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2012年10月30日
糖尿病と腎症 糖尿病腎症による透析患者数は10万人超
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●人工透析の費用は患者1人当り年間約500万円
●適切な治療を受けないと、発症してから20〜30年で腎不全まで進行するケースが多い

腎臓は糸球体とよばれる細小血管塊が集まった組織で、この糸球体の一つひとつで、血液中の老廃物がろ過される仕組みになっている。糖尿病腎症は、高血糖が原因となり、糸球体の細小血管に障害が起こり発症する。
糖尿病腎症は自覚症状のないまま、じわじわと進行していく。尿タンパク検査で陽性反応が出たときには、かなり腎症が進んだ状態になっている。早期の腎症を発見するために、尿検査で微量のタンパク質(アルブミン)と、血液検査でクレアチニンを調べるのが有効だ。
- 国際糖尿病連合(IDF)によると、糖尿病とともに生きる人のうち、病期が軽度のものを含め、およそ3分の1が糖尿病腎症を発症している。
- 糖尿病の適切な治療を受けていないと、発症してから20〜30年で透析が必要な腎不全まで進行するケースが多い。
- 人工透析療法の費用は高価で、患者1人当り年間約500万円が必要となる(日本では医療費の公的助成制度が確立しているので、患者の自己負担額は少ない)。
- 腎症は心疾患の危険因子となる。検査で微量アルブミン尿が認められる早期の腎症であっても、心疾患を発症する危険性は2〜3倍に上昇する。
- たばこは腎症の危険因子となる。禁煙しただけで腎症の進行を30%減らすことができる。
血糖コントロール
糖尿病腎症の最大の原因は高血糖。血糖コントロールを良好に保つことは、腎症の予防のうえでも大切となる。
血圧コントロール
厳格な血圧コントロールが腎症の進行を抑えるのに効果的。具体的には、130/80mmHg以下が目標となる。蛋白尿が出ている場合には、さらに低い125/75mmHg未満が目標となる。
降圧薬の種類については、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が、腎症の進行を抑えるのに有効であることが確かめられている。その他に利尿薬、Ca(カルシウム)拮抗薬、β遮断薬、α1遮断薬といった降圧薬が使われている。
その他に低蛋白食、禁煙、コレステロールなど脂質のコントロール、減量、適度な運動、節酒なども有効な治療法だ。

日本透析医学会の調査によると、最新の透析患者数(2011年12月末現在の数値)は、前年から6,340人増え30万4,592人となり、はじめて30万人を超えた。
一方、昨年1年間の導入患者(新たに透析を導入した患者)数は3万8,893人で前年度より1,381人増加した。導入患者数は2009年、2010年と2年間続けて減少していたが、今年度は増加に転じた。
新たに透析を導入した患者のうち、原疾患(透析導入の原因となった病気)が糖尿病腎症だった割合は44.2%(前年比0.6%増加)で全体の第1位だった。第2位は慢性糸球体腎炎で20.4%(前年比0.6%減少)、第3位は腎硬化症で11.7%(前年と同じ)となっている。
糖尿病腎症は、原疾患については1998年に慢性糸球体腎炎との間で首位の座が入れ替わってた。患者数は年々増加しており、糖尿病腎症が原疾患で透析療法を受けている総数は10万7,985人(36.6%)に上る。腎症は治療の開始時期が遅れると進行しやすいので、早期診断・治療は非常に重要となっている。
糖尿病腎症の詳しい情報は
糖尿病セミナー(14) 糖尿病による腎臓の病気
糖尿病セミナー(26) 食事療法のコツ 腎症のある人の食事
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