ニュース
2015年11月18日
「ビール腹」の人は要注意 内臓脂肪がたまると死亡リスクが上昇

しかしBMIの数値により「標準体重」と判定された場合でも、脂肪が付き過ぎてお腹が突き出た肥満は注意を要することが、今回の調査で明らかになった。
米国のメイヨー クリニックなどの研究チームが、全米で行われた米国健康・栄養調査(NHANES)に参加した18~90歳の男女1万5,184人を14年間にわたり追跡して調査した。
その結果、ビール腹体形の男性は単なる肥満や過体重の男性に比べて死亡リスクが1.87倍に上昇することが判明。女性でも死亡リスクは1.48倍に上昇した。
お腹がぽっこりとした肥満は内臓脂肪によるもので、このタイプの肥満は「内臓脂肪型肥満」と呼ばれている。研究グループが過去に行った調査でも、内臓脂肪型肥満の人は2型糖尿病や脳卒中、心臓病を発症するリスクが高いことが判明している。
つまり、BMIで肥満と判定されなかった人でも、内臓に脂肪がついている人は死亡リスクが上昇することになる。この研究は、米国内科学会が発行している医学誌「アナルズ オブ インターナル メディシン」に発表された。
BMIが25未満で、肥満ではないものの内臓脂肪が蓄積している場合は「隠れ肥満」と呼ばれることがある。
内臓脂肪型肥満が良くないのは、内臓脂肪組織から分泌されるホルモンである「アディポネクチン」が減ってしまうからだ。
アディポネクチンには、傷ついた血管壁を修復する働きをしたり、悪玉のLDLコレステロールを抑制して動脈硬化を予防するほか、インスリンの働きを高めたり、血圧を低下させる作用などがある。
アディポネクチンの分泌が減少すると、動脈硬化を防ぐ働きが低下し、インスリン抵抗性の状態が引き起こされ、血糖値が上昇しやすくなる。
肥満を改善し内臓脂肪を減らすことはアディポネクチンの分泌を高め、動脈硬化のリスクを減らすことにつながる。
そのためには、まず食事と運動を見直して改善することが重要だ。食事では「食べ過ぎない」ことと「食品の栄養バランスに気をつける」ことを意識することが求められる。
また、運動には、「肥満を防ぐ」「血管をしなやかにする」「善玉HDLコレステロールを増やす」「血圧や血糖値を下げる」など、さまざまな効果がある。
しかし、ビールをよく飲む人は肥満になりやすいのも事実だ。原因として考えられるのは、まずビールに合うおつまみは高カロリーのものが多いこと。空揚げや焼き鳥、餃子、フライドポテトなど、油が多いもの、味の濃いものをビールと一緒に食べると、ついたくさん食べてしまいがちだ。
また、ビールが好きな方はたくさん飲む傾向があるのも原因に挙げられる。お酒のカロリーはその度数に左右され、アルコールの度数が高くなればなるほどカロリーが増えていく。ビールのアルコール度数は5度程度だが、4杯、5杯と飲んでしまうと、簡単に高カロリーになってしまう。
一般的にアルコール量にして約20~30gを限度にすると、飲み過ぎを防げる。これは、缶入りビール(350mL)だと1~2本に相当する。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめる。
Normal-Weight Central Obesity: Implications for Total and Cardiovascular Mortality(アナルズ オブ インターナル メディシン 2015年11月10日)
Belly fat in men: Why weight loss matters(メイヨー クリニック 2013年6月8日)
糖尿病と肥満の関連記事
- 運動と健康的な食事の組み合わせで効果は最大に 内臓脂肪が減り転倒も防止 女性にも運動が必要
- テレビの視聴時間を減らすと糖尿病リスクは減少 遺伝的リスクのある人も心臓病や脳卒中を予防できる
- 朝食をしっかりとると糖尿病が改善 血糖管理に大きく影響 朝食で「お腹ポッコリ」肥満を予防
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病リスクを高める 筋肉の質も低下 「自然な食品」はリスクを減らす
- ウォーキングなどの運動で糖尿病リスクを減少 余暇時間の運動が寿命を4.5年延ばす 仕事の後は体を動かす習慣を
- 【世界肥満デー】内臓脂肪が増えると糖尿病リスクは上昇 肥満は脳のインスリンの働きを低下 認知症リスクが増加
- 糖尿病の人はビタミンやミネラルが不足 「食の多様性」が糖尿病リスクを下げる 食事バランスを改善
- 糖尿病の人は脂肪肝にご注意 ストレスはリスクを高める 緑茶を飲むと脂肪肝が減少
- 「玄米」で糖尿病を改善 食事では「低GI食品」を活用 血糖値を上げにくい新しい米を開発
- ヨーヨーダイエットが1型糖尿病の人の腎臓病リスクを上昇 体重の増減を繰り返すのは良くない