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2010年09月07日
2型糖尿病になりやすい遺伝子を発見 発症の危険が1.2倍に 東大など
日本人をはじめとするアジア人では、肥満のない人でも2型糖尿病を発症することが多い。一方、欧米人では多くの糖尿病患者は肥満をともなっている。なぜアジア人はそれほど肥満でなくても、2型糖尿病を発症することが多いのか。その理由のひとつとなる新たな遺伝子を、東京大学の研究チームが発見した。
2型糖尿病の新たな関連遺伝子を日本人患者で発見
糖尿病患者数は世界的に増加しており、日本では40歳以上の3〜4人に1人が糖尿病や糖尿病予備群であると推測されている。成人で発症する糖尿病の大半は2型糖尿病と分類されている。その原因には遺伝的な要素と生活習慣が関係しており、遺伝的要因には人種差・民族差があることが分かっている。
ヒトの遺伝子情報(ゲノム)は、約30億の塩基対から構成されるが、個々人でわずかな違いがある。その塩基配列の違いのうち0.1%程度の頻度で認められるのが遺伝子多型で、そのうち一塩基だけ異なっているのが一塩基多型(SNP)。遺伝子多型の一部は病気のかかりやすさなどに影響し、遺伝的な個人差を知るてがかりとなると考えられている。
東京大学大学院の門脇孝教授(糖尿病学)の研究チームは、2型糖尿病の集団とそうでない集団を比較して、遺伝子多型の頻度に差があるかを調べる研究を行った。東京大学医科学研究所に設置されたバイオバンクジャパンに保管されている4470人の2型糖尿病患者群と糖尿病でない3071人のサンプルを用いて、大規模なゲノムの比較解析を行った。
研究チームは2型糖尿病に関連する遺伝子をさぐるために、約50万ヵ所のSNPについて解析。これをもとに約100ヵ所のSNPを候補にして、さらに解析を行った。その結果、2つのSNPが2型糖尿病の発症と関係のあることを発見。
このうち、「UBE2E2」と呼ばれるSNPでは、2型糖尿病になりやすいタイプをもつと、糖尿病の危険が1.2倍高くなると推定。日本人患者の15%がこのタイプと考えられるという。
アジア人に共通する糖尿病の関連遺伝子
東アジアのシンガポール、香港、韓国の3つの集団と、欧州のデンマーク、フランスの2つの集団についても、各国研究機関と共同研究を行った。UBE2E2遺伝子は東アジア人の2型糖尿病にのみ関係していることが示唆された。比較解析では、東アジアと欧米の患者に共通する別の関連遺伝子もみつかり、日本人患者では計13個の遺伝子が関与していることが分かった。
欧米人はインスリンの効きめが悪くなる「インスリン抵抗性」が糖尿病を引き起こす主な原因とされているが、日本人は欧米人に比べ少ないインスリンの分泌量がさらに不足して発症する「インスリン分泌低下」が主な原因と考えられている。今回発見されたUBE2E2遺伝子は、インスリン分泌の仕組みに関わっており、糖尿病の新しい治療薬を開発するてがかりになると期待されている。
また、今回の発見と、これまでに発見された糖尿病に関連する遺伝子多型を組み合わせることで、糖尿病になりやすい人を予測し、効果的なA genome-wide association study in the Japanese population identifies susceptibility loci for type 2 diabetes at UBE2E2 and C2CD4A-C2CD4B
Nature Genetics, Published online: 5 September 2010, doi:10.1038/ng.660
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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