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2014年04月25日

糖尿病合併症が20年間で大幅減少 心筋梗塞や高血糖は60%以上減

 心臓病や脳卒中、腎臓病、下肢切断といった糖尿病合併症の発症率が、米国でこの20年間に急速に低下していることが判明した。「糖尿病は数百万の患者の生活に影響をもたらす破壊的な病気ですが、医療は進歩しており、糖尿病合併症は減りつつあります」と、研究者はこの調査結果を歓迎している。
「脳卒中」や「下肢切断」も、20年間で50%以上減少
 この調査は、米国疾病予防管理センター(CDC)から研究助成を得て行われたもので、医学誌「ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン」に4月17日付けで発表された。

 研究チームは、「米国医療聞取り調査」(National Health Interview Survey)、「全米退院調査」(National Hospital Discharge Survey)、「米国腎臓データシステム」(U.S. Renal Data System)、「米国人口動態統計」(National Vital Statistics System)の4件の大規模調査のデータを用いて、1990〜2010年の糖尿病合併症の発症について調べた。

 その結果、2010年までに、以下の5つの合併症すべてにおいて、相対的な発生率が低下していることが判明した。
(1)急性心筋梗塞 マイナス67.8% (95%信頼区間[CI] -76.2〜-59.3)
(2)高血糖症による死亡 マイナス64.4% (同-68.0〜-60.9)
(3)脳卒中 マイナス52.7%
(4)下肢切断 マイナス51.4%
(5)末期腎不全 マイナス28.3% (同-34.6〜-21.6)

 絶対的減少がもっとも大きかったのは「急性心筋梗塞」(1万人あたりマイナス95.6人)で、もっとも小さかったのは「高血糖による死亡」(同マイナス2.7)だった。

 「糖尿病合併症を長期間予防すれば、生活の質(QOL)の低下を防ぐことができます。糖尿病をもつ人は、治療を続けながら、より良く生活していくことができます」と、CDCのシニア研究員のエドワード グレッグ氏は述べている。

 糖尿病合併症が急速に減っている背景として、新しい治療薬が開発されるなど、糖尿病の治療の選択幅が拡大していることや、コレステロールなどの脂質や、血圧をコントロールする治療が普及したことを挙げている。

 「医療の進歩が影響しているのはもちろんのことですが、患者自身が食事や運動、禁煙などの生活スタイルを改善し、自己管理することが一般的に行われるようになったことも、大きく貢献しています。糖尿病は、医師や医療スタッフが合併症の危険因子を管理するよりも、患者自身が生活スタイルを改善することで得られるメリットが多い病気です」(グレッグ氏)。

 糖尿病の治療では、医療従事者が患者の生活習慣の指導を行い、自己管理を促しており、その努力が成果をもたらしはじめている。「生活習慣の指導はますます重要です」と指摘している。

20年で糖尿病人口は3倍に増加 医療費も急増
 良いニュースをもたらした調査結果だが、一方では、米国を含め世界中で糖尿病の患者数が増え続けていることが懸念されている。

 「米国だけでも糖尿病有病数が20年間で650万人から2,070万人と、3倍以上に増えています。さらに、糖尿病予備群の数は7,900万人以上に上ります。糖尿病合併症の発症率を抑えられても、糖尿病の全体の有病数が増え続けているので、糖尿病合併症は減っているとは言えないのです」と、グレッグ氏は注意を促している。

 糖尿病の経済的な負担も深刻だ。米国の糖尿病や合併症の医療費は年間18兆円(1,760億ドル)に上り、毎年増え続けている。

 「糖尿病腎症による腎不全、脳卒中、下肢切断などの数は、まだ多いのが現状です。糖尿病合併症を予防するとともに、2型糖尿病の発症数を減らす対策を行う必要があります」と、グレッグ氏は言う。

 なお、20年間の調査は情報が不足しており、1型糖尿病と2型糖尿病を識別できていないことや、糖尿病が原因となる視覚障害や、低血糖の影響などについても不明な点も多いことを付け加えている。

New CDC data show declines in some diabetes-related complications among US adults(米国疾病予防管理センター 2014年4月16日)
Changes in Diabetes-Related Complications in the United States, 1990–2010(ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン 2014年4月17日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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