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2015年06月05日
「サルコペニア肥満」には食事と運動で対策 筋肉の低下を予防
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一方、肥満は糖尿病や高血圧、脂質異常症などを悪化させる原因となる。実は近年、サルコペニア(筋肉の減少)と、肥満(体脂肪の増加)が重なって起きる「サルコペニア肥満」が問題になっている。
サルコペニア肥満は年齢が上がるほど増えるが、早い人は40歳代で発症し、70歳代では通常の肥満より増える傾向がある。
サルコペニアは高齢者の10%以上で認められるが、糖尿病患者ではその割合は3倍に上昇するという調査報告がある。さらに、1割はサルコペニア肥満であり、日常生活動作(ADL)の低下や、死亡リスクの上昇につながると懸念されている。
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筋肉量が少ないため、外見的にはさほど太って見えないこともある。しかし、MRIの断層写真で太ももを見ると、サルコペニア肥満の人は筋肉が少なく、脂肪が非常に多いことが分かる。
体形や体重が若いころとあまり変わらない人でも例外ではない。BMI(体格指数)が標準であっても、筋肉だった部分が脂肪に置き換わっている人が少なくない。
ただでさえ加齢とともに筋肉が減りやすいうえに、体を動かさない運動不足の生活が続くと、サルコペニアが進行しやすくなる。そうなると動くのがますますおっくうになり、脂肪が溜まって「サルコペニア肥満」が進行するという悪循環に陥ってしまう。
体重をコントロールするための食事制限中心のダイエットは、体脂肪だけでなく筋肉量も減らしてしまうおそれがあるので、栄養バランスに注意することが必要だ。
特に動物性タンパク質に含まれるアミノ酸は筋肉の材料になり、高齢になると摂取量が少なくなる傾向がある。運動の直後にタンパク質を摂取すると、サルコペニア肥満の予防効果はいっそう高まるという研究報告がある。
また、ビタミンDによる筋力増加効果も報告されている。筋力を増強させるためだけでなく、骨を強くするためにも、ビタミンDは効果的だ。ビタミンDは魚類などに多く含まれる。
ビタミンDは日光浴により活性化される。家に閉じこもらずに、日光を浴びながらウォーキングをすると運動不足の解消にもなる。
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運動でサルコペニアに対策するために、筋肉に負荷をかけて行う「レジスタンス運動」が効果的だ。筋肉を鍛えると、何歳になってからでも強く大きく発達させることができる。
レジスタンス運動とは、スクワットや腹筋運動など、筋肉に負荷をかけた動作を繰り返し行う運動のことだが、高齢者が運動するときは、負荷量は若年者ほど高くなくてもよいと考えられている。
特にふくらはぎと太ももの筋肉は、使わないと特に衰えやすい。立ち上がる動作で一番重要なのが、太ももの筋肉、そして立ち上がった時にバランスを維持するために働くのがふくらはぎの筋肉だ。
さらに、サルコペニアの大きな原因は、肥満などが原因でインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」であることが知られている。
ウォーキングを中心とした有酸素性運動で、インスリン抵抗性を取り除けるのに加え、筋肉の量を増やし、筋力を向上する効果を得られる。
レジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせることで、サルコペニアによる筋肉の委縮の程度をおおむね3分の1に抑えることができることを示した研究が発表されている。
高齢者の健康管理を促進するために「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」「フレイル」という新たな概念が提唱されている。 下記は日本整形外科学会が推奨するロコモ対策の「片脚立ち」「スクワット」――
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・ サルコペニア肥満」には食事と運動で対策 筋肉の低下を予防
・ 糖尿病学会が「第3次対糖尿病戦略5ヵ年計画」を新たに策定
・ 糖尿病の新しい薬物療法 HbA1cは低下したが肥満が増えている
・ 「HbA1c7%未満」が目標になった理由 大規模研究で明らかに
・ 糖尿病患者の脂質異常症は積極的に治療 心血管疾患のリスクが上昇
・ 糖尿病患者は骨折に注意 骨を丈夫に保つ対策が必要
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