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2024年08月09日

若いころの体重増加は糖尿病と心臓病のリスクを高める 若いうちから体重を管理することが大切

 20代以降に体重が増えて肥満や過体重になった人は、60代までに心臓の健康状態が悪化するリスクが高いことが、大規模な調査で明らかになった。

 中年期に体重が増えた人は、年齢を重ねると糖尿病リスクが上昇することも報告されている。

 「若年期・中年期に健康的な体重を維持することは重要です。健康を長期的に改善したいのであれば、若いうちから体重増加を防ぐことが大切です」と、研究者は述べている。

20代以降に体重が増えると健康状態が悪くなりやすい

 20代以降に体重が増えて肥満や過体重になった人は、60代までに心臓の健康状態が悪化するリスクが高いことが、大規模な調査で明らかになった。研究は、欧州心臓病学会(ESC)が発表したもの。

 「若年期や中年期の成人の体重増加と、心臓の血液を送りだす能力が低下する心臓肥大とのあいだに関連があることが分かりました。若いころから健康的な体重を維持することが大切です」と、ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン心臓血管生理学部のアラン ヒューズ教授は述べている。

 研究グループは、イングランド・スコットランド・ウェールズの出生児を対象とした「全国健康・発育調査出生コホート研究」(NSHD)に参加した1,690人を、1946年から追跡して調査した。この研究は、英国医学研究会議(MRC)の支援をえて行われている。

20歳以降に肥満になった人は心臓の健康が悪化

 「これまで肥満や過体重が心臓の健康状態の悪化と関連することが分かっていましたが、今回の調査により若年期や中年期の太りすぎや肥満が、その後の心臓の健康状態と長期的に関連することが明らかになりました」と、ヒューズ教授は言う。

 研究グループは、参加者を若年期から中年期、さらには高齢期まで追跡して調査し、BMI(体格指数)とウエストヒップ比の変化や健康状態について調査した。超音波を使用して心臓の構造や機能を調べる心エコー検査も行った。

 BMIは、体重と身長により算出される値で、肥満や低体重(やせ)の判定などに用いられる。日本ではBMI 25以上が肥満と判定されるが、欧米では30以上が肥満だ。

 研究グループは、心エコー検査で測定できる左室心筋重量(LVM)にも着目した。この値が高いと、心臓組織の量が増え、心臓の健康状態が悪くなっており、心臓病による死亡リスクが高まっていると考えられる。

 その結果、20歳以降に太り、BMIが高くなった人は、60代になるとLVMの値が高くなり、心臓の健康状態が悪くなりやすいことが分かった。

 たとえば43歳の人が、年齢を重ねてからBMIが5増え肥満になると、LVMは15%あるいは27g増加するという。

若いときに比べて体重が増えている人は要注意

 「若いときに比べて体重が増えて、肥満や過体重になっている人は、心臓にもダメージが生じているおそれがあります」と、ヒューズ教授は指摘する。

 「逆に、若いころは肥満だったが、食事や運動などの生活スタイルを見直して、体重を減らすことに成功した人など、BMIを数十年にわたり改善した人は、心臓損傷や機能障害の予防や改善のベネフィットを得られる可能性があります」。

 「健康的な体重を維持することは、成人初期の人々にとっても重要です。心臓の健康を長期的に改善したいのであれば、すべての年齢の人は、若いうちから体重増加を防ぐ必要があります。それが世界中で増えている肥満の対策につながります」としている。

 研究グループは今後、体重増加と心臓の健康の関連について解明するために、糖尿病や高血糖に影響について調査する予定としている。 電子機器の利用を減らし、不要な照明は消しておき、さらに日中はできるだけ太陽光を浴びるようにすることをお勧めします」としている。

中年期の体重増加や肥満は糖尿病リスクを高める
若いときから健康的な体重を維持することが大切

 中年期に体重が増え肥満や過体重になった人は、年齢を重ねると糖尿病リスクが上昇することが、別の研究でも明らかになっている。

 「若年期や中年期の肥満や内臓脂肪などの増加は、2型糖尿病のよく知られた危険因子です。一般的には、体重と身長から計算するBMIの値が25を超えると、危険信号と言われています」と、同大学公衆衛生学部のメアリー ビッグス氏は言う。

 研究グループは、65歳以上の男女4,193人を対象に、体脂肪の量や分布などの変化と2型糖尿病のリスクの関連を、12年追跡して調査した。

 その結果、50歳の時点で体重やBMI、体脂肪、ウエスト周囲径などが増えることは、2型糖尿病のリスクの増加と強く関連していることが明らかになった。

 調査では主に以下のことが明らかになった――。

  • 肥満度がもっとも高かった人は、もっとも低かった人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2~6倍高い。
  • 中年期に体重が増えた人は、体重が増えずに安定していた人に比べると、糖尿病リスクが3倍高い。
  • 中年期にウエスト周囲径が10cm以上増えた人は、2cm以下しか増えなかった人に比べて、糖尿病リスクが70%高い。

 「調査結果は、糖尿病を予防・改善するために、中年期に健康的な体重を維持することが重要であることを裏付けるものです」と、ビッグス氏は言う。

 「65歳以上の高齢者の糖尿病リスクを減らすためにも、若いころからの体重管理は重要であることが示されました」としている。

Weight gain in young and middle-aged adults is linked to poor heart health in older age (欧州心臓病学会 2024年7月17日)
Adulthood adiposity affects cardiac structure and function in later life (European Heart Journal 2024年7月16日)
Obesity, weight gain in middle age associated with increased risk of diabetes among older adults (JAMA and Archives Journals 2010年6月24日)
Association Between Adiposity in Midlife and Older Age and Risk of Diabetes in Older Adults (JAMA 2010年6月23日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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