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2014年12月05日
「褐色脂肪」で2型糖尿病をコントロール エネルギー燃焼を増加

白色脂肪細胞はエネルギーをためこむ細胞だが、褐色脂肪細胞は逆にエネルギーを燃焼させる細胞だ。
以前は、褐色脂肪は幼児の頃は体に多くあるが、成人になると失われてしまうと考えられていた。しかし、最近の研究ではPET検査が行われるようになり、成人にも首や肩の周囲などに褐色脂肪が残っていて機能していることが分かってきた。
「PET」は、「ポジトロン断層法」と言われている細胞の代謝・機能を画像化する検査法。褐色脂肪組織にブドウ糖が集まりやすいことを利用して、特殊なブドウ糖を指標として使い撮影する。これにより、脂肪組織を観察できるようになった。
褐色脂肪は、低温下でエネルギーを燃焼して体を温める働きをするのに加え、エネルギー消費量を高め、脂肪を燃えやすくする働きをすると考えられている。
この働きはインスリンが細胞にグルコースを輸送する方法とは違うものだった。褐色脂肪細胞のグルコース輸送体の量は、インスリンの10倍以上になることが判明した。
褐色脂肪には、効率的に血糖値を下げる働きがあることが明らかになった。残念なことに、糖尿病の人がもっている褐色脂肪は少ないという。
「褐色脂肪細胞を活性化する方法が見つかれば、肥満や2型糖尿病をコントロールする新たな治療法となる可能性がある。研究はまだ始まったばかりだが、毎日のインスリン注射なしで、血糖コントロールを改善できるようになる可能性がある」と、モナッシュ大学のサトウ マサアキ博士は言う。
褐色脂肪は成人にもあることが発見されたのは、ほんの数年前のことだ。褐色脂肪がある人とない人に別れる理由はまだ分かっていないが、研究は世界中で行われている。

もともと脂肪は、飢餓状態などの非常時のエネルギー源として、また体温の保持、ホルモン分泌への関与など、さまざまな働きをしている。しかし、増えすぎた脂肪は弊害になってしまう。
適度な運動を続けると内臓脂肪が減り、代わりにエネルギー代謝を高める褐色脂肪が皮下に増える。褐色脂肪はグルコース代謝に影響し、身体組成を改善し、体脂肪量を減少させ、インスリン感受性を改善するという。
研究チームは、マウスを11日間、ホイールで運動させる実験を行った。運動を続けたマウスでは、白色脂肪細胞が減り、褐色脂肪細胞が増えることを確認した。
「有酸素運動や筋力トレーニングによって体脂肪は大きく変質し、褐色脂肪が増え、エネルギー代謝に好ましい影響を与えるようになることが判明した」と、研究者は述べている。
血糖コントロールを改善するためには、体重を減らして脂肪を減らしただけでは不十分である可能性がある。運動をすることで体脂肪の組成が変わり、相乗的な効果をもたらすという。
研究チームは、肥満マウスを使った実験で、過食によって褐色脂肪のミトコンドリアの機能が失われ、脂肪を燃やして熱を産生できなくなることを突き止めた。
過度の栄養は、脂肪細胞の信号伝達機能を低下させる。褐色脂肪の衰えが、2型糖尿病や心臓病などの代謝疾患に影響をもらたしているという。
「人が狩猟して食料を得ていた時代には、何日も食べることができない生活が続いていた。過剰なエネルギーを蓄えられる白色脂肪は生存に有利だった」と研究者は述べている。
「しかし、食料が豊富にあり、いつでも食べられる現代では、エネルギーをためる白色脂肪が過剰に蓄積されやすい。体のエネルギー消費を増やすためには、褐色脂肪のもつ熱産生能力を活性化させることが必要となる」としている。
‘Good fat’ could help manage type 2 diabetes(モナッシュ大学 2014年11月24日)
New Joslin Study Shows Exercise Creates "Good Fat"(ジョスリン糖尿病センター 2013年6月21日)
BU Researchers Identify Specific Causes of Brown Fat Cell “Whitening”(ボストン大学 2014年4月9日)
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