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2008年11月12日

血糖測定器をがん診断用センサーに変える新技術を開発

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 血糖自己測定器をがん診断にも利用できるようにする新しい技術を開発したと、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)が発表した。

 この技術は、血糖自己測定器の測定チップに、新たに開発したユニット「AES」を組み込むことで、1回当たり150円程度でガンの検診を受けることができるというもの。

 血糖自己測定器をガンなどの糖尿病以外の病気の測定に利用できるようにした点が画期的で、糖尿病の治療に使われている血糖自己測定器は利用者が多く、研究・開発が進んでおり安全性・信頼性も優れている点が評価された。

 従来の方法では測定結果を知るのに数日間以上がかかっていたのが、この技術を使えば十数分で済むようになる。また、自宅で簡単に検査を行うことができる、すでにある血糖自己測定器を改良し1枚数百円のガン専用のチップを使うので安価で行える、といったメリットがある。

 血糖自己測定器の血糖測定のメカニズムには、グルコース(血糖)をグルコノラクトンへと化学反応させる「グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)」という酵素が使われている。電子の移動を計測することで血糖値を数値化している。今回の研究はこのメカニズムを応用したもの。

 新たに開発したAESは、特定のガンがあるときに血液中に現れる「ガンマーカー」に結合する物質と、GDHの活性を阻害する物質をつなげた構造をとっている。血液中に標的分子のガンマーカーがあった場合に、ガンマーカー結合部分に結合しその部分の構造が変わり、GDHの活性を阻害する物質の構造変化も引き起こす。

 AESの構造が変わるとGDHの活性阻害がなくなるので、活性が抑えられていたGDHが活性化し、グルコースからグルコノラクトンへの変化が起こる。これを測定することによって、血液中にガンマーカーがあることを分かる。

 この技術は、NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、池袋一典・東京農工大学准教授らが開発した。今後は実用化に向けた検査の感度と精度を高める研究開発が必要としている。

アプタマー酵素サブユニットの概念図(左)と研究成果のイメージ図(右)

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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