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2010年09月28日
肥満の経済効果:年間死者が15.5万人減少 OECD報告書
それによると、1980年まで肥満の割合は10人に1人未満だったが、現在では「OECD諸国の約半数で2人に1人が過体重か肥満」だという。有効な対策をしないと、肥満や過体重は10年以内に3人に2人以上に増加するおそれがある。
報告書では「体重が15kg増える毎に早期死亡リスクは約30%増加し、重度の肥満者は正常体重者より寿命が8〜10年短く喫煙者と同程度になる。多くの国で総医療費の1〜3%は肥満によるものとみられ、特に米国では5〜10%にも達する」とし、「医療費の増加を抑えるためにも、肥満への対策が必要」と強調している
肥満が増えた原因として、食品のカロリー単価が世界的に下りインスタント食品など高カロリーで栄養価の低い食品を入手しやすくなったことや、労働・生活環境が変化し運動量が減少していること、女性労働者の増加、ストレスや雇用不安などを指摘している。現在社会の生活習慣は変化しており、肥満の蔓延をまねく条件が揃っているという。
報告書「肥満と予防の経済学」
Health: OECD says governments must fight fat(OECD)
包括的な肥満対策を実施すれば、慢性疾患による年間死亡者数を日本では15万5000人、イタリアでは7万5000人、英国では7万人、メキシコでは5万5000人、カナダでは4万人減らせる。肥満により引き起こされる主要な慢性疾患を予防・対策できれば、生活の質(QOL)を改善できるだけでなく、医療費の総額を約1%削減できると分析している。
政府の肥満対策が担う役割は大きく、各国政府は食品価格に影響する農業補助金など補助制度や税制、食事ガイドラインの制定、乗用車ではなく徒歩での通勤・通学を奨励、都市環境を整備しファストフードではなく生鮮食料品を利用しやすくし、運動・スポーツ施設を増やすなどして対策している。学齢期の子どもを対象にした取組みでは、学校給食をより健康的なメニューに変更したり、体育館などの改善、健康教育などを行っている。
肥満対策に必要なコストは、メキシコでは1人あたり12ドル、日本と英国では19ドル、イタリアでは22ドル、カナダでは32ドルと概算した。これは「医療費のほんの一部であり、OECD諸国が現在予防にあてている医療関連
しかし、「コストが高くつく、規制や財政措置が困難である、基幹産業と対立するおそれがある」などの理由で、現状では十分に対策できていない。最も効果的な対策は家庭医による個人カウンセリングだが、安い費用で健康を増進する効果的な手段は
職場関連プログラムの年間費用が約500億円、家庭医による個人カウンセリングの費用が最大で年間1000億円なのに対し、多くの予防プログラムにかかる費用は年間200億円未満と見積もった。大半の予防プログラムは慢性疾患関連の医療費削減につながるが、削減額は比較的少額(最大で年間150億円)にとどまるという。
報告書は10月7〜8日にパリで開催されるOECD保健担当相会合で議論される予

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