第48回欧州糖尿病学会(EASD)
ハンガリーで、血糖自己測定やHbA1c値の検査など、患者が自分で体の状態を適切にモニターすることを義務づける法案が提出され、物議をかもしている。法案が成立すると、治療がうまくいっていない糖尿病患者は医療保険の給付が制限され、医療費が高くなるおそれがあるという。
法律が成立すると、糖尿病患者は3ヵ月ごとに、血糖値とHbA1c値の測定が義務づけられる。1年に2回、治療の見直しがはかられ、血糖コントロールが良好でないと、より効果的なインスリン療法への移行が義務づけられる。ただし、医療保険の給付も制限されるので、患者が支払わなければならない医療費は上昇するという。
なお18歳未満の小児や若者、糖尿病の病状が深刻な患者は、こうした対応から外される。あくまで軽症の糖尿病患者を重症化させないための方策として検討されている。
「糖尿病合併症を予防すれば、医療費の大きな削減につながる。今回の法案は糖尿病合併症の予防を推進しながら医療費を削減でき、2つの面でメリットがある」と当局は説明している。
ハンガリーの糖尿病有病数は50万人、有病率は7.6%に上る。糖尿病合併症の医療費の増加は深刻で、糖尿病の医療費は全体の8.6%を占めるという。ハンガリーでは、公立病院の診察料は社会保険料を支払っていれば無料となるが、増え続ける糖尿病が医療財政を圧迫しており、今回の法案は苦肉の策として提出された。
これに対し国際糖尿病連合(IDF)ヨーロッパ支部は、「糖尿病を、患者の自己管理と医療費の社会的な負担という面のみでとらえようとする今回の法案は危険がともなう」と反対意見を表明している。「糖尿病の病態は多様で、遺伝因子や生活スタイル、ストレスなどが複雑に関わる複雑な病気だ。患者によっては健康的な食事などの生活スタイルの改善を容易に行えない事情がある」としている。
「患者が自己管理を行い、血糖自己測定で血糖値を持続的に知ることが重要なのは確かだ。しかし、今回の法案は、経済的な事情で食事療法を行う余裕がなかったり、運動を続けられない患者への配慮に欠ける。そうした患者は、血糖コントロールをより悪化させてしまうおそれがある。適切な糖尿病の治療により合併症を効率的に予防することこそが生産的であり、社会の医療コストを抑えるために優先されることを、政府はよく理解すべきだ」とIDFのChris J Delicata氏は述べている。
欧州糖尿病学会(EASD)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所