ニュース
2015年08月19日
糖尿病の治療を放置していた人に受診勧奨 受診者の割合が倍増
- キーワード
- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症

人工透析に移行すると、週2~3回の通院が必要となり、患者のQOL(生活の質)が著しく低下するのに加え、医療費も年間1人当たり約500万円と移行前の10倍に上昇する。
そこで、埼玉県では特定健康診査やレセプトのデータを活用して、糖尿病が重症化するリスクの高い人(ハイリスク者)が人工透析に移行するのを防止するため、2014年度から「糖尿病性腎症重症化予防対策事業」を開始した。
市町村が事業主体となり、ハイリスク者のうち、医療機関未受診の方や治療中断している人に受診勧奨を、また、糖尿病で通院中の人に食事・運動などの生活指導を行った。
対象となったのは18市町の市町村国民健康保険の被保険者99万778人。2014年度には19市町で事業を開始、2015年度には11市町が加わり、現在は30市町で実施している。
まず該当者に医療機関への受診を勧奨する文書を送付し、その後で重症化が進んでいるとみられる人には電話や訪問による再度の勧奨を行った。
2015年1月から3月にかけて実施した受診勧奨者数のうち3,283人について、3月分までのレセプトデータを分析して医療機関への受診状況を確認したところ、受診したのは698人(21.3%)だった。内訳は、未受診者2,741人のうち611人(22.3%)、治療中断者542人のうち87人(16.1%)だった。
1ヵ月当たりの医療機関受診者の割合は、受診勧奨後の2015年1月から3月の3ヵ月間では月平均8.2%に上り、それ以前の6ヵ月間(月平均4.1%)に比べ、2倍の人が受診しており、受診勧奨の効果が認められた。
同県保健医療政策課「受診勧奨の通知文や案内パンフレットにより糖尿病の重症化リスクをしっかり伝えたこと、また、症状が重いと思われる人には電話などにより再度の勧奨を行ったことが成果につながった」と述べている。
埼玉県は、18市町の698人が医療機関を受診したことにより症状が維持された場合、治療を受けないまま合併症が進行した場合と比較した将来(20年間)にわたる医療費適正化効果を約10億円、年平均約5,000万円と推計している。
受診勧奨による医療機関への受診結果は、2015年5月分までのレセプトデータを分析する予定。また、2015年度に事業を開始した11市町については、7月から9月にかけて受診勧奨を実施している。
生活指導に関しては、18市町で生活指導の必要がある2,436人に対して参加案内通知を送付したところ、845人(34.7%)から参加申し込みがあった。参加者に対し、かかりつけ医と連携し、2015年6月から半年間、保健師等が食事や運動などの生活習慣を改善する支援を行っている。
18市町の845人に生活指導を実施したことにより症状が維持された場合、人工透析への移行を防止することで、将来(20年間)にわたり約34億円、年平均約1億7,000万円の医療費適正化効果を得られると推計している。
市町村担当者からは「勧奨の結果を受託事業者から市に速やかに報告してもらえれば、対象者からの相談に迅速に対応できる」「個人に対応した受診勧奨の文書内容であったため、受け取った方から大きな反響が寄せられた」という意見が寄せられたという。
今年度末の生活指導終了後には、参加者の糖尿病性腎症の進行状況や人工透析移行防止による医療費適正化効果などを取りまとめる予定。また、2015年度に事業を開始した11市町については、生活指導の必要がある方を選定中で、9月から生活指導を実施する予定としている。
事業の全県への拡大も目指しており、県保健医療政策課では「糖尿病の不安がある人は治療を放置せずに、一歩踏み出して、ご自身の健康を守りましょう」「医療機関を受診していない方は速やかな受診を強くお勧めします」「治療中断中の方は、近くの医療機関に相談しましょう」と述べている。
糖尿病対策に関する情報(埼玉県保健医療政策課)
受診勧奨の通知文や案内パンフレット(埼玉県) [1] [2] [3]
糖尿病の検査(HbA1c 他)の関連記事
- 早い時間に食事をとると糖尿病リスクは減少 「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重要
- 「温泉療法」で⾼⾎圧を改善 ストレスによる睡眠障害を緩和 冬の温泉⼊浴では注意点も
- 糖尿病の予防はすぐにはじめられる こんな人は糖尿病リスクが高い 東京都など
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病の人にとって危険? 血糖値が上昇し筋肉の質も低下
- 握力が低下している人は糖尿病リスクが高い 握力や体力を維持して糖尿病リスクを減少
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 脳卒中の脅威は世界で拡大 【脳卒中を予防するための8項目】
- 世界の8億人以上が糖尿病 糖尿病人口は30年で4倍以上に増加 半分が十分な治療を受けていない
- 【世界糖尿病デー】糖尿病の人の8割近くが不安やうつを経験 解決策は? 国際糖尿病連合
- 【世界糖尿病デー】インスリン治療を続けて50年以上 受賞者を発表 丸の内では啓発イベントも
- 若い人の糖尿病が世界的に増加 日本人は糖尿病になりやすい体質をもっている 若いときから糖尿病の予防戦略が必要