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2011年03月29日

被災者、避難者のためのお薬注意情報

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 NPO法人セルフメディケーション推進協議会はこのほど、避難所や仮設住宅で生活している被災者向けの健康管理に役立てられる「お薬注意情報」を公表しました。
加藤 哲太(セルフメディケーション推進協議会理事、
東京薬科大学薬学部教授、薬学博士、薬剤師)
 日本薬剤師会を始め多くの団体、製薬企業は東日本大震災の被災者へ薬剤師の派遣と医薬品供給による支援活動を積極的に行っています。被災者の皆さんはこうした医療従事者と連携し、健康の維持、回復に努めて下さい。
  1. 以前から薬を服用していた皆さんへ
    1. 服用している医薬品の情報が大切 お薬手帳を活用してください
       災害時の医薬品の使用に関しては薬剤師に相談し、判断を任せるのがいいでしょう。そのために必要なものが、薬歴です。その情報は「お薬手帳」に記載されています。すぐに提示できるよう準備しておいてください。持っていない人、紛失してしまった人は、自分の病気の症状や薬歴に関する情報を可能な限り思い出しメモしておいて、薬剤師に提示してください。
       被災者の状況などで異なる場合もありますが、災害時においてどうしても継続を必要とする医薬品、急を要しない医薬品、中止可能な医薬品があります。また、代替が可能な医薬品もあります。

    2. 中断すると危険な医薬品 すぐに申し出て下さい
       インスリンが必要な糖尿病患者さんにとってインスリンは必須です。インスリンが中断されると、糖尿病が急速に悪化する人が確実にでます。絶対に優先的な確保が必要な薬剤です。
       その他、抗結核剤など慢性感染症用の抗菌・抗生物質、気管支喘息で使用中の薬剤、癌緩和ケア用のオピオイド剤、心不全で使用中の薬剤、抗不整脈剤などの中止は危険です。すみやかに医療関係者や支援団体の方に相談してください。

  2. 不安や寒さで眠れない皆さんへ
     被災者の中には、不安や寒さで不眠となる人が増加し、抗不安剤、睡眠剤の服用を希望する人が増えてきます。しかしながら、これら睡眠剤や抗不安剤、抗うつ剤は依存症を起こす危険性があります。被災による不安があったとしても、安易な使用開始は、避けるべきでしょう。対話、運動などで少しでも不安を除く努力をしてください。

  3. 感染症に注意 ボランティアの人も感染源を持ちこまない注意を
     避難生活が長引く中、避難所の過密や不十分な衛生状況で、通常よりも感染症が流行しやすくなっています。
    急性胃腸炎ウイルスや細菌による急性胃腸炎は、下痢、嘔吐(おうと)、発熱が主な症状です。特にノロウイルスやロタウイルスは感染力が強く、患者の便から2次感染が起きます。災害時に最も注意すべき感染症です。特別な治療法はなく、脱水予防と下痢の対症療法が基本です。手洗い、消毒は有効な予防法です。
    破傷風がれきなどで創傷を負った被災者は要注意で、ワクチンの接種歴を把握しておいてください。

  4. 消毒薬の作り方
    消毒するもの使用薬剤など目安量
    手指逆性石鹸液
    (塩化ベンザルコニウム液10%)
    石鹸で手洗い後、100倍液に浸して洗浄する
    消毒用エタノール(70%)原液3ccを手のひらにとり、乾燥するまで(約1分間)手に擦込んで使う
    食器・器具・ふきん 水洗いするまな板・おもちゃ等次亜塩素酸ナトリウム
    (家庭用塩素系漂白剤など)
    100倍液に30分間浸し、水洗いする
    熱湯消毒100℃5分間以上
    トイレの取っ手
    ドアノブ
    消毒用エタノール(70%)原液を含ませた紙タオル等で拭くか噴霧する
    逆性石鹸液
    (塩化ベンザルコニウム液10%)
    50倍液を含ませた紙タオル等で拭く
    衣類の消毒次亜塩素酸ナトリウム
    (家庭用塩素系漂白剤など)
    100倍液に30分間つけた後、洗濯する
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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