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2009年12月01日

インスリン製剤の安全性「新たな対策の必要なし」と結論

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 厚生労働省医薬食品局は11月27日に「医薬品・医療機器等安全性情報No.263」を公表し、インスリン製剤(ヒトインスリンおよびインスリンアナログ)と悪性腫瘍(がん)のリスクとの関連性について、現段階では関連性があきらかではないため、注意喚起は不要だと結論付けた。

 インスリン製剤とがんの関連性については、欧州糖尿病学会(EASD)の学会誌「Diabetologia」に、インスリンアナログ製剤「インスリングラルギン」(商品名:ランタス)によりがんの頻度が高くなるという研究報告が掲載されたことが発端となった。一方で、がんのリスクを増大させないとする研究報告もあり、一定の見解が得られておらず、国内外で安全対策の必要について検討されていたが、欧州医薬品庁(EMEA)や日本糖尿病学会は慎重な見方を示していた。

 こうした状況をふまえ、医薬品・医療機器総合機構は、ランタスを含むインスリン製剤について、疫学研究や承認申請時に提出された非臨床試験、外国の措置状況から、がんのリスク増大について情報収集を行い、専門家による検討をもとに安全対策の要否について評価を行った。

 その結果、同機構は「現時点ではインスリングラルギン(ランタス)を含むいずれのインスリン製剤でも新たな安全対策の必要性はない」と結論した。

 インスリン製剤全般については、疫学研究でがんのリスク増大を示す報告と、増大させないとする報告の双方があり、家族歴などの交絡因子の調整が不十分などの限界もあるため十分なエビデンス(根拠)が得られた状況とは考えられないことや、非臨床試験で確かめられた細胞増殖活性はヒトインスリンと同程度であったこと、海外の添付文書でも注意喚起がされていないことを示した。

 ランタスとがんのリスクとの関連については、「疫学研究で一定の見解が得られた状況とは考えられない」「非臨床試験で、ランタスの細胞増殖活性はヒトインスリンと同程度で、他のインスリンアナログの細胞増殖活性と比較しても特に悪性腫瘍が増加するとは考えられない」「EMEAでは対応が不要とされており、外国添付文書で注意喚起がされていない」の3点を示した。

 ただし、「現時点での注意喚起は不要」とした上で、「インスリン製剤と悪性腫瘍のリスク増大との関連性はあきらかではないことから、今後も新たな報告を注視し、必要な対応を引き続き検討すること」としている。

医薬品・医療機器等安全性情報(医薬品医療機器総合機構)
ヨーロッパ糖尿病学会の学会誌(Diabetologia)に掲載された、インスリングラルギン(商品名:ランタス)と発がんに関する4つの論文について(日本糖尿病学会)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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