ニュース
2014年12月10日
1型糖尿病の発症機序を遺伝子で解明 免疫タンパク質が関与
- キーワード
- 医療の進歩

同成果は同大学大学院医学系研究科の宮寺浩子助教(研究当時)、徳永勝士教授らの研究グループによるもので、医学誌「The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に12月8日付けで発表された。
1型糖尿病は主に自己免疫機序により膵臓のβ細胞の破壊され、インスリンの欠乏が生じて発症する疾患。β細胞が破壊・消失した結果、インスリン依存状態になり、生命を維持するためにインスリン投与が必要となる。
1型糖尿病は免疫系の細胞が、インスリンを生産する膵臓のβ細胞に対して免疫応答を起こすことによって発症し、特定のHLA遺伝子型をもつと1型糖尿病の発症率が高くなることが報告されている。
体の免疫系が病原体などに対して防御反応を行うために、外から入ってきた異物を自分の体の器官・組織などと区別して見分ける仕組みが必要となる。この役割を担うのが、「ヒト白血球抗原」(HLA)だ。
1990年代半ばから遺伝解析が行われるようになり、近年はゲノム全領域を対象とした疾患関連の解析が行われている。これまで、1型糖尿病の発症への関与が確認され、遺伝子の本体まで明らかになっている遺伝子は少なくとも5つあるという。
その中でもっとも強く疾患に関与するのはHLA遺伝子で、これにより1型糖尿病発症に関わる遺伝因子の30〜50%が説明できると考えられている。
日本人、欧米人、アフリカ系米国人などを対象とした研究で、特定のHLA遺伝子型をもつと1型糖尿病の発症率が高くなることが示されている。
その手法を用いて約100種類の主要なHLA遺伝子型の安定性を測定したところ、1型糖尿病のかかりやすさに関連するHLA遺伝子型が、安定性が顕著に低いHLAタンパク質を作ることを発見した。
さらに、HLAタンパク質の安定性制御に関わるアミノ酸残基を変える遺伝子多型(遺伝子の塩基配列が個人により異なる部分)を同定し、その遺伝子多型が1型糖尿病のかかりやすさに強く関連することを明らかにした。
従来の研究では、HLA遺伝子多型と自己免疫疾患との関連はHLAタンパク質のペプチド結合性によって説明されていたが、実際の発症機序については不明な点が多かった。
研究グループは、「1型糖尿病などの自己免疫疾患の発症メカニズムが、従来の定説とは根本的に異なる可能性が示された。今回の成果を糸口として、自己免疫疾患の発症機序について、さらなる解明に取り組む」と述べている。
今回の研究の一部は、「国際組織適合性ワーキンググループ」(IHWG)と、「日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会」の報告を用いて行われた。10万人あたりの小児1型糖尿病の発症率は、フィンランドやイタリアなどでは約40人と高値であるのに対し、日本では、1.4〜2.2人と低値だという。

医療の進歩の関連記事
- 世界初の週1回投与の持効型溶解インスリン製剤 注射回数を減らし糖尿病患者の負担を軽減
- 腎不全の患者さんを透析から解放 腎臓の新しい移植医療が成功 「異種移植」とは?
- 【1型糖尿病の最新情報】幹細胞由来の膵島細胞を移植する治療法の開発 危険な低血糖を防ぐ新しい方法も
- 糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬が腎臓病のリスクを大幅に低下 認知症も減少
- JADEC(日本糖尿病協会)の活動 「さかえ」がWebページで閲覧できるなど「最新のお知らせ」からご紹介
- 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も
- 「スマートインスリン」の開発が前進 血糖値が高いときだけ作用する新タイプのインスリン製剤 1型糖尿病の負担を軽減
- 糖尿病の医療はここまで進歩している 合併症を予防するための戦略が必要 糖尿病の最新情報
- 【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病を根治する新しい治療法の開発 幹細胞由来の膵島細胞を移植
- 【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病の人の寿命は延びている 精神的負担を軽減し血糖管理を改善 針を使わずにインスリンを投与