東京大学生産技術研究所と技術研究組合「BEANS研究所」は、血糖値に応じて異なる強度の光が出る物質でごく小さな粒を作り、体内に埋め込み、外から特殊な紫外線を当てると、その光の強さで血糖値を測定できるシステムの開発を目指している。
研究チームは、ブドウ糖があると光を出す物質をハイドロゲルにくっつける微細加工を施し、直径100μm(1μmは千分の1mm)程度に揃ったビーズを作成するのに成功、体毛のない実験マウスの耳に注射器で数百個を埋め込んだ。ビーズは普段は光らないが、ブラックライトなど特殊な光を当てると血管から染みでた血中のブドウ糖と反応し発光する。
東京大学生産技術研究所で6月19日に行った発表では、マウスの耳に埋め込んだビーズに紫外線を当て、体外からビーズの輝度を計測する実演を披露した。ブドウ糖の濃度に応じて光の強度が変わり、その強さで血糖値を知ることができるとい
う。
ビーズはごく小さいので、注射器の針の穴を通り抜けられる。患者に負担をかけずに体内にビーズを埋め込む技術を開発すれば、皮下を通して連続して血糖値を計測できるようになる可能性があ
る。
糖尿病合併症を防ぐために厳格な血糖コントロールが大切となり、そのために高い頻度の血糖測定が必要になる。多くの糖尿病患者が1日数回の血糖自己測定を行っており、測定に必要な血液量を少なくしたり、指以外の穿刺でも測定が可能な血糖測定器もつくられてい
る。
しかし、「穿刺するのは苦痛」という患者の声は多く、また、血糖値の日内変動をとらえるために24時間連続して血糖測定を行う方法が有用という研究も発表されてい
る。
竹内昌治・東京大学生産技術研究所准教授は今回の発表について、「今後は光の輝度から血糖値を数値化できるようにしたい。睡眠中などでも自動的に血糖測定できるシステムなども考えられる」と述べてい
る。
この研究は、「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」(BEANSプロジェクト)の一環で行なわれた。BEANSプロジェクトは、経済産業省により2008年から始められた研究・技術開発プロジェクト。ナノテクとバイオを融合し、環境・エネルギー分野や医療分野などで新たな市場展開をにらんだ研究開発が行われている。
東京大学生産技術研究所
異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)
[ Terahata ]