30. 骨を丈夫に保つには

2016年9月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
公益財団法人骨粗鬆症財団理事長 折茂 肇 先生


糖尿病の人は骨折の危険性が高い

 骨折は、瞬間的にその人の生活を不自由なものにしてしまいます。それまで健康そのものだった人でも、足や腰の骨を折ると、たちどころに歩けなくなってしまいます。骨折が治るまでの不便さは、経験したことがない人にはなかなかわからないかもしれません。
 若い人ならすぐ治るような場合でも、高齢者では治るまでに時間がかかり、その間からだを動かせないことでますます骨や筋肉が弱ってしまい、ついには寝たきりの生活になってしまうこともあります。実際に骨折は、脳卒中などとともに、寝たきりになる主要原因の一角を占めています。
 糖尿病の人は骨折しやすく、その頻度は糖尿病でない人の2〜4倍といわれています。それには、インスリン作用の不足も含め、いろいろな原因が関係しています。

骨粗しょう症とは

 骨の量が減って骨がもろくなり、わずかな衝撃でも簡単に骨折してしまう状態を、骨粗しょう症と呼びます。加齢にともない誰でも骨がもろくなりますが、糖尿病の人ではそのスピードが早く、若いときからすでに、最大骨量(ピーク時の骨の量)が少ないこともあります。ここで糖尿病による骨量減少の話をする前に、骨粗しょう症全般について、簡単に解説しておきましょう。

骨も新陳代謝が必要な生きた組織です

 まるで石のような硬い物質のように見受けられる骨も、内部は生きた細胞が集まっていて、常に新陳代謝を繰り返しています。
 骨の細胞には、骨を新しく作り出す骨芽〈こつが〉細胞、骨そのものを維持する骨〈こつ〉細胞、骨を破壊する破骨〈はこつ〉細胞の三種類があります。古くなった骨は、破骨細胞によって破壊(吸収)され、骨の構成成分であるカルシウムやコラーゲン(蛋白質の一種)が血液中に溶け出します。そのあとに骨芽細胞が集まってきて、コラーゲンを分泌します。このコラーゲンに、カルシウムを主成分とする骨塩〈こつえん〉が沈着して新しい骨が作り出され、骨の強度が保たれます。このサイクルを骨代謝回転といいます。

 さて、骨には姿勢を支持したり、身体の内部を守る役割がありますが、同時にカルシウムを貯蓄する役目も担っています。体内のカルシウムの 99パーセンは骨に存在し、骨以外の血液や筋肉などには、残りのわずか1パーセントが含まれているに過ぎません。しかし、全身の細胞が正常に働くためにはカルシウムが不可欠で、血液中には常に一定量のカルシウムが保たれている必要があります。
 カルシウム摂取不足などから血液中のカルシウム濃度が低下すると、それを補うため破骨細胞は骨を破壊(吸収)して、血液の中へカルシウムを溶かし出します。それにより血液のカルシウム濃度は維持されますが、破壊された骨のほうは、もともとカルシウムが不足しているのですから、再形成が十分に行われません。
 骨粗しょう症とは、加齢やカルシウム摂取不足などから骨代謝のバランスが崩れ、骨形成のスピードを上回る速度で骨吸収が進み、骨の内部がすき間だらけになってしまう病気です。

骨粗しょう症の病状

 骨粗しょう症ではすべての骨が骨折しやすくなりますが、最も問題になるのは大腿骨頸部〈だいたいこつけいぶ〉という足の骨の付け根の部分の骨折です。転んだり太ももをひねったときに折れやすく、まったく歩けなくなり、治るまで数カ月間はベッドから離れらません。高齢者の場合その間に認知症が進行してしまうこともあります。寝たきりになる原因として頻度の高いものです。
 
正常 骨粗しょう症

背骨のレントゲン写真(横向き)

 骨粗しょう症の危険因子には、高齢であること、女性(とくに閉経後)、カルシウム摂取不足、現在または若いころの運動不足、やせている、胃腸が悪い、糖尿病、甲状腺機能亢進症などがあります。とくに女性はもともと男性に比べて骨量が少ないうえ、閉経後は骨吸収抑制作用がある女性ホルモンが急減して、骨量が急速に減ってしまいます。

治療の目的と検査の必要性

 骨粗しょう症の治療の目的は、一にも二にも骨折を未然に防ぐことです。実際に骨の強度を調べるには、エックス線検査などで骨量を測定しその結果から推測します。
 骨粗しょう症は症状に現れないで進行することが多く、たとえ腰や背中の痛みなどがあったとしても、年のせいにして見過ごしてしまいがちです。しかし、骨折してから骨粗しょう症と診断されても遅いのですから、危険因子のある人は、まずは検査を受けて自分の骨の強度を知っておくことが大切です。

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