ニュース

2012年04月10日

HbA1c国際標準化の課題 移行時の注意点

カテゴリーキーワード
糖尿病の診断基準
 日本糖尿病学会理事長の門脇孝氏は4月6日、日本糖尿病協会とサノフィ・アベンティス共催のメディアセミナー「HbA1c国際標準化がもたらす糖尿病医療現場への影響」で行った講演で、HbA1cの国際標準化が必要となった背景を説明した。

日本糖尿病対策推進会議
が監修したパンフレット
 HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、赤血球の蛋白であるヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、検査日から過去1〜2ヵ月の血糖値の平均を反映する指標となる。

 検査時の瞬間値である血糖値とは異なり、HbA1c値は検査前の食事や運動などの影響受けないため、検査時にたまたま血糖値が低く見逃しやすかったケースでも発見できる。糖尿病を予防・発見するために、信頼性の高い検査だ。

 HbA1cは「JDS値」と「NGSP値」の2つがある。JDS値は日本で決められた条件に従って測った値、NGSP値は主に米国で決められた条件に従って測った値。日本のJDS値はNGSP値に比較して約0.4%低い値となる。

 日本以外のほとんどの国で使われているのはNGSP値であり、事実上の世界標準となっている。そこで日本でも4月1日より、日常診療で新しいHbA1c(NGSP値)が使われるようになった。

世界に先駆けて進歩した日本のHbA1c検査
 日本で使用されていたJDS値で表記されたHbA1cは、世界に先駆けて精度管理や国内での標準化が進んだ。日本糖尿病学会の門脇孝理事長(東京大学病院病院長)は「現在のHbA1c標準測定法としてのHPLC法は正確に定義上のHbA1cの測定が可能だ」と強調する。

 日本では1993年より日本糖尿病学会を中心とする標準化委員会により、当時の測定技術の進歩も考慮しつつHbA1c標準化が開始された。HbA1c値(%)はクロマトグラフィーを使うHPLC法という精密な測定法で測定されるが、1993年頃は技術が十分に発達しておらず、他の成分(夾雑物)が含まれていた。その後、検査の精度が向上し、現在の検査では夾雑物を取り除いた正確な値がでるようになっている。

 一方でJDS値には、国際標準値であるNGSP値と比較しておよそ0.4%低いという欠点が残った。そのため国際的な研究で誤解が生じたり、日本のデータ自体に対して不信や無視が生じたり、さらには海外のデータを誤って判断してしまう可能性もでてくる。そこで日本糖尿病学会などでは、2010年7月から論文や発表に用いるHbA1cにはJDS値におよそ0.4%加えたNGSP値を使いはじめた。

 糖尿病の診断・治療はもとよりさまざまな調査・研究や新薬の開発が世界中で行われ、その情報がインターネットなどを通じて世界に流通し互いに比較されるようになってきた。JDS値を使い続けると糖尿病の研究や開発で日本が世界に立ち後れるおそれがでてくる。「日本を除く世界の各国ではすべてNGSP値が使用されている。日本でも早急にNGSP換算値に変更する必要があった。日常的な診療でのHbA1cの変更日程は、さまざまな事情から時間をかけた協議の上で決める必要があった」と門脇氏は説明する。

 「日常診療でのHbA1c国際標準化は、早い時期に実行する必要があったが、結果として2012年4月1日に行ったため、十分な準備期間を設けることができたのではないか。NGSP値を用いることにより、国際的な研究・治験が支障なく行われ、新薬や新しい治療法の日本への導入が円滑に進められるようになる。糖尿病分野で日本が国際共同研究のリーダーシップをとることも期待される」と門脇氏は話す。

患者・医療の双方で、HbA1c国際標準化の周知が必要
 日常診療での混乱を避けるため、JDS値とNGSP値の併記は少なくとも2012年度一杯は続けられ、その後は定着の度合や問題点の有無をみながらいつまで併記を続けるかが検討される。

 従来の「JDS」と「NGSP」両者の間には0.4ポイントの差があるため、病状の誤解などの混乱も起きかねない。日本糖尿病協会の清野理事長(関西電力病院院長)は、日常診療への影響について講演し、JDS値とNGSP値を取り違えて「患者が自分のHbA1cが悪くなったと勘違いしたり、血糖コントロールの指標が上がることで治療目標が甘くなったと誤解するおそれがある」と述べ、「測定値が変更されることによる患者の混乱や投薬量ミスを防ぐ必要がある。患者と医療側双方に周知が必要だ」と説明した。

 清野氏は、糖尿病の診療を行う医師や、病診連携する透析や眼科の医師では、NGSP値の周知はかなり進んでいると感じているという。「特に注意の必要なのは、HbA1c値がNGSPとJDSで6%台後半から7%前半の患者だ。NGSP値とJDS値のとり違いにより、診断の結果や治療方針に違いがでてくる可能性がある。必ず医師と相談のうえ、ご自身の糖尿病の状態を正しく理解するようにしてほしい」と強調している。

 一方で、HbA1c自体の認知は進んでいない。2008年4月に一般を対象としたインターネット調査では、30代以上の男女の95%が「糖尿病は恐い病気である」と回答する一方、92%以上が「自分のHbA1c値を知らない」との結果がでており、一般的にHbA1cに対する認知度はまだ低いとみられている。

 清野氏は「患者にHbA1cが変わることを説明する時が、治療の見直しの良い機会となる」と注意を呼びかけている。「JDS値に0.4%を加えることでNGSP値に換算し比較できる。糖尿病予備軍あるいは境界型といわれている人や通院している人も、この機会に医療機関を受診し相談してほしい。HbA1cの値が次第に高くなってきているなど、懸念や不安を感じたら医師に相談することが大切だ」と述べている。

日本糖尿病学会
日本糖尿病協会

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled ニュース記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲