ニュース
2014年12月05日
2型糖尿病で運動療法の効果を得られないのは遺伝子が原因

2型糖尿病患者のおよそ5人に1人が、運動療法を行っても血糖コントロールの効果を得られない可能性があるという研究が発表された。
「しかし医療の現場では、運動を行っているにも関わらず、血糖コントロールやインスリン抵抗性、ミトコンドリア濃度による脂質代謝機能などが改善しない患者が少なからず見受けられます」と、米フロリダ病院および米サンフォード バーナム医学研究所のローレン マリー スパークス氏は言う。
血中のインスリン濃度に見合ったインスリン作用を得られない状態を「インスリン抵抗性」という。2型糖尿病の患者の多くはインスリン抵抗性が原因で、細胞への糖の取り込みが難しく、血糖値が上昇しやすくなっている。インスリン抵抗性は、運動により改善する。
また、運動は細胞内の「ミトコンドリア」は、ヒトが動いたり、歩いたりするための筋活動に必要なエネルギー源である「アデノシン三リン酸」(ATP)を発生させる。運動を習慣として行うと、ミトコンドリアが増え、より多くのATPを産生できるようになる。
ほとんどの患者で運動療法は効果をもたらすが、中には運動を継続しているにも関わらず、血糖コントロールがなかなか改善しない患者がおり、多くの医師を悩ましてきた。
研究チームは、運動の効果があらわれにくい遺伝的な要因があるのではないかと考えた。このような運動介入の成果がみられない糖尿病について、動物モデルを用いた研究と遺伝子モデルを用いた研究を行い、運動を行っている2型糖尿病患者に対して臨床的な検討を行った。
その結果、2型糖尿病患者の15〜20%は、運動療法による効果を得られにくい可能性があることが示された。
こうした「運動に対する抵抗性」は、動物研究および遺伝的の研究の結果から、DNAにコーディングされた情報がもとになって発現しており、世代間で遺伝する可能性があるという。
「大半の患者は運動療法によって血糖コントールの改善効果を得られる。しかし少数とはいえ無視できない数の患者では、遺伝子が原因で代謝面の改善が得られにくいことが、研究で示唆されました」としている。
運動の効果を予測するには、遺伝的および後生的遺伝子のパターンを解読する必要がある。この情報を読み取れるようになると、特定の遺伝子を対象にした介入や治療が可能になるという。
今後、遺伝情報を調べる研究を続けることで、運動プログラムによりどの程度の治療効果を得られるかをあらかじめ予測できるようになる可能性がある。
「運動の便益を得られやすい患者に対しては、効果的な介入と治療が行え、運動療法を行っても効果を得られにくい患者に対しては、その助けとなる最適化した治療を提供できるようになると期待しています」と、スパークス氏は言う。
ただし、「運動が効果的な治療であることは明らかです。今回の研究は、2型糖尿病患者は日常的な運動を行わなくても良いことを示すものではありません。運動療法によって、糖尿病治療薬を減らすことができた症例はたくさんあります」と強調している。
おすすめニュースの関連記事
- 【Web講演を公開】2月は「全国生活習慣病予防月間」
今年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」 - 糖尿病患者さんと医療スタッフのための情報サイト「糖尿病ネットワーク」がトップページをリニューアル!
- インスリン注射の「飲み薬化」を目指すプロジェクトが進行中!ファルストマと慶応大学の共同研究による挑戦[PR]
- 小倉智昭さんが当事者として腎臓病のことを医師に質問!
- 世界の8億人以上が糖尿病 糖尿病人口は30年で4倍以上に増加 半分が十分な治療を受けていない
- 【世界糖尿病デー】糖尿病の人の8割近くが不安やうつを経験 解決策は? 国際糖尿病連合
- 【インフルエンザ流行に備えて】糖尿病の人は予防のために「ワクチン接種」を受けることを推奨
- 【11月14日は世界糖尿病デー】世界の5億人超が糖尿病 「糖尿病とウェルビーイング」をテーマに参加を呼びかけ
- 特集コーナー『腎臓の健康道~つながって知る、人生100年のKidney Journey~』を公開
- 【座談会】先生たちのSAP体験談2 インスリンポンプの新機能を使って