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2018年04月13日
パッチを貼るだけで血糖測定 糖尿病患者を「痛み」から解放
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- おすすめニュース 医療の進歩 医薬品/インスリン 血糖自己測定(SMBG)

新しいタイプの血糖測定システムを、英国のバース大学の研究チームが開発した。皮膚にパッチを貼るだけで、痛みがなく、10〜15分ごとにグルコース値を連続測定するという。
血糖自己測定(SMBG)の課題を克服
穿刺針で指先などから微量の血を出し、それを測定チップにしみこませ、測定器で血糖値を読み取る血糖自己測定(SMBG)は現在の主流だが、「採血の痛みがつらい」「測定に費用がかかる」「自己管理が大変」などの声も聞かれる。
またSMBGでは、治療内容によって患者によっと異なるが、1日に測定できる回数は10回程度が限界だ。
しかし、こうした患者の不満は近い将来に解消される可能性が出てきた。英国のバース大学の研究チームが、新しいタイプのグルコース測定システムを開発するのに成功した。
痛みがまったくなく、パッチを皮膚に貼るだけで、10〜15分ごとにグルコース値を連続測定するという。装着中の入浴や運動も可能だ。
10〜15分ごとにグルコース値を連続測定
仕組みは、皮膚に張り付けられたパッチのセンサーから微量な電流を流し、血糖値とよく相関する皮下の組織間質液のグルコース値を読み取り、そのデータから血糖値を導いて表示するというもの。
パッチに搭載された新型のセンサーには、炭素原子が蜂の巣のように並んだ「グラフェン」という新しい素材が使われている。グラフェンは軽くて薄く、強靱で、導電性がきわめて高い素材だ。
最新のスクリーン印刷技術によって、センサーを網の目にように整列させ、電気浸透抽出により間質液中のグルコースを吸入し、微弱な電流を流してグルコース値を測定する。
パッチを肌に張り付けておくだけで、10〜15分ごとにグルコース値を自動的に測定し、痛みなどの刺激はほとんど感じないという。
網の目のように並んだ超小型のセンサーが、グルコース値を測定し、より正確な測定値をアルゴリズムで選び出す仕組みになっている。

血糖値と相関性が高く正確
得られるのは間質液中のグルコース値だが、そこから導く血糖値との相関を、血糖自己測定(SMBG)により「キャリブレーション」(較正)する必要はない。
実験では、得られたグルコース値が血糖値と相関性が高く、高い精度で測定できることが示された。ただし、SMBGも行っている場合は、比較して正確さを確かめる必要があるという。
測定したグルコース値をスマートフォンやスマートウォッチのアプリに読み見込ませると、数日間の血糖変動を把握できるようになる。
この新しい技術を安い価格で普及させるための研究は進行中だが、実現すればSMBGに代わるものになる可能性がある。
血糖変動を“線”としてとらえる
研究者チームの1人であるリチャード ガイ教授は、「非侵襲、すなわち指先などを針で穿刺することなしに、血糖測定を行うのは高い目標です。血糖自己測定では、測定のたびごとに指先などを穿刺する必要あります。新たに開発した技術ではその必要がなく、パッチを肌に張り付けるだけで血糖測定を自動的に行うことができます」と話す。
研究チームは、ブタとヒトを対象に実験を行い、この新たな血糖モニタリング技術が実用的であることを実証した。
実験では、新しく開発したパッチにより、グルコース値を6時間、持続して測定するのに成功した。研究チームは、持続時間を24時間に延ばし、センサーの数を増やし、より正確に測定できるようになることを目指している。
このプロジェクトは、バース大学の物理学部、薬学部、化学部などが横断的に協力して学際的な研究チームをつくることで成し遂げられた。
糖尿病は世界的な保健上の問題となっている。世界保健機関(WHO)は、世界の糖尿病人口が2030年には3億6,600万人に増えると予測している。英国では、糖尿病の有病率は6%で、50%は糖尿病と診断されておらず治療を受けていない。
「従来の方法では、血糖値は“点”の情報としてしか得られません。それが24時間、連続して測定することで、“線”として把握できるようになります。血糖変動の波を正確に把握することで、自分の体に合った薬物療法、食事・運動療法が可能になり、低血糖の予防にもつながります」と、ガイ教授は述べている。
Bloodless revolution in diabetes monitoring(バース大学 2018年4月9日)Non-invasive, transdermal, path-selective and specific glucose monitoring via a graphene-based platform(Nature Nanotechnology 2018年4月9日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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