肉も減ってしまうおそれもあります。男性と女性とで、それぞれ最適化された体重コントロールの方法を開発する必要があります」としている。

Origins of diabetes may be different in men and women, according to new Concordia research (コンコルディア大学 2022年3月23日)
Sex differences in regional adipose tissue depots pose different threats for the development of Type 2 diabetes in males and females. Obesity (Obesity Reviews 2022年1月5日)
Women and men experience different benefits from low-calorie diets (Wiley 2018年8月8日)
Men and women respond differently to rapid weight loss: Metabolic outcomes of a multi-centre intervention study after a low-energy diet in 2500 overweight, individuals with pre-diabetes (PREVIEW) (Diabetes, Obesity and Metabolism 2018年8月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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