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2011年09月08日

糖尿病リスクを低減させる5つの習慣 最大でリスクは8割減

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糖尿病の統計
 5つの健康的な生活習慣を実行することで、中高年者の2型糖尿病の発病リスクが最大80%低減することが、米国の20万人以上のデータ解析であきらかになった。

 2型糖尿病のリスクを減らすための健康的な5つの生活習慣とは、(1)健康的な食生活、(2)たばこを吸わない、(3)飲酒しない:飲むときは適度に、(4)体重を適正にコントロールする、(5)運動を習慣化する。

 NIH国立心臓・肺・血液研究所のJared Reis氏ら研究チームは、これらの習慣を実行すると糖尿病のリスクが男性で約31%、女性で約39%低下し、5つの習慣のすべてを実行するとリスクは80%低下することをあきらかにした。

 2型糖尿病の発症に、遺伝因子や加齢が大きく関わるが、過食(とくに高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなど、さまざまな環境因子の影響も大きい。遺伝的なものは変更できないが、生活スタイルを改善し、より健康的に変えていくことは誰にでもできる。「糖尿病の大部分は、生活をより健康的に変えていくことで予防・改善が可能」だとReis氏は強調している。

生活習慣をひとつ変えるだけでも糖尿病リスクは低下
 研究は、米国立衛生研究所(NIH)と米退職者協会(AARP)が、1995年に開始した大規模研究「NIH-AARP 食事・健康研究(NIH-AARP Diet and Health Study)」として行われた。心臓病、がん、糖尿病などの既往歴のない50〜71歳の男女20万7479人(男性11万4996人、女性9万2483人)の1995〜96年データをもとに、生活習慣と2型糖尿病の発症との関連を調べた。

 参加者らに、どのような食事をしているか、ベースラインでのアルコール摂取、喫煙したことがあるかなど、生活習慣について質問票に回答してもらった。運動の頻度についても回答してもらい、さらに身長体重を示すことにより、BMI(肥満度指数)が計算された。参加者は2004〜06年まで約11年間にわたって追跡調査され、その間、男性の9.6%と女性の約7.5%が糖尿病を発症した。

 Reis氏ら研究グループは、研究の参加者を生活習慣の「ベスト(最善)」から「ワースト(最悪)」にグループ分類した。5つの健康的な生活習慣をすべて実践しているグループを「ベスト」に、1つも実践していないグループは「ワースト」に5つに分類した。

 食生活に関しては、果物と野菜の摂取量や、脂肪の摂取量・種類などにより1〜5のポイントを与えた。得点の上位40%に入った人々は、健康的な食生活をしていると判定した。また、1週間に3回以上、20分以上の運動を行い、10年間以上喫煙をしていないことなども健康的な生活習慣とみなした。さらに、男性では1日に2杯以下、女性は1杯以下の飲酒なども、健康的とした。

 解析した結果、5つの要因の1つを続けるだけでも、2型糖尿病の発病リスクを低減できることが示された。研究の参加者は、5つの健康的な生活習慣要因のうち、平均で2つを実践していた。健康的な要因が1つ加わるとごとに、糖尿病のリスクは男性で31%、女性で39%低下することがあきらかになった。

肥満が多い米国人の2型糖尿病
 米国では2型糖尿病が爆発的に増加しており、2型糖尿病と判定される人の数は昨年は2600万人に上った。米国人の2型糖尿病は、多くが肥満をともなうのが特徴となっている。研究でも、米国人の糖尿病のリスク要因としては、もっとも関連が深いのは体格指数(BMI)であることがあきらかになった。

 BMI単独でみた場合、BMI30未満の肥満の男性では、BMI30以上の肥満の男性に比べ、糖尿病を発症する率が70%低く、女性では78%低いことがわかかった。BMI18.5〜24.9の標準体重の人では、2型糖尿病の発症リスクがもっとも低いという結果になった。

 「食生活が健康的」、「運動習慣あり」、「喫煙しない」、「適度な飲酒」という条件が重なると、糖尿病の発症リスクは男性で39%、女性で57%、それぞれ低下し、飲酒の影響は男性よりも女性で大きいことが示唆された。また、これらの要因にBMIを加えると、糖尿病の発病率が男性で72%、女性で84%低下した。

 この研究は、米国内科学会によって発行される医学誌「Annals of Internal Medicine」に9月6日付けで発表された。

NIH Media Availability: Combination of five lifestyle factors linked to lower diabetes risk(米国立衛生研究所 2011年9月6日)
Lifestyle Factors and Risk for New-Onset Diabetes - A Population-Based Cohort Study -
Annals of Internal Medicine, September 6, 2011 vol. 155 no. 5 292-299
NIH-AARP Diet and Health Study
National Diabetes Information Clearinghouse (NDIC)

関連情報
肥満にならない食事法 「少しの工夫で体重増加は避けられる」米研究(糖尿病NET)
食物繊維をとると死亡リスクが低下 穀類での摂取が効果的(糖尿病NET)
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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